【漫画描写で学ぶ産婦人科】『るろうに剣心』四星について産婦人科医学的に考察する

こんにちは!
産婦人科医やっきーです。

本日の【漫画描写で学ぶ産婦人科】はこちら。
和月伸宏先生『るろうに剣心』より、四星(スーシン)について考えてみましょう。


四星とは

さて、ここで『るろうに剣心』を読んだことのある方はこう思ったことでしょう。

四星って誰?

逆に「四星?はいはいアレね」と詳細が言える人は相当なるろ剣マニアと言って差し支えありません。
無理もありません。四星とは作中でも存在感のかなり薄いザコキャラです。

出典:るろうに剣心 237幕

ではなぜそんな四星を取り上げるのか?
それは、彼らの存在を産婦人科医学的に見ると破格に面白い存在だからです。

四星(スーシン)とは、作中のラスボスである雪代縁の部下
呉黒星(ウーヘイシン)の護衛を務める四人組です。

剣心が雪代縁と決着をつけるべくアジトに乗り込んだ時、
呉黒星は剣心達と戦う理由も無いのに超適当な理由をつけて絡んできました。

出典:るろうに剣心 237幕

非の打ちどころのないかませ犬ムーブを見せつける呉黒星ですが、
その四星も適当なキャラデザイン、こちらの戦闘員の数と同じ人数、
戦いの前に隙だらけの姿勢のまま高く飛んで登場と、
これまた完璧なまでのザコムーブをかましてきます。

出典:るろうに剣心 237幕

どうでもいいですが、斎藤あたりは対空技の牙突弐式とかで迎撃した方が良かったのでは…?

というツッコミはさて置いて、四星はそれぞれ異なる武器を持ち
斎藤、蒼紫、左之助、弥彦の四人に戦いを挑むわけですが、
一人一話で倒されていき、最後は四人全員同時にフィニッシュという見事なラスボスの前座っぷりを見せつけるのでありました。

出典:るろうに剣心 242幕

(普通にその場で戦ってたはずですが、雪代縁と剣心が戦い始めてからはRPGのザコモンスターのごとく消滅してしまったのは謎です)

多胎妊娠

そんな四星さんですが、産婦人科医として気になるのはやっぱりこの描写。

出典:るろうに剣心 238幕

この四人、なんと四つ子であるというのです。
まあ、見た目でなんとなくそんな気はしていましたが。

さて、漫画などの創作では双子はしょっちゅう出てきますが、三つ子や四つ子となるとその頻度はグッと少なくなります。

これは、現実世界でも双子に比べて三つ子以上がかなり稀であることが関係しているでしょう。
現代では双子の分娩率がおよそ100分の1、三つ子はおよそ1万分の1.5であり、非常に稀です。
(出典:日本多胎支援協会「三つ子や四つ子の出生確率について」)

作劇上の理由も考えられます。
双子というガジェットは「同い年の兄弟だからこそ生まれる関係性」にフォーカスしたり、バトルもの・スポーツものでは「同じ思考、運動能力だからこそできるチームワーク」といった形で利用できるものの、三つ子以上の話をまとめるのは非常に難しくなります。

出典:タッチ 13話
出典:キャプテン翼 23話

また、同じ顔のキャラが二人ならまだ収集がつきますが、
レギュラーキャラで同じ顔が三人以上いると読者が混乱してしまうという問題もあります。

例外としてヒロインが五つ子のラブコメや、主人公が六つ子の国民的ギャグマンガもありますが、
これらは「ヒロインの関係性を均等にする」「同じ顔であることをギャグの要素にする」といった、三つ子以上で生じる問題点を逆手にとった手法が採られているのです。

出典:五等分の花嫁 1話
出典:おそ松くん
電子書籍版 13巻

作劇の話は置いておいて、四つ子の話に戻りましょう。

私は三つ子なら何度か診たことがありますが、四つ子は診たことがありません
父(70歳の現役産婦人科医)にも聞いてみましたが、四つ子の経験はないそうです。
研究や論文の数も殆どありません。

ちなみに、産婦人科では双子を「双胎」、三つ子を「品胎」と呼びます。
同様に四つ子にも「要胎」という呼び名があるのですが、
私はこの記事を書くために調べるまで「要胎」という言葉自体を知りませんでした。

四つ子というのはそれくらいのレア度ということです。

四つ子が産まれるとどうなる?

やや古いデータですが、1988~1991年の日本の統計によると、
四つ子の平均分娩週数は29.3週であるといいます。
(参考:https://web.archive.org/web/20110711211748/http://www.jsog.or.jp/PDF/52/5201-007.pdf)

通常であれば、出産予定日は妊娠40週、正期産と呼ばれる時期は37週からなので、
上記の29週というのはかなりの早産になります。
母体の子宮の容量にも限界があるので、赤ちゃんが二人、三人、四人と増えればその分だけ早産になりやすいわけですね。

29週となると、赤ちゃんの呼吸を助けるための肺の分泌液(サーファクタント)もうまく出ていないので、赤ちゃんが自力で呼吸するのも難しいです。
母乳を飲むのも難しいので、点滴や胃管を使って栄養を補給する必要もあります。

要するに、平均的な四つ子の新生児医療とは、現代の医療水準で、新生児医療の専門医によるしっかりしたサポートがあって初めてなんとかなる週数と言えます。

るろうに剣心の時代背景は明治時代初期であり、Wikipediaによると1878年頃のようです。
四星の年齢は不明ですが、彼らが1850年くらいに産まれたとして、
とても29週の新生児を蘇生できる技術があるとは到底思えません。

要するに、19世紀に生まれた四つ子というのは、四人全員が生きてるだけでも奇跡と言って差し支えありません。

四星の母親の凄さ

そうすると、次第に四星の母親の凄さが浮き彫りになってきます。
四つ子全員を五体満足な状態で産み、育て、しかも全員が中国最大級の武器組織のNo.2の護衛を張るほどの武術と身体能力を得たわけです。

しかも1800年代後半の中国というと、アヘン戦争直後でボロボロの社会情勢です。
四星の母親の苦労が想像を絶するものだったことは想像に難くありません。

なのに全員が日本でこんな小物ムーブをかまし、しかもそのうち一人は竹刀持った子供に倒されることになるとは思いもしなかったでしょう。

作中には登場しない四星の母親ですが、彼女の気持ちを思うと涙を禁じ得ません。

余談

単行本おまけページによると、四星が登場した経緯『完結前に剣心の仲間達の活躍を後一度だけ描きたいと思って急遽作り上げたキャラ』と、かなり適当なものだったようです。

出典:るろうに剣心 240幕

しかし蒼紫の「回天剣舞六連」を初見でコピーする朱雀など、
彼らはまともに戦えば相当厄介な敵キャラであるはずですし、
彼らの生い立ちを深堀りするといくらでも面白くできそうなところですが、
それを感じさせないザコムーブ殆ど印象に残らないキャラになってしまった四星。

果たして彼らの母親は何を思うのでしょう。

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