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『ゾン100』を題材にウイルスとワクチンについて世界一わかりやすく解説する

やっきー
やっきー

こんにちは!
産婦人科医やっきーです!


本日の題材は『ゾン100 〜ゾンビになるまでにしたい100のこと〜』(以下『ゾン100』)です!

『ゾン100』といえば2018年から連載中の人気漫画で、

2023年7月にアニメ化、8月3日からは赤楚衛二さん主演でNetflixでの実写配信を開始した話題作ですね。

出典:Netflix

この作品の鍵となるのが「人間をゾンビ化させるウイルス」であり、

劇中でも「ウイルス」「ワクチン」「抗体」について解説されているわけですが、

これらの違いはなかなか一般の方にはピンと来ないものだと思います。

私も今でこそ感染症学について多少の知識を持っていますが、

医大生時代は「そもそもウイルスって何?」「細菌と何が違うの?」という疑問は尽きませんでした。

とはいえ、このご時世だからこそウイルス学の基本は押さえておきたいところ。

そんなわけで本日は『ゾン100』に登場したゾンビウイルスを題材として、

狂犬病との類似点、「ウイルス」「ワクチン」「血清」「抗体」の関係、

そしてウイルスに対する抗体注射の実例として最も広く使われているものの1つである「シナジス(パリビズマブ)」の実例を交えて世界一わかりやすく解説していきましょう!



『ゾン100〜ゾンビになるまでにしたい100のこと〜』

『ゾン100』の作者

『ゾン100』の原作を担当されているのは麻生あそう羽呂はろ先生。

『今際の国のアリス』の実写版がNetflixで配信されると世界中で大ヒットとなり、今や日本を代表する漫画家の一人にまで登りつめた方ですね。

出典:Netflix


そして、作画を担当されているのが高田康太郎先生。

デビュー作の『ハレルヤオーバードライブ!』バンドに情熱を燃やす高校生の青春漫画として評価を得ている名作ですが、

それと同時に途中から飛躍的に画力が向上した漫画としても知られており、

高い画力による音が聴こえてくるかのような巧みな表現力、そして女の子の可愛さに定評があります。

ハルさんに何が起きた。

出典:ハレルヤオーバードライブ! 1話
出典:ハレルヤオーバードライブ! 76話


『ゾン100』はそんな人気漫画家のお二人がタッグを組んだことで生み出された、

もはや1話からして売れる気配がプンプン漂っていた『サンデーGX』の看板作品ですね。



それでは『ゾン100』のあらすじをご紹介しましょう。


『ゾン100』のあらすじ

出典:ゾン100 1話

主人公はブラック企業に勤める入社3年目の社員・天道てんどうあきら(24)。

過酷な勤務形態、労働基準法を完全に無視したサービス残業、パワハラが横行する人間関係により心身を疲弊しており、無意識に自殺を考えてしまうほどの精神状況に追い込まれていました。

そんなある日、出勤しようとするアキラの目の前に現れたのは大量のゾンビでした。

出典:ゾン100 1話

同時多発的に発生したゾンビにより世界中がパニックになっていることを知ったアキラは、

「今日から会社に行かなくてもいい」ということに気付き、大喜びします。

出典:ゾン100 1話


3年間、会社に抑圧され続けていたアキラは一気に開放され、朝から家でダラダラ過ごしますが、

いつゾンビに襲われて命を落とすか分からない世界に身を置かれたことで「人生において、やりたいことをやれる時間は短い」という事実を悟りました。

出典:ゾン100 2話

そんなアキラは「ゾンビになるまでにしたい100のこと」というノートを書き始め、

「日本一周をする」「回ってない寿司をたらふく食う」「CAさんとコンパをする」「キャンピングカーに乗る」「実家で親と過ごす時間を作る」「最愛の女性と出会う」など、

アキラの夢や欲望・願望を詰め込んだ「100のこと」を実行することに決めました。

出典:ゾン100 2話

アキラは道中で友人の竜崎憲一朗(ケンチョ)、ヒロインの三日月みかづきしずか、ドイツ人旅行者の美女・ベアトリクスらと行動を共にし、

ゾンビの蔓延する世界で自分たちの夢を叶えるための旅を始めることになります。


このように人生が終わるまでに達成したい夢を書き出して実行する、いわゆる「バケットリスト」は、

2008年に大ヒットしたアメリカ映画『The Bucket List(邦題:最高の人生の見つけ方)』で一気に広まった考え方ですね。



『The Bucket List』は余命半年と宣告された男性2人の話でしたが、

『ゾン100』では体力も時間もある若い男・アキラがひたすらポジティブに願望を叶えていき、

そこにゾンビパニックの要素も取り入れることで斬新で革新的な作品へと変貌を遂げました。

アニメ化・実写化を果たしただけあり、その面白さは折り紙付きです。

未読の方は是非、ご一読をお勧めします。



ゾンビウイルスに関する考察

咬傷について

劇中では「ゾンビ化した人間に噛まれるとゾンビになる」という、

ゾンビを題材とした作品にありがちな描写が初期から明示されていました。

ところで、というものは救急の現場でもなかなかに緊張感のある外傷のひとつです。

医学的には「咬傷こうしょう」と呼びますが、咬傷は他の外傷(打撲傷や刺傷など)に比べて厄介な性質を多く持っています。

出典:グラップラー刃牙 261話


まず(動物の種類にもよりますが)一般的に歯は固くて尖っているため、傷が深くに達しやすいというのが1つ、

2つ目が咬合力(咬む力)は動物が出せる力の中でもかなり強いという点ですね。

咬合力の計測方法は研究者によって異なるため参考値になりますが、

ヒトで60~80kg程度、大型のイヌやライオン・トラともなれば200~400kg

カバは800kg程度、世界最強の咬合力を持つイリエワニに至っては1~2トンにも達するといいます。





ちなみにシロクマの咬合力は500kgほどだそうです。

知らなかった。道理であずきバーを食うのに困らなかったわけだ。







それはともかく、要するに咬傷とは「尖ったものを非常に強い力で押し付けられる」ために組織が損傷しやすいわけですね。


そして3つ目、これが日常で起きうる咬傷としてはきわめて重要な問題となるのですが、

人間・動物を問わず口の中には雑菌・病原菌がウジャウジャいるのです。

出典:Multiorgan Streptococcus milleri Abscesses During FOLFIRINOX Chemotherapy in a Patient With Metastatic Pancreatic Cancer

そうした菌の中には傷に住みついて大暴れしてしまう種類のものも存在します。

放置しているとわりとシャレにならん感染症が起きる可能性もあり、

最悪、咬まれたところが腐るのですぐに病院に行きましょう。



ちなみに人間は動物ほど歯や顎が強くないため、血が出るほど強く噛みつく症例はそれほど多くありませんが、

ケンカで顔面を殴って拳が歯に当たり、刺さってしまうというケースはしばしばあります。

これは最悪中の最悪の場合、指が腐って取れるのですぐに病院に行きましょう。


さて、ここまでに挙げたのはいずれも細菌による感染症ですね。

『ゾン100』やゾンビ映画に出てくるような、「噛まれる」⇒「ゾンビになる」(脳などの中枢神経系に影響し、凶暴性や人を襲う性質を付加する)といった変化はウイルスによる感染症の可能性が高いです。

抜群の知識量を持つヒロインのシズカさんも「ウイルスである可能性が限りなく高い」と発言するなど、

作中序盤からゾンビウイルスの存在が示唆されていました。

出典:ゾン100 8話

ちなみに細菌とウイルスはめちゃくちゃ別物なのですが、

詳しく書くと長くなるので後述します。



狂犬病

数あるウイルス感染症の中でも、「噛まれることで感染する」「動物の脳に何らかの影響を与える」という性質を持つ疾患の代表例が「狂犬病」です。

ここで狂犬病について解説しておきましょう。

狂犬病を理解しておくと、ここから先の話も理解しやすくなります。

出典:常務島耕作 56話


狂犬病とは、読んで字のごとくイヌが狂ったような行動を起こす病気として有史以前から知られていました。

発症したイヌは狂暴化して見境なく咬みつくようになります。

この病気の恐ろしさ唾液を経由してイヌからヒトに感染するということと、

感染後約1~3か月の潜伏期間を経て発症した人間はほぼ100%死亡するという点にあります。

狂犬病を発症したイヌ
出典:日本獣医学会

その仕組みとしては、狂犬病ウイルスを保有しているイヌは唾液に感染力を持っており、

咬まれた場所の神経を通って少しずつ末梢神経⇒脊髄⇒脳へとウイルスが侵入していくというものです。

狂犬病ウイルスの見た目はこんな感じです。(大きさは1万分の1ミリくらい)

出典:国立感染症研究所

脳にウイルスが達すると、頭痛や発熱・倦怠感といった症状が出現し、数日以内に「脳炎」を起こします。

ここまで来ると、もはや現代の医学で命を救うことはほぼ不可能です。

今の日本では殆ど根絶に近い状態ではありますが、万が一発症すると多くの人命に関わるので、

犬を飼う場合は年1回狂犬病ワクチンの予防接種が義務となっているわけですね。

出典:山梨県獣医師会

ちなみに、狂犬病の終末症状としては「狂躁型」「麻痺型」の2つが存在します。

『ブラック・ジャック』に出てきた狂犬病患者の水を恐れる症状(恐水症)は「狂躁型」に分類されます。

出典:ブラック・ジャック「なにかが山を…」


…と、ここまでイヌとヒトだけに起こる病気のような感じでお話ししてきましたが、

狂犬病ウイルスはネコやコウモリなど、たいていの哺乳類が保有できるウイルスです。

というかむしろ、アメリカ等ではコウモリから感染する事例の方がずっと多いですね。

本来、狂犬病ウイルスにはワクチンが存在しますので、ワクチンがしっかり普及している日本やアメリカ等では滅多に見られない病気です。

仮にワクチンを打っていない状態で感染動物に咬まれたとしても、発症までの間にワクチンや抗体を適切に投与すれば発症を防ぐことができます。(曝露後予防)

しかし、逆に予防接種や曝露後予防が普及していない地域では年間5万人以上の方々の命を奪っている恐ろしい病気なのです。

ゾンビウイルスとは

ここで、『ゾン100』劇中に登場した描写を確認してみましょう。

発症していなかった人間がゾンビになる過程が明確に描写されたケースは意外に少なく、

2023年8月に公開されている57話までで4~5話『CAオブザデッド』27話『サケオブザデッド』の2回しかありません。

『CAオブザデッド』では名も無き中年男性が右のふくらはぎを噛まれ、(おそらく)数時間以上の潜伏期間を経て発汗と頻呼吸を初発症状とし、そしてゾンビに変容してしまいました。

出典:ゾン100 5話

第27話『サケオブザデッド』の描写はもっとコミカルで、

これまた名も無き中年男性が泥酔している間にゾンビに噛まれてこれといった前駆症状もなく発症していました。

出典:ゾン100 27話


27話の描写はともかく、5話に出てきたゾンビ化の症状を鑑みると、現実世界の狂犬病における「脳炎」の部分がゾンビ化に置き換わっているものと思われます。

(そもそもゾンビ映画が流行し始めた当初から「モデルは狂犬病ではないか」と言われていたようです)

ゾンビ化の具体的な症状としては、記憶や判断力の低下・狂暴化、そして感染していない人肉を摂食する嗜好の出現といったところでしょうか。

総じて、ゾンビウイルスは現実世界の狂犬病がモデルとなっている可能性が高いと言えるでしょう。


そんな『ゾン100』においてゾンビウイルスに関する科学的考証が大きく進んだのは、

バイオベンチャー企業に勤めるワクチン研究員鶴見雄大が登場した45話『SLオブザデッド』です。

出典:ゾン100 45話

ウイルス研究のプロである鶴見もゾンビ化はウイルスの影響と見立てており、

彼はゾンビウイルスに対抗するためワクチン開発に着手しました。

その過程で、ゾンビに噛まれても半年間発症していない女性・戸加下とかげ泉奈いずなの体内からゾンビウイルスに対する抗体を発見するなど、

ワクチンの開発にこそ至らないものの研究は徐々に進んでいました。

出典:ゾン100 45話


そんな中、事態が一変します。

アキラの想い人であるシズカさんゾンビに左肩を嚙まれてしまいました。

出典:ゾン100 46話

鶴見はシズカさんのゾンビ化発症を食い止めるべく、

イズナの血液から血清を分離し、シズカさんに注射をしました。

出典:ゾン100 47話

鶴見をもってしても効くかどうかは神頼みの状況でしたが、

この血清が無事に効果を発揮し、シズカさんの発症は食い止められました。

出典:ゾン100 47話

漫画特有のご都合な展開も多分にあるとはいえ、この治療過程そのものは医学的に妥当性の高い描写です。

しかし、こうした「ワクチン」「血清」そして「抗体」の関係性は、

ウイルス感染症に慣れ親しんでいない一般人にとってはメチャクチャ分かりにくいものだと思います。

出典:ゾン100 52話

劇中では鶴見がワクチンの作り方の講義をしており、これも非常に分かりやすいのですが、

ここは医者のブログとしてさらに分かりやすい解説を目指したいところです。

そんなわけで、次に「ウイルス」「ワクチン」「血清」「抗体」の関係性について説明していきましょう。



ウイルス・ワクチン・血清・抗体について

ウイルスについて

さて、ウイルスとは何者なのでしょうか!

………


やっきー
やっきー

実は「ウイルスとは何なのか」を詳細に説明するのはメタクソに難しいのです。


Wikipediaを読んでみると「他生物の細胞を利用して自己を複製させる、極微小な感染性の構造体で、タンパク質の殻とその内部に入っている核酸からなる」という

その説明で理解できる奴がどこにおるねんと言いたくなることが書いてありますので、

かつて「腕を締めつけたら血圧が測れるのは腕フェチの妖精さんの仕業」と言い切ったこのブログならではの噛み砕いた表現で解説をしていきます。

※感染症の専門家が見ると卒倒しそうなくらい適当な説明なので、詳しく知りたい方は各自でお調べ下さい。


まず、ウイルスとは超絶小っっっっっさい謎の生き物です。

偉い人達によると生き物かどうかすら怪しいようですがこの際どっちでもいいです。

大事なのは心じゃよ。



それはともかくこの謎の生き物、小さすぎて自分の力だけで増殖する能力すら持っていないため、他のもっと大きな生き物の細胞に寄生することでしか数を増やせられません。

これに対して「細菌」は適切な環境さえあれば自力で増殖できますので、そこが一番の違いと言えるでしょう。

分かりやすく言うとこんな感じです。




ウイルスくん
ウイルスくん

ワイはウイルスやで!


ウイルスくん
ウイルスくん

あぁ^~ そろそろワイも増殖したいんじゃぁ^~


ウイルスくん
ウイルスくん

自分の仲間を沢山作るのがウイルスの生き甲斐やで^~


ウイルスくん
ウイルスくん

でもなぁ…ワイは自分の力だけで増殖できへん…ジエンゴできんからな…




細胞くん
細胞くん

う~~トイレトイレ!


細胞くん
細胞くん

今トイレを求めて全力疾走している僕はごく一般的な神経細胞

強いて違うところをあげるとすれば ビタミンB群が欠かせないってとこかなー


ウイルスくん
ウイルスくん

(ニッコリ)


ウイルスくん
ウイルスくん

や ら な い か


細胞くん
細胞くん

ウホッ!いい男…






ウイルスたち
ウイルスたち

細胞に寄生してめっちゃ増えたわwww


人間
人間

ぎゃああああああ




こんな感じで、細胞がウイルスに乗っ取られることで感染してしまうわけです。

狂犬病ウイルスなら神経細胞に、インフルエンザウイルスやコロナウイルスなら呼吸器官の細胞に、

ヒトパピローマウイルスなら子宮頸部や上咽頭などの細胞に寄生して同様のことが起きます。


血清、抗体について

しかし、人間側もやられっ放しではありません。

「抗体」というウイルスを倒すための武器さえあれば、ウイルスがやってきても排除することができるのです。

抗体はこんな感じの形をしています。






科学者
科学者

よーし!なんかすごい技術を駆使してウイルスの抗体ができたぞ!


科学者
科学者

そこの人、嫌な予感がするから抗体を打っておきますね。


人間
人間

んほおおおおおお






ウイルスくん
ウイルスくん

ワイはウイルスやで!


細胞くん
細胞くん

僕はごく一般的な神経細胞

強いて違うところをあげるとすれば カルシウムが欠かせないってとこかなー


ウイルスくん
ウイルスくん

おっ、あそこに細胞がおるで!

ワイはノンケだって構わないで食っちまうウイルスなんやで。


抗体くん
抗体くん

よろしくニキーwww


ウイルスくん
ウイルスくん

………


ウイルスくん
ウイルスくん

おかしい。こんなことは許されない。


人間
人間

ウイルスが全滅したような気がする!!!


(※狂犬病の場合、実際には抗体だけではなくワクチンも打つ必要があります。)


といった感じで、抗体があればウイルスを追い払うことができるわけですね。

抗体は、ウイルスに対する免疫を保有している人間・動物の血液の上澄み液の中(血清)に含まれています。

『ゾン100』作中で鶴見が作ったのはこの上澄み液(血清)です。

この血清の中に含まれている抗体が、シズカさんの体内からゾンビウイルスを追い出したというわけです。

出典:ゾン100 47話

しかしながら、抗体は一度投与すると少しずつ体内から量が減っていきますので、投与すればずっと効き続けるというわけではありません。

ウイルスの種類にもよりますが、抗体が体内で効果を発揮するのはせいぜい数週間くらいのものです。

ものすごく端的に言えば効果が弱くて短いのです。

これではウイルスを防ぐのには心もとないですね。

そこで活躍するのがワクチンです。



ワクチンについて

ワクチンは人類が作り出した至宝のひとつで、ウイルス対策の決定版です。

しかしながら、仕組みが今ひとつ分からないという方もいらっしゃるかもしれません。





科学者
科学者

よーし!なんかすごい技術で毒性のないウイルスを作ったぞ!


よわよわウイルス
よわよわウイルス

見た目はウイルス、中身は無毒!

よわよわウイルスと呼んでほしいんやで!


科学者
科学者

このよわよわウイルスを、鶏の卵とかを使って…たくさん培養して…


科学者
科学者

ワクチンの完成だ!


ワクチン
ワクチン

ワクチンやで!中身はよわよわウイルスやで!




科学者
科学者

例のごとく、あなたにこのワクチンを打っておきましょう。


人間
人間

んほおおおおおお


白血球くん
白血球くん

えー、免疫細胞の白血球です(半ギレ)


白血球くん
白血球くん

なんかこの体に侵入者が来たみたいやけど…どんな奴や…?


よわよわウイルス
よわよわウイルス

よろしくニキーwww


白血球くん
白血球くん

………


白血球くん
白血球くん

小便はすませたか?神様にお祈りは?

部屋のスミでガタガタふるえて命ごいをする心の準備はOK?


よわよわウイルス
よわよわウイルス

あばばばばばばばば




白血球くん
白血球くん

なんやったんやこいつ?

妙に弱い奴やったな…


Bリンパ球くん
Bリンパ球くん

ようわからんけど、次こいつが来てもすぐやっつけられるように「抗体」作れるようにしとくわな。


白血球くん
白血球くん

あ、Bリンパ球さん。お疲れっす。









細胞くん
細胞くん

僕はごく一般的な神経細胞。


ウイルスくん
ウイルスくん

愛しい細胞!おはよー!チュッ(笑)


Bリンパ球くん
Bリンパ球くん

!!こいつ見覚えあんぞ、抗体作ったろ!!!


抗体くん
抗体くん

よろしくニキーwww


ウイルスくん
ウイルスくん

………


ウイルスくん
ウイルスくん

辛いです……




ワクチンを投与するとこのような流れで人体は免疫を獲得し、ウイルスを排除する仕組みが出来上がります。

そしてワクチンによって自力で抗体を作った場合、

抗体を投与した時よりも遥かにウイルスに対する免疫力が長持ちします。

よって、抗体はあくまでもサブ的な立ち位置。

ウイルスの予防に最も有効なのはワクチンなのです。

ちなみに、ウイルスやワクチンの種類によっては1回の接種ではBリンパ球くんがうまく覚えてくれないことがあります。

そういった性質の違いのため、1回の接種で済むワクチンもあれば、何回も接種しなければならないワクチンも存在するわけですね。


すると、片っ端からウイルスに対するワクチンを作って投与しまくれば

全てのウイルスに対して無敵両津勘吉か何かになれるのでは?と考えたいところですが、ことはそう単純ではありません。

というのも、ワクチンがうまく作れるかどうかはウイルスの性質や構造次第なところがありますし、

ワクチンを開発するのにはもんんんんんんのすごい大金がかかるので、仮に技術的にはワクチンが作れたとしても収益性が見込めなければ作られないこともしばしばあります。



麻疹ワクチン、風疹ワクチン、HPVワクチン、狂犬病ワクチン、インフルエンザワクチン、コロナウイルスワクチンなど、

日本で承認されていないものも含めると20種類以上のウイルスに対してワクチンが存在するわけですが、

人間の病気を引き起こすウイルス数百種類にものぼるため、ウイルス全体から見ればワクチンがある方が遥かに珍しいのです。

有名なところで言うと、例えばノロウイルスやHIV(エイズウイルス)などは2023年現在の技術ではワクチンの製造が不可能です。



よって、我々がとれる予防策としては国がお勧めしているワクチンを適切に接種して、

予防できる感染症に対してきっちり対策をしていくのが一番だということになります。

ワクチンは、ウイルスという脅威に対して我々人類が対抗できる数少ない手段であり、

2017年時点で毎年200~300万人の死亡を防いでいると推計される人類の叡智です。(参考:厚生労働省 予防接種についての10の事実)

「特定の病気にかからなくなる(感染しにくくなる)」というのは現代人に許されたチートアイテムと言っても過言ではありませんから、仕組みを理解して積極的に使っていきたいですね。


抗ウイルス薬について

ここでウイルス対策の番外編・抗ウイルス薬についてもお話ししておきましょう。

ウイルスに直接対抗するという抗ウイルス薬ですが、実用化されているウイルスの種類はワクチンよりもさらに少なく、

2023年8月現在で抗ウイルス薬が承認されているウイルス9種類だけです。

しかも、そんな抗ウイルス薬もウイルスが細胞に感染したあとの増殖を抑えたり増殖したウイルスが外に出てくるのを防ぐといった作用であり、

ウイルスそのものを退治できるわけではありません。

やっきー
やっきー

やはりウイルスへの対抗策の基本はワクチンということになるわけですね。

シナジスについて

最後に、我々産婦人科医が関わることの多いシナジス(抗RSウイルス抗体)」について説明しておきましょう。

「シナジス」は商品名で、正式名称は「パリビズマブ」といいますが、たぶん5分後には忘れてると思うので覚えなくていいです。

私は毎回ググらないと思い出せません。

出典:QLife

RSウイルスというウイルスは、冬の時期に流行して乳幼児に重い感染症を起こすことがしばしばあります。

しかも厄介なことに免疫がつきにくいウイルスなので有効なワクチンがなかなか開発されません。

(高齢者用のRSウイルスワクチンが最近開発されましたが、妊婦さんや赤ちゃんへの投与は未だ実用に至っていません)

抗ウイルス薬も存在しません。


やっきー
やっきー

ワクチンも抗ウイルス薬も使えないとなると、「抗体」が活躍することになります。


なぜシナジスを産婦人科医が意識するのかというと、

特定の赤ちゃんRSウイルスに感染すると重症化しやすいため、

生後6か月~24か月にわたってシナジスを定期的に注射する必要があるからですね。

具体的には、「在胎35週以下」「生まれつきの心臓や肺の病気」「免疫不全」「ダウン症候群」の赤ちゃんが投与の対象となります。

なお、抗体はワクチンと違って3~4週間くらいで効果がなくなってしまうので、1か月ごとに注射しなければなりません。

「なぜうちの子はシナジスを毎月注射する必要があるの?」という疑問を持つご両親は多いのですが、

このようにRSウイルスが起こす病気のことだけでなくワクチンと抗体の違いについても理解する必要があるので、

日ごろウイルス感染症に触れていない一般の方にとってはなかなかの鬼門です。



まとめ

というわけで、『ゾン100』のゾンビウイルス狂犬病ウイルス、そしてウイルス感染症の仕組みからシナジスのことまで一気に解説してきました。

「ウイルスが何なのかさっぱり分からん」という一般の方々にとって理解の助けとなれば幸いです。



何が言いたいのかというと、高田康太郎先生が描く女の子は可愛いということです。

高田作品における最萌ヒロインはうららちゃんである。

異論は認めない。けなげかわいい。

出典:ハレルヤオーバードライブ! 65話


話が進むごとに面白さを増す『ゾン100』は勿論ですが、『ハレルヤオーバードライブ!』もまた全力でお勧めしたい名作です。

未読の方には是非、ご一読をお勧めします。



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