こんにちは!
産婦人科医やっきーです!
以前に『名探偵コナン』で青酸カリが使われた事件を全て解説するという記事を執筆したところ、
読者様からこのようなコメントが寄せられました。
「コナンの世界、蘇生諦めるの早すぎ問題」。
このコメントを書かれた方は素晴らしい目の付け所をお持ちです。
詳細は後述しますが、確かにコナンは「適切に処置すれば助かったんじゃないか?」と思われるような症例であっても見殺しに近い対応をしているような描写もありますし、
特に初期の頃は人死にが出ている事件にも関わらずウッキウキでリフティングするという人として終わっとる奴でした。
そこで今回は、コナンが推理を優先しすぎて人命救助をサボってる疑惑について徹底検証していきたいと思います!
…しかし、この考察には大きな問題点があります。
私は産婦人科医のため、『コナン』に頻出する外傷や中毒などに関しては専門外ですし、
それらの描写を見て救命率を判断するのは実際に救命の現場に当たられている先生方の知見が必要です。
できれば救急医学に長けた先生のアドバイスが欲しいところであります。
そこで、知人関係の救急医に手当たり次第「コナンの蘇生が甘いかどうか一緒に考えてくれない?」と連絡してみたところ、
今回の検証には素晴らしい先生がまんまとご協力をして下さることになりました!!!
大岩祐介先生(救急医)
登録者260万人超のYouTubeチャンネル・リベラルアーツ大学を運営母体とする「リベ大総合クリニック」大阪院院長を務める先生。
救急科専門医・外科専門医を取得しており、救急医療や集中治療、総合診療について豊富な経験をお持ちのガチオブガチの救急医である。
やっきー(産婦人科医)
産婦人科医ブロガー、やっきー。
幼馴染と遊園地へ遊びに行った帰りに黒ずくめの男に毒薬を飲まされ、
目が覚めたら体がシロクマになっていた。
検証のルール
というわけで大岩先生、本日はよろしくお願いします!
こちらこそ、よろしくお願いします。
さて、考察に入る前にまずは本検証のルールを設定していきたいのですが…
ルール…ですか?
『名探偵コナン』は2024年11月現在で単行本が106巻出ていますので、全ての事件を確認してたらとんでもない検証量になることが予想されるんです。
確かに。さすがの私も『コナン』106巻分の確認を一緒にやろうと言われたら何か理由を付けて逃げ出そうと思ってました。
そのため、「コナンが救えた可能性がある描写」のみを確認していきたいと思います。
なるほど。
そこで、私の方でルールを設けさせて頂きました!
①被害者が倒れた(死亡した)瞬間をコナンが目撃している事件
②コナンが被害者の声や物音などの異変を察知し、すぐに駆け付けると被害者が倒れていた(死亡していた)事件
③既に被害者が死亡した状態で発見された事件
④救命処置が不要な、単なる怪我の範疇で済んだ事件
例えば、1巻収録「アイドル密室殺人事件」の藤江明義は死亡した状態で発見されており、
③「既に被害者が死亡した状態で発見された事件」に該当するため除外します。
他にも、26巻収録「意味深なオルゴール」の緒方稔は琴で殴られて気絶したものの、自力で起き上がれる程度の外傷でしたので、
上記の④「救命処置が不要な、単なる怪我の範疇で済んだ事件」にあたると考え、除外します。
要するに、「緊急の救命処置が不要な症例」を除外して、コナンの処置により命が助けられそうな症例の対応が適切かどうかを検証していきたいわけです。
なるほど…概要は分かりましたが、これに該当する症例を106巻分も調べるとなると、かなりの重労働では…?
そこで私が事前に106巻を全部読んでピックアップしておいたのがこちらの43症例です。
サラリと出してきた資料がヤバすぎる。こわい。
確かに手間はかかりましたが、以前書いた記事の検証のしんどさはこんなもんじゃなかったので、
あれに比べると昼下がりのコーヒーブレイクみたいなものでしたね。
長年の疑問に終止符!『ふたりエッチ』優良さんは不妊症なのか?
覚悟のキマり方が幻影旅団の団長ですね…
というわけで、上記43症例のそれぞれの描写について私がその前後関係を解説します。
大岩先生には、各症例について「救命できた可能性があるかどうか」を加味しつつ、
「コナンの救命対応の的確さ」を100点満点で採点して頂きたいと思います。
おおよその目安として、点数はこんな具合ですかね。
0点:
救命処置を取れるにも関わらず全く取らなかった症例。見殺しも同然。
20点:
救命処置は不適切だが、救命率が低い等、わずかながら情状酌量の余地がある症例。
40点:
ある程度の救命処置は取れているが、適切とは言いがたい症例。
60点:
的確な救命処置はそれなりに取れているが、対応の粗が目立つ症例。
80点:
救命処置は的確だが、優先順位や手技に関して若干の粗がある症例。
100点:
救命処置を完璧にこなした症例。救急医学の目線で見ても非の打ち所がない。
採点除外:
的確な救命処置が行われたかどうかが不明、または生存の可能性が皆無で手の施しようがない症例。
なるほど…難しそうですが、やってみます。
それでは、全43症例の考察を始めましょう!!
目次 非表示
『名探偵コナン』描写の確認
(1/43)奇妙な人捜し殺人事件
まず最初に検証対象となる事件が、2巻収録「奇妙な人捜し殺人事件」です。
灰原の姉ちゃんこと宮野明美は銃撃を受けてしまい、コナンの目の前で死亡しました。
心肺蘇生の描写こそありませんが、救急車は呼んでいますし、
最低限の対応はできているように見えますね。
腹部を撃たれているようですが…この場合、救急車を呼ぶ以上にできる処置はあるでしょうか?
うーん、喀血をしているところを見るとたぶん肺も撃たれてますね。
死亡までの時間経過を考えるに、大動脈や下大静脈といった大血管も損傷している可能性が高いかなと。
そうなると、圧迫止血の効果も望めません。
救急隊が棒立ちしてるところ以外はほぼ適切と言って良いでしょう。
なるほど…確かに棒立ちですね…
撃たれて倒れた人を見てすぐに救急車を要請したコナンの対応自体は適切です。
ただ、意識を消失した時点で救急隊や警察官はすぐに心肺蘇生をすべきでした。この描写の後に行われたのかもしれませんが、だとしても動きが遅いですね。
今回の対応については80点とします。
(80点:救命処置は的確だが、優先順位や手技に関して若干の粗がある症例)
(2/43)豪華客船連続殺人事件
続いては3巻「豪華客船連続殺人事件」です。
被害者の簱本竜男は頭部を鉄パイプのようなもので殴られ死亡しました。
おそらく受傷からコナンが駆け寄るまで1~2分、小五郎が駆け寄るまででもせいぜい4~5分程度といったところでしょうか。
ふむふむ…脳挫傷がきっかけで心肺停止するということは、脳に血が溜まり、呼吸中枢のある脳幹が圧迫され、呼吸ができなくなる必要があるわけです。
そうなると呼吸が止まるまでに多少のタイムラグが必要なんですが、このわずかな時間で心肺停止しているということは尋常じゃないくらい酷い脳挫傷ですね。
猛スピードのトラックに激突とかのレベルです。ここまでの外傷を与えられる犯人がどんな人間か気になりますね。
美大生の気弱な青年です。
どういうこと???
人間とは思えないパワーを発揮した美大生はさておき、豪華客船の船上という状況も踏まえると救命の可能性は皆無と言って良いでしょう。
今回の症例は採点対象から除外します。
(3/43)カラオケボックス殺人事件
続いては5巻「カラオケボックス殺人事件」です。
この事件は以前の青酸カリ考察記事でも取り上げたんですが、そもそも青酸中毒で吐血はしないんですよね。
そうですね…まあ青酸中毒死だとしても、ただちに呼吸管理をすれば生存の可能性はあります。
とはいえバンドメンバーが救急車を呼んでいますし、心肺蘇生が行われたかどうかも不明です。ぶっちゃけコナンの出る幕はない事件かなと。
青酸カリで血は吐かないという大前提からして医学描写がおかしいので、何ともコメントに困る事件でした。
コナンの活躍の場はなさそうですし、今回の症例は採点対象から除外します。
(4/43)6月の花嫁殺人事件
続いては8巻「6月の花嫁殺人事件」です。
こちらも以前の記事で取り上げたことがあるんですが、
コナンは苛性ソーダ誤飲という原因を迅速に突き止め、救急要請と牛乳での口腔内洗浄という的確な処置を行い救命しました。
何故この的確な処置をいつも出来ないんですかね???
コナンは赤の他人が死んだ場合は犯人追及のことしか考えなくなり、
身内に何かあった時だけ救命を頑張る傾向がありますので。
最低すぎる。
苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)のような強アルカリ物質はタンパク質を分解する作用が強いので、牛乳による洗浄は応急処置として適切ですね。
今回の対応は100点ですが、コナン君は毎回これくらい適切に対処してほしいところです。
(100点:救命処置を完璧にこなした症例。救急医学の目線で見ても非の打ち所がない)
(5/43)三つ子別荘殺人事件
続いては13巻「三つ子別荘殺人事件」です。
頭部外傷による死亡です。少なくとも6回、大きめの石で頭部を殴打されています。
被害者の声が出たのは最初の1回だけなので、この時点で意識消失をきたすほどの脳挫傷を負ったと考えるのが自然ですかね。
そうそう、頭部外傷だけで即死となったら少なくともこれくらいのダメージですよ!!
(こわい)
医療アクセスは良くないであろう郊外の別荘での事件ですし、救命の可能性は低いがゼロではない…と言ったところでしょうか。
そうですね…とはいえ、コナンは犯人を追いかけすぎです。
容疑者の顔も確認できてますし、被害者の安否を確認するのが優先かなと。
おっしゃる通りです。
ちなみに先生、これは余談なんですが。
はい。
この事件の被害者である富沢哲治氏は、
午後3時に何のアポも無く勝手に息子の別荘に押しかけ、
食材を買ってきて息子の嫁に料理を作らせた挙句、
ヨソの小学生も来ているのに夜11時半までナイターを観続けるという、
現実に居たら親族から陰で疎まれていること間違いなしの人間です。
……
……
やっきー先生、こんなことを医療者の口から言うのは非常に憚られるのですが…
はい。
このオッサン、殺されても仕方なかったのでは?
それ以上いけない。
被害者の人間性は非常にマズいですが、とはいえ救命できる可能性がある限りは全力を尽くすべきです。
園子たちが被害者のもとに駆け寄っているとはいえ、被害者より犯人優先なコナンの悪癖が如実に出ているのがマイナス点ですね。
今回の対応は60点とします。
(60点:的確な救命処置はそれなりに取れているが、対応の粗が目立つ症例)
(6/43)大怪獣ゴメラ殺人事件
続いては13巻「大怪獣ゴメラ殺人事件」です。
胸部から背部に達するほどの刃渡りで刺傷されていますね。
この犯人、フィジカル凄すぎません?どういう腕力ですか?
確かに幽白の飛影かと思いましたが、豪華客船で頭を殴られた症例といい、
『コナン』において犯行の瞬間にはバイキルトがかかるとみて良いでしょう。
受傷部位や出血量をみると、穿通性鋭的心臓損傷か胸部大動脈損傷が疑われます。
救命の可能性は低いですがゼロではありませんので、「ダメだ死んでる…」で済ますのではなく可能な範囲の蘇生処置は行うべきです。
また、今回も勝手に犯人を追ってしまっていますが、それより先に少年探偵団に頼んで救急要請しておいたり、周囲の大人に心臓マッサージを依頼するのが優先でしょう。
「やるべきことの出来てなさ」は強めと判断し、今回の対応は20点とします。
(20点:救命処置は不適切だが、救命率が低い等、わずかながら情状酌量の余地がある症例)
(7/43)スキューバダイビング殺人事件
続いては17巻「スキューバダイビング殺人事件」です。
猛毒を持つエラブウミヘビによる咬傷です。
ただちにダイビング仲間による毒の吸引が行われ、
コナンは紅茶(ウミヘビ毒を中和する作用のあるタンニンを含む)で傷口を洗浄しました。
素晴らしい対応ですが、なぜいつもこれくらい本気を出さないんでしょうか。
……
被害者が水着姿の若い女性だから?
最低かな?
それはさておき、確かにウミヘビ毒のタンニンによる中和作用は以前から知られていますね。
かなり古い文献ではありますが、1965年に行われた実験で、
ウミヘビ毒と、ウミヘビ毒にタンニンを混ぜたものをそれぞれマウスに注射したところ、
タンニンを混ぜた方のマウスだけが生き残ったというものが存在します。
(出典:本間学「ハブ毒とエラブウミヘビ毒の研究」日本細菌学雑誌 20(6), 1965)
ちなみにハブ毒に関しても同様にタンニンが有効だったほか、
マムシ毒にも有効だったという文献もあります。
タンニン、なかなか万能ですね…
エラブウミヘビ咬傷という、滅多に本州では見られないレアケースの応急処置まで熟知しているのは流石ですね。
物語内でも解説されていますが、エラブウミヘビは臆病なので自分から噛みにいくことはほぼありません。ウミヘビを見かけても手を出さないようにしましょう。
今回の対応は100点とします。おめでとうございます。
(100点:救命処置を完璧にこなした症例。救急医学の目線で見ても非の打ち所がない)
(8/43)暗闇の中の死角
続いては24巻「暗闇の中の死角」です。
今回は『コナン』の中では珍しい、感電死の症例です。
現場は小規模ながらも病院であったため、東都医大を首席で卒業した医師・新出智明がすぐに心肺蘇生を行いましたが、救命は叶いませんでした。
ふむふむ、まあ心肺蘇生までの流れは良いとして…
気になるのは「強心剤入りの点滴」という医療の現場では聞き慣れないワードです。
確かに心肺停止時には、強心剤の一種であるアドレナリンを投与はしますが、
これは点滴に入れるものではなく、そのまま注射するものです。
点滴に入れても効果は半減以下です。
確かに…このような病院で行う蘇生処置を「二次心肺蘇生法(ACLS)」と言いますが、学生か研修医のうちにやる初歩中の初歩ですね。
東都医大を首席で卒業したにしては妙な動きです。
まあ、とはいえ実の父親が目の前で心肺停止になったと考えれば気が動転するのもやむを得ないところですが…
新出先生の指示には違和感があるものの、基本的な救命処置はできているようですし、コナンの出る幕はなさそうです。
今回の症例は採点除外とします。
(9/43)黒の組織との再会
続いては24巻「黒の組織との再会」です。
シャンデリアが落ちてきたことによる圧死ですね。
そばに警察が控えていた中での事件ですが、これといった心肺蘇生もせず死亡確認してます。
死亡確認するのは医師の役割ですから、警察官なら救命処置を優先して欲しいところですね…警察学校で習いますよね…?
ちなみにこのエピソード「黒の組織との再会」は黒の組織との因縁にスポットが当たる人気回ですが、
ここで殺された吞口議員の存在はファンからは完全に空気扱いされています。
可哀想すぎる気もしますが、確かに私も大人に戻った灰原しか記憶にないです。
後にも先にもここでしか見られない大人メガネ哀ちゃんも捨てがたいですが、
やはり個人的な見どころはジンの兄貴の活躍ですね。
ジンの活躍というと、何がありましたっけ?
ジンの愛車は50年前のクラシックカーであり、珍しすぎて哀ちゃんにあっさりジンの持ち物だとバレます。
おお…?
50年前の車であるがゆえに犯罪組織の幹部にあるまじきセキュリティの低さが露わとなり、コナンに侵入されます。
……
車内にまんまと発信器と盗聴器を仕掛けられ、車の周りが荒れていることに気付きますが、
ウォッカに「通行人が見てたんじゃないですかい?兄貴の車珍しいから…」と言われてご機嫌になりスルーしました。
……
……
この人、本当に犯罪組織の幹部ですか…?
まあ待ってください、この直後にジンの兄貴は素晴らしい洞察力を発揮するのです。
ほう、挽回の機会があると。
車内に落ちてた髪の毛を哀ちゃんのものだと特定し、裸の哀ちゃんを想像してニヤニヤします!!!
ド変態が露呈しただけじゃないですか。
ジンの兄貴がポンコツすぎてちょっと忘れそうになってましたが、シャンデリアで圧死した吞口議員への対応について考えてみます。
警察が目の前にいる中での事件にも関わらず、適切な処置は全く取られていません。
コナンに対する責任は問いづらいですが、警察に関しては0点を付けましょう。
(0点:救命処置を取れるにも関わらず全く取らなかった症例。見殺しも同然)
(10/43)バトルゲームの罠
続いては27巻「バトルゲームの罠」です。
テトロドトキシン(フグ毒)を注射されたことによる毒殺ですね。
なんと右上腕動脈から毒を注射されたようです。
ど、動脈注射ですか…
よほど特殊な状況を除いて、医学的には動脈から薬を注射するのはタブーなんですけども。
そうですね…薬を注射するのは通常、静脈からです。
動脈に少しでも空気が入ったら「空気塞栓」を起こし、今回で言うと右手が壊死する可能性すらあります。
まあ、今回はそもそも殺人目的の注射だったので右手がどうなっても良いっちゃ良いのでしょうが。
というかそもそも、普通に座ってる人の右上腕動脈を狙って注射なんてそうとう難しいですから、
犯人はかなり無駄なミラクルを起こしてますね。
あと、いくら注射器といえど動脈なんて突いたら誤魔化しようがないくらい出血すると思うんですが、現場の誰も気づかなかったんですかね?
毒を注射されてからコナンが駆け寄るまでは格闘ゲーム1回分程度の時間経過です。せいぜい2~3分ですかね。
警察が来るまで被害者は全く動かされていませんが、テトロドトキシンならただちに呼吸管理をすれば生存できる可能性があり、救命処置により命を救える可能性がありました。
今回の対応は0点とします。
(0点:救命処置を取れるにも関わらず全く取らなかった症例。見殺しも同然)
(11/43)新幹線護送事件
続いては30巻「新幹線護送事件」です。
とある事件の被疑者が新幹線で護送される中、ニセの仕込みナイフで自分の腹を刺したように見せかけ、高木刑事の目を欺きました。
しかし高木刑事が戻ってくるまでの間に、真犯人が被疑者を本物のナイフで刺殺し、上記のような状況になったわけです。
また妙にトリッキーな殺人方法ですね…
それはそうと、コナンや他の警察だけでなく佐藤刑事もめちゃくちゃ諦めが早いですね。
『コナン』世界の警察官は心肺蘇生してはいけないルールでもあるんじゃないでしょうか。
高木刑事が現場を離れて戻ってくるまではせいぜい1~2分と救命の可能性はありますが、
新幹線の車内という事情を鑑みると緊急停止~病院搬送までのタイムラグは無視できず、救命率は低そうです。
ただし、この症例は蘇生処置を怠った全員に問題があるので今回の対応は20点とします。
(20点:救命処置は不適切だが、救命率が低い等、わずかながら情状酌量の余地がある症例)
(12/43)集められた名探偵! 工藤新一vs.怪盗キッド
続いては30巻「集められた名探偵! 工藤新一vs.怪盗キッド」です。
今回もいつもの青酸中毒死です。
この世界の人たちは青酸中毒だと1秒で死ぬルールでもあるんですかね?
青酸中毒は、簡単に言えば全身の細胞が窒息するようなものなので、適切な対応さえできていれば救命の可能性はあるんですが。
擁護できる点としては、車も全く通らないくらい山奥の洋館での事件なので、救命の可能性が非常に厳しそうなことくらいでしょうか…
あと大岩先生、これは余談なのですが。
聞きましょう。
このとき殺された美食家探偵・大上祝善(51)が事件前に言い放った言葉があります。
ほう。
美食と殺人はワシの脳細胞を高揚させられる唯一の宝なのだからな!!
………
コイツを殺した犯人にちょっと応援の気持ちが芽生えました。
殺人で脳細胞が高揚する今回の被害者は犯罪者予備軍の思考としか言いようがないので、結果的に悪の芽が摘まれた事件だったのかもしれません。
しかし、それとこれとは別問題です。どんな人も等しく救命されるべきであり、探偵たちの行動は適切とは言えません。
とはいえ地理的条件から救命率の低さは否めませんので、今回の対応は20点とします。
(20点:救命処置は不適切だが、救命率が低い等、わずかながら情状酌量の余地がある症例)
(13/43)大阪ダブルミステリー 浪花剣士と太閤の城
続いては31巻「大阪ダブルミステリー 浪花剣士と太閤の城」です。
焼死+転落死という、明らかにオーバーキルな被害者です。
スライムにイオナズン唱えるレベルですね…
全身火だるまの上、どう贔屓目に見てもビルの3~4階相当の高さから転落したものであり、救命の可能性は著しく低そうですね。
こんなに火だるまになってよくこれだけ手を動かせたな、というツッコミどころもありますが。
救命率の低さに加え、心肺蘇生をしたかどうかも不明ですし、今回は採点除外とします。
(14/43)アイドル達の秘密
続いては32巻「アイドル達の秘密」です。
タレントの岳野ユキは殺人未遂を犯しますが、自責の念にかられ、
血糖降下薬をオーバードーズし自殺を図ります。
しかしコナンはすぐさま低血糖症状だと見抜き、スティックシュガーを飲ませて救命しました。
ホント青酸カリ以外には異様に強いですねコイツ。
それはともかく、診断と対応のスピードは救急医並みかそれ以上です。
救急医になってほしくはないですが救急医の適正はあると思います。
私も同意見です。コナンはかなり腕の良い医者になれそうですが、絶対なっちゃダメな人間でもありますね。
コナンの対応自体は100点ですが、低血糖が改善したならすみやかに意識は戻るはずです。
なぜ2日も寝込んでたんでしょう?一緒に睡眠薬も飲んだ?それにしたって丸二日間も寝る睡眠薬って何?
コナンワールドにはまだ見ぬ完全犯罪御用達の薬でもあるのかもしれません。
(100点:救命処置を完璧にこなした症例。救急医学の目線で見ても非の打ち所がない)
(15/43)犯罪の忘れ形見
続いては33巻「犯罪の忘れ形見」です。
花瓶による頭部外傷ですね。
もはや『コナン』ではお馴染みですが、警察が来るまで被害者が微動だにしておらず、心肺蘇生が全く行われてないですね…
この時点でコナンの対応がズサンなのは一目瞭然ですが、問題はその後です。
その後…ですか?
この被害者、棚の上から花瓶が落ちてきただけで死んだようです。
いくらなんでもヒットポイント低すぎませんか???
頭に花瓶が落ちてきただけで死んでしまうというクリボー以下の耐性にそもそもの問題がある気がしますが、
コナンが蘇生処置を怠っていたことは言い逃れようがありません。
今回の対応は0点とします。
(0点:救命処置を取れるにも関わらず全く取らなかった症例。見殺しも同然)
(16/43)西の名探偵vs.英語教師
続いては34巻「西の名探偵vs.英語教師」です。
21階からの転落死です。
先生、これは救命の可能性としてはいかがですか…?
21階って60メートル強ですからね…さすがに即死ですね。
分かりやすいもので例えると、甲子園球場の内野を覆っている「銀傘」の高さが30.6メートルなので、あれの倍の高さです。
それは即死ですね…!!
というか、ぶっちゃけると脳がそこらへんに飛び散る高さだと思います。さすがに少年誌だからか描写はされてませんが。
それ描ける少年誌はジャンプのハンター漫画くらいですね…
さすがのコナン・服部といえど、21階からの転落死はどうあがいても救命不可能です。私でも何もしません。
今回は採点除外ですね。
ただ、目の前に21階から落下死した人がいる(ぶつかったら自分も死ぬところだった)にしては三人とも肝が据わりすぎだと思います。
会話のテンション的には「俺スマホどこ置いたっけ?」「さっき机に置いてたよ」くらいの日常会話感です。
いくら東西の高校生探偵とFBI捜査官といえど、「場数が違う」という言葉では到底片付けられません。人間の心を捨て去っている域に到達しています。
(17/43)迷宮のフーリガン
続いては34巻「迷宮のフーリガン」です。
今回は腹部刺傷による死亡なわけですが…
これで即死はちょっと無理がありますね…
大動脈などにクリーンヒットしていたとしても、救急搬送に間に合うくらいの時間はあるでしょうね。
もしかすると駅員や救急隊など、周囲の人間の対応がメチャクチャ遅かったのかもしれません。
事件現場は杯戸町(米花町の隣町)のようですが、米花町の近隣住民であるという自覚が足りません。喝です。
大岩先生がとうとう張本勲ポジションに…
どう見ても即死に至るような外傷とは言いがたいですが、コナン自身の駅員への対応や救急車の指示は的確と言えます。
ケチをつけるとすれば、現場を離れる前に心肺蘇生の人手を確保しておくべきだったことと、
事情を知らない駅員に対して余りにも複雑な指示をしたこと(電車を止める・全ての改札口への連絡・特定のチームのサポーターに対する検問・午後5時以前に購入した切符を持つ人間に限る)が落ち度と言えるかもしれません。
今回の対応は80点とします。
(80点:救命処置は的確だが、優先順位や手技に関して若干の粗がある症例)
(18/43)中華街 雨のデジャビュ
続いては34巻「中華街 雨のデジャビュ」です。
いつもの(青酸中毒で何の蘇生処置もせず警察が来るまで現場に放置)です。
いつもの(青酸中毒で何の蘇生処置もせず警察が来るまで現場に放置)ですね。
もう分かりますよね?全員もれなく0点です。
(19/43)似た者プリンセス
続いては41巻「似た者プリンセス」です。
この事件の被害者は三発の銃弾を受けて死亡したわけですが、
現場に立ち会った工藤有希子(新一の母)の反応が…
この状態だったというわけよ!
この状態だったというわけよ!
…じゃないですよ!!!
心肺蘇生してくださいよ!!!
大岩先生、この事件のトリックをご説明してもよろしいですか?
?どういったトリックを使われたのでしょうか。
犯人は執事なのですが、彼はあらかじめ被害者のコーヒーの中に失神しやすくなる薬「イソプロテレノール」を混入していました。
失神を人工的に誘発する検査「ティルト試験」の応用ですね。
今回の犯人は、
本を読み終わった被害者が背伸びをして失神するのを期待し、
失神して倒れた様子を「打たれた」と勘違いされるのを期待し、
合鍵を取りに行くフリをして庭から銃殺するところを誰にも見られないよう期待する(※夜中まで庭園を手入れしてる庭師が住み込んでいる)という、
トリックの肝心な部分の全てが他人任せの犯行となっております。
よくそんなガバガバトリックで人を殺そうと思いましたね。
『コナン』屈指のトンデモトリックではありますが、発想自体は面白いです。
とはいえ、ティルト試験におけるイソプロテレノール負荷は1~3μg/minと投与量が厳密に定められており、コーヒーに入れた程度でそんな上手いこと薬が盛れるとは思えません。100回やって1回うまくいくかどうかだと思います。
救命の可能性について考えると、犯人(老人の執事)が片手で撃てる程度の口径の拳銃を三発食らっただけなので、適切な処置を行っていれば救命の可能性は十分にあり得ました。
今回の対応は0点です。情状酌量の余地なしです。
(0点:救命処置を取れるにも関わらず全く取らなかった症例。見殺しも同然)
(20/43)トイレに隠した秘密
続いては41巻「トイレに隠した秘密」です。
いつもの(青酸中毒で何の蘇生処置も略)です。
いつもの(青酸中毒で何の蘇生処置も略)ですね。
(前略)全員0点です。
(21/43)丸見え埠頭の惨劇
続いては45巻「丸見え埠頭の惨劇」です。
神経毒を塗られた釣り針で手首を引っかけられ、呼吸困難に陥った症例です。
一応、コナンの人工呼吸の指示や救急搬送により命は助かりました。
うーん…そんな引っ掻く程度の傷で呼吸までできなくなる毒って何ですかね…
釣り師の犯行、かつ神経毒となるとフグ毒(テトロドトキシン)が思いつきますが…
いくらフグ毒でも、引っ掻く程度の傷ならせいぜい指先がしびれる程度だと思います。コナン世界には我々のあずかり知らない謎の毒があると考えるほかありません。
うーむ、確かに……
……そうだ!!!ごく少量の投与でも呼吸困難になりうる薬がありますよ!!!
ほう?そんなのありましたっけ?
中期型のベンズナイフに仕込まれてたやつです。
話がややこしくなるので別作品の話題は置いといてもらえますか?
この症例は一見うまく立ち回っているように見えますが、毒の種類も特定できておらず、経口摂取の可能性もあるうちから人工呼吸をするのはかえって危険です。
下手をするとコナンも神経毒で共倒れになってた可能性もあります。
というか、普段人工呼吸なんて全然やらないくせに何でこういう時に限ってやるんですかね。
自分の身を無駄に危険にさらしたため、今回の対応は20点です。
まずは自分の身を守れてこそ適切な救命もできるのです。
(20点:救命処置は不適切だが、救命率が低い等、わずかながら情状酌量の余地がある症例)
(22/43)仏滅に出る悪霊
続いては48巻「仏滅に出る悪霊」です。
心臓に持病のある人に心臓発作を起こさせ、
常備薬を飲ませないように妨害して殺害するという手法です。
そんな上手い事いきます???
そもそも心臓発作って、そう簡単に狙って起こせるものなのでしょうか…
そこはこの犯人、きっちり心臓発作を起こさせる方法を用意していましたとも。
心臓発作を起こさせる方法…?伺いましょう。
知人が双子だったことにビックリして心臓発作が起きるというものです。
これ末代に残るくらい恥ずかしい死因じゃないですか???
あまりにもトリッキーな殺人法はさておき、小五郎も横溝警部も死亡確認が早すぎです。
くどいようですが、さっきまで生きてた人が心肺停止してたら、まずは心臓マッサージしてください。
コナンも救急車を呼んだ以外褒めるところがないです。持病の心疾患による心停止ならまだまだ救命の余地はあります。
この対応は0点ですね。
(0点:救命処置を取れるにも関わらず全く取らなかった症例。見殺しも同然)
(23/43)山姥の刃物
続いては56巻「山姥の刃物」です。
頸動脈断裂による失血死です。
救急車が来るまで1時間かかる現場という事情もあり、救命率は高くはなさそうですが…
……
これなんですけど、たぶん頸動脈断裂してないと思います。実際の頸動脈断裂はもっと血が噴き出ます。
コナンの診断がそもそも間違ってる!?
漫画的表現で血があまり出ていないように描かれているとしても、頸動脈断裂なら圧迫止血がうまくいけば救命の可能性はありますからね。
どちらにせよ、これを怠ったのはコナンのミスです。
救命処置として「心臓が止まってたら心臓マッサージ」と同じくらい、
「血が出てたら圧迫止血」は大切です。
そういうわけで、灰原の「もう手遅れね…」はあまりにも無慈悲と言わざるを得ません。
……
私は哀ちゃんから蔑んだ目で「もう手遅れね…」と言われてみたいですが?
先生のドMはどうでもよいです。
本当に頸動脈断裂であるとするならば少々厳しいことは否めませんが、圧迫止血はしてほしいところです。
地理的な救命率を加味して…まあギリギリ20点といったところでしょうか。
(20点:救命処置は不適切だが、救命率が低い等、わずかながら情状酌量の余地がある症例)
(24/43)風林火山 迷宮の鎧武者
続いては59巻「風林火山 迷宮の鎧武者」です。
絞殺ですね。
そうですね。
……
絞殺の考察ですね!!
静粛にお願いします。
ちなみに首を吊ることによる死因は法医学的に「縊死」(いし)と呼びます。
首を吊ると即死すると思われることも多いですが、時間経過と処置次第では助かる可能性もあるんですよ。
ほう、なるほど?
少し古い報告にはなりますが、2002年の大宮赤十字病院の報告で、
首吊り自殺を図ったものの、救急搬送されて病院到着時に心拍がみられた8例のうち7例が社会復帰できています。
ただ、病院到着時に心肺停止していた36例はすべてその後死亡したようです。
(参考:清水敬樹「当救命救急センターにおける縊首症例の現状 縊首, 病着時心肺停止(CPAOA), 蘇生後脳症」蘇生 21(3): 214-214, 2002.)
ふむ、初期対応が大事なわけですね…
被害者が声をあげてから現場を見るまでの時間経過はわずかのようですし、蘇生の可能性はそれなりにあります。
確かに発見した時点で心肺停止に至っている場合は救命率が低いと言わざるを得ませんが、この症例は大和刑事の諦めが異常に早いですし、被害者を下ろすまでダラダラ喋りすぎです。
今回はコナンの出る幕はあまり無さそうですが、大和刑事の対応は20点とします。
(20点:救命処置は不適切だが、救命率が低い等、わずかながら情状酌量の余地がある症例)
(25/43)回転寿司ミステリー
続いては63巻「回転寿司ミステリー」です。
いつもの(青酸中毒で略)です。
いつもの(青酸中毒で略)ですね。
……
……
やっきー先生、そろそろ面倒くさくなってきたんで青酸中毒の症例まとめちゃいませんか?
賛成です。
それではここから青酸中毒をひとつにまとめますが、
青酸カリの事件に関する詳細は別記事で解説していますので、気になる方はそちらをチェックして下さいね!!
コナンのワンパターンを利用して他記事の宣伝してる…こわ…
『名探偵コナン』でおなじみの毒物・青酸カリについて徹底解説する
(26~33/43)その他 青酸カリの事件
それでは一気にいきます。
69巻「裏切りのホワイトデー」、
73巻「死ぬほど美味いラーメン」、
74巻「毒と幻のデザイン」、
84巻「ギスギスしたお茶会」、
96巻「代役・京極真」、
97巻「36マスの完全犯罪」、
98巻「天罰くだる誕生パーティー」、
102巻「トリプルコラボの浮気疑惑」です。
米花町では青酸カリの自販機か何かあるんですか???
一応、これらの描写をやっきー先生と一緒に全てチェックしましたが、
雪崩によって交通が断絶され、携帯電話も繋がらなくなった長野県の山奥で起きた「36マスの完全犯罪」を採点除外とする以外は全て0点として扱います。
その他、特記すべき事項といえば救命よりも通報と犯人への威嚇を優先した平次の対応が下の下であることと、
病院で見舞客が急変したにも関わらずハリーコール(超緊急時用の非常放送)すら行われた気配のない杯戸中央病院のスタッフ全員にマイナス100点をつけたいくらいですね。
何度も言いますが、さっきまで生きてた人が心肺停止になったらとりあえず心臓マッサージだけでもしましょう。
青酸中毒者にマウストゥマウスの人工呼吸は危険ですが、人工呼吸は適切に行うのが難しいですし、とりあえず心臓マッサージをするだけでも救命率は上昇します。
上記の事件に関わった人たち全員0点です。
(34/43)時の番人の刃
それでは気を取り直しまして、72巻「時の番人の刃」です。
胸部刺殺ですね。
……
もうお分かりですよね?
被害者が微動だにしてないので0点です。
Exactly(そのとおりでございます)
(前略)0点です。
(0点:救命処置を取れるにも関わらず全く取らなかった症例。見殺しも同然)
(35/43)1ミリも許さない
続いては76巻「1ミリも許さない」です。
夫婦喧嘩の末に起きた、胸部刺傷の症例ですね。
肺動脈を損傷する重体でしたが、応急処置と緊急手術が功を奏し、一命を取り留めました。
うーむ、なるほど…
これ、一見するとコナンの応急処置が良さそうに見えるんですが、救急医学的にはちょっと微妙ですね。
と言いますと…?
コナンは「心臓の周りの循環血液量を増やすんだ!」と言ってますが、
こんなふうに大きな血管が損傷している場合、心臓に流れる血を増やすとかえって出血量が増えて危険なんですよ。
そのため、血圧が下がってしまうことは承知の上で、手術ができる環境になるまで血圧が低い状態をあえて保っておく選択肢をとるべきです。私なら足は上げませんね。
このような手法を「permissive hypotension(低血圧の容認)」と呼びまして、外傷の多い戦場などでは現在主流の考え方になっています。
なるほど…!!勉強になります。
ちなみに大岩先生、この症例ですが続きがありまして。
ほう?
刺された奥さんは妊娠してました。
なんですと???
この夫婦はともにAB型のRhマイナスという非常に稀な血液型なんですが、
大怪我を負ったら大変なことになる夫を気遣った妻が行動を束縛し、夫がその束縛に耐えかねてこの事件を起こした…という流れです。
このあと、胸を刺された奥さんが夫を許して仲直りしました。
ハッピーエンドになる兆しが全く見えないのは私だけですか…?
肺動脈というのは心臓と肺を繋いでいるメチャクチャ重要な血管です。よく無事で済んだものです。
AB型Rhマイナスとなると輸血もそう潤沢には用意できませんから、救命できたことは奇跡的ですね。
Permissive hypotensionで対応できていれば文句なしの100点でしたが、さすがに一般人のコナンには求めすぎですかね。
結果的に救命もできていますし、採点は80点です。
(80点:救命処置は的確だが、優先順位や手技に関して若干の粗がある症例)
せっかくの妊娠症例なので私からもひとこと。
おそらく被害者の紺野純夏さんは妊娠のだいぶ初期(8~10週くらい)かなと思います。
とっくに妊娠検査薬を使ったり、産婦人科を受診したりして妊娠は分かっていたと思いますが、悪ノリしてしまう性格からしてもう少し泳がせてみたかったんでしょう。
ただ、この時期の赤ちゃんは母体からの血液をそれほど必要としませんが、これがあと2~3か月遅かったらヤバかったですね。
ショック状態になるほどの出血を起こすと子宮動脈の血流も低下しますので、赤ちゃんに血が通わなくなります。
要するに、死産していた可能性が高いです。
妊娠が分かった時はきちんと旦那さんにも伝えましょう。
(36/43)命を賭けた恋愛中継
続いては76巻「命を賭けた恋愛中継」です。
警察に恨みを持つ犯人が、あらかじめ服毒しておいた状態で警察と話をし、その後自殺をする…というものです。
ただ、毒の種類がまったく不明なので何とも言えませんね…
そうですね…心肺蘇生したかどうかも分かりませんね。
服毒したあと佐藤刑事に長々と喋る余裕はありつついい感じの時間が経過したら死ぬという、これまた不可解な毒物です。
これに関しては採点除外とします。
(37/43)ジョディの追憶とお花見の罠
続いては80巻「ジョディの追憶とお花見の罠」です。
撲殺(頭部外傷)ですね。
被害者は「黒兵衛」と呼ばれるスリ師の中年女性です。
「殺されてからそんなに時間は経ってないようね…」
…じゃありませんよ!!!FBI捜査官なら心肺蘇生くらいできるでしょう!!!
まあジョディ先生は財布をスられても気付かずドヤってるFBI捜査官ですし。
巨大な犯罪組織を相手に捜査中だと思うんですが、そんな隙だらけでいいんですかこの人…
ちなみにこの事件の犯人は大量の五円玉をヒモで棒状に束ねた凶器を使って撲殺をしました。
五円玉を使ったのは、そのままお賽銭に入れてしまうことで凶器の証拠隠滅を図るためですね。
ふむふむ、神社での犯行という状況を利用したトリックですね。
しかし五円玉を束ねるためのヒモにはなぜか自分の靴ヒモを使用し、
血のついた証拠残りまくりの靴ヒモを使用し続けていたため物的証拠バッチリで逮捕されました。
(靴ヒモを使ってたことに関する説明は特になし)
いくら何でもアホすぎませんか!?
証拠品を残さないようにするために、丸見えの状態で証拠品を身に着けるという常軌を逸した犯人の行動は理解できませんが、
コナンやジョディ先生は救命処置が取れているとは全く言えません。
時間経過的にも、殴られてからコナン達が駆け付けるまではせいぜい2~3分ほどでしょう。
撲殺の現場を見ていた阿笠博士も、コナンを呼ぶ前後で救急車を呼ぶとか何とかできたはずです。
これは言い逃れができないので、採点は0点です。
(0点:救命処置を取れるにも関わらず全く取らなかった症例。見殺しも同然)
大岩先生、私からも一言失礼します。
この事件が起きる前におみくじ引いて大吉でドヤってる哀ちゃんが可愛すぎるのでぜひご堪能ください。
このスペースってそういうことに使っていいんですか?
(38/43)堤無津川凧揚げ事件
続いては84巻「堤無津川凧揚げ事件」です。
被害者はカナヅチなのですが、凧揚げの準備中に川へ誘導され、溺れてしまいました。
すぐに周囲の泳げる人が救助に向かっていますし、救急車も呼ばれました。
おそらく助かったと思われますが、被害者の顛末は描かれておらず、厳密には生死不明です。
周囲の人がどれだけ泳げるかにもよりますが…
まあ複数人で救助に向かっていますし、泳げる人でも流されてしまうほどの水流でもなさそうですから、良しとしておきましょう。
溺水の救助処置ですが、欲を言えば大きめのペットボトルやクーラーボックスなどの浮力の出る物を投げ入れたり、ロープや棒につかまらせたりできるとなお良かったですね。
今回はあまりコナンの出る幕はなさそうなので、採点除外としましょうか。
(39/43)コナンと平次の鵺伝説
続いては90巻「コナンと平次の鵺(ぬえ)伝説」です。
毒針を刺したことによる毒殺です。
この二人が組むと推理に重きが置かれすぎて救命が完全におろそかになってますね…
ところで、どういうトリックを使えば密室にいる人に毒針を刺すことができるんですか?
まずはチューブを取りつけたコルク栓を、炭酸水入りペットボトルに装着します。
ふむ。
これを振ると、炭酸ガスの力で狙った場所まで水を飛ばせます。
これ横溝警部をずぶ濡れにする必要あります?
この吹き出し口に都合の良い二股の毒針を装着し、対象者に向けて発射すれば完全犯罪成立です。
曲芸か何かかな?
これまた再現性のすさまじく低い殺人トリックですね。
こんなふうに人を即死させられる指先サイズの毒針など、ドラクエ以外で見たことありません。
とりあえずコナンと平次の救命処置に関しては0点です。
(0点:救命処置を取れるにも関わらず全く取らなかった症例。見殺しも同然)
(40/43)代役・京極真
続いては96巻「代役・京極真」です。
ビルの4階からの転落死です。
基本的には、4階からの転落というだけなら救命の可能性はそれなりにあるんですが…
…ただ、意識がない人ならともかく、
意識のある人に関しては転落は足か腰から落ちるのが普通なんですよ。
コナン世界ではやたらと頭から落ちてますが、コナン住民はなぜ揃いも揃って頭から落ちるんでしょうか…?
コナン世界の住民たる者、頭から落ちなければ名折れなのでしょう。
せっかくトリック用意された以上は確実に死なねばならない世界なわけですか。
4階からの転落というだけならまだしも、さすがに頭から落ちてしまうと救命率は落ちざるを得ません。
相変わらず救命処置は全くできていませんが、救命率を勘案して採点は少し甘めに20点とします。
(20点:救命処置は不適切だが、救命率が低い等、わずかながら情状酌量の余地がある症例)
ちなみにこのエピソード「代役・京極誠」は珍しく1事件で2人が目の前で死亡しており、
この転落死の直後、青酸カリによる毒殺がありますがいつもの(略)なのでそちらは0点として扱っています。
(41~43/43)「傀儡の悪魔」の呪い
長かった考察もこれで最後です。106巻 【「傀儡の悪魔」の呪い】です。
ここにきて1事件で3人が目の前で死亡するという怒涛の畳みかけが行われます。
………
いくらなんでもそんなに死にます?
コナンと平次が手を組んだ時の連続殺人発生率は尋常ではないので…
あと目の前で事情聴取中の参考人が2人死んだにも関わらず平然と暗号表を自称探偵の一般人に見せつける大滝警部は人間としての一線を見つめ直した方が良いと思います。
ちなみに大岩先生、ネットで話題になってた平次と和葉が付き合い始めたエピソードはこの事件ですよ。
目の前で3人が死んだ直後に付き合い出したんですか???
さらに言いますと、これは平次や和葉をモデルにした人物が登場する演劇の関係者で起きた事件でして…
ほう?
和葉役の女優が死亡し、平次役の俳優が犯人だったということが発覚した直後でもあります。
私が同じ状況なら、告白どころかしばらくは食事もまともに喉を通らない気がしますね…
一見、甘酸っぱい青春のようですが、自分役の舞台俳優が殺人事件を起こした直後に付き合い始めるのは控えめに言って人として大事な何かを失ってると思います。
今回の事件の被害者ですが、一人目は「浪速芸術劇場」(ほぼ外観は梅田芸術劇場そのまま)の屋上からの転落死です。ちなみに梅田芸術劇場は7階建てですね。
現実の梅田芸術劇場に屋上はありませんが、7階の屋上からの転落死となると救命率は少々望み薄ですね。
とはいえ、これまでに紹介してきた事件現場と違って浪速演芸劇場は公共施設なので、AEDが設置されている可能性は高いです。
(日本において法改正によりAEDが普及したのは2004年7月から。コナンの連載時期で言うと47巻頃から)
救命が難しいとはいえ、せめてAEDの装着くらいはしてほしかったところです。
次いで、二人目は4階からの転落死ですが、トリックにより目の前から落ちたように見せかけたものです。実際には受傷から少なくとも10分以上は経っていると思われます。
この一人目・二人目の採点は…おまけして20点といったところでしょうか。
ただし、三人目は3階からの転落死(目の前に警官も居た)です。
「また殺られてしもた!!」で済ませちゃダメです。
三人目に関しては確実に0点ですね。
まとめ
全症例の分析
というわけで、以上が本記事執筆時点(2024年11月)における最新刊・106巻までの「目の前で死亡した症例」をまとめた全43症例です。
それでは、ここから全43症例の分析にまいりましょう!
ここまでの異様に長かった検討がついにまとめられるわけですね!
まずは、点数ごとの症例数をグラフ化したものがこちらです。
「コナンの救命が適切かどうか」の評価として、平均点は22.3点となりました。
また、評価対象となる事件の過半数が0点(見殺しも同然)という結果でした。
ひっくい!!!!
採点した私が言うのもあれですが、半分以上が見殺しだとは…
次に、大岩先生もご懸念されていた青酸カリの事件だけを抽出してみます。
嫌な予感しかしない。
0点が10例、20点が1例という結果でした。
もちろん全員死亡しています。
20点をつけた唯一の例も交通アクセスの悪さが理由だったので、結論としてコナン世界では青酸中毒死に対し一切の温情が存在しません。
現代でもメッキ工場とか火災現場で青酸ガスの吸入事故がまれにあるんですけど、コナン世界で金属工業に従事するの怖すぎますね…
さらにいきましょう。
平次が絡む事件ではコナンとの共闘にスポットが当たるせいで全く救命処置が行われない傾向があることはお気づきでしたよね?
正直そこはだいぶ早い段階で察しておりました。
ただ、この傾向は平次に限った話ではなく、
準レギュラー的な扱いの探偵や捜査官などが出た時も皆だいたい救命処置を行わないポンコツになるんですよ。
なるほど?
そこで、目の前で3回以上、殺人事件に遭遇している準レギュラーキャラの事件を抽出してみます。
意外にも、最も救命処置的にまともだったのが0点が3回・20点が3回・採点除外が2回だった服部平次です。
平均点は10点でした。
平次よりさらに救命処置がおろそかになってる人が居るんですね…
次にひどかったのが0点が2回・20点が1回だった世良真純です。
平均点は6.7点でした。
世良が立ち会った「代役・京極真」の青酸中毒死の対応は特にカスでして、
駆け寄った人たちをわざわざ押しのけて悠長に死因の推定をしております。
むしろ救命処置を妨害してる…!!!
そして最も被害者を見殺しにしたのは0点が2回・採点除外が1回だったジョディ先生です。
平均点は堂々の0点です。
何度も言いますが、この人って巨大犯罪組織を捜査中のFBI捜査官でしたよね???
ジョディ先生を擁護するわけではありませんが、平次や世良だけでなく、安室や白馬探なども含めてコナン・小五郎以外の探偵やFBI捜査官が一緒にいる場でダメージを負うと全員死にます。(和葉などの身内以外)
世紀末が過ぎる…
最後に、逆に被害者が生き残った症例を分析してみましょう。
おお!いいですね。
…と言っても、コナンの目の前で被害が起きて、かつ被害者が生存してる事件って5例しかないんですよ。
すくねえ!!!
・苛性ソーダ入りレモンティーを飲んだ松本先生
・ウミヘビに手の甲を噛まれた戸田貴和子
・血糖降下薬を大量服薬した岳野ユキ
・釣り場で神経毒の針で引っ掻かれた江尻太志
・胸部刺傷で肺動脈損傷を起こした紺野純夏
の5例だけです。
『コナン』の世界で生き残るための3つの条件
この5例を分析することにより、『コナン』の世界で生き残るための条件を3つ導き出せます。
ほう、3つですか。
まずは青酸カリ以外の毒を盛られることです。
青酸カリだと一人の例外もなく全員死亡していますが、上記の生き残り5人のうち4人は青酸カリ以外の毒物でした。
確かに…コナンは青酸カリ以外だと異様に的確な処置を始めますからね。
2つ目の条件は、平次・世良・安室などの準レギュラー探偵やFBIとは絶対に一緒に居ないことです。
こいつらが同じ空間に居るだけで生存率は各段に落ちます。
というか全く救命処置をしてくれません。
この世界の探偵はスタンド使いくらい殺人事件にひかれ合いますからね…
最後に、3つ目の条件はシンプルです!
そんな簡単な条件が!うかがいましょう。
女性だとコナンによる救命率が若干アップします。
先ほど挙げた5人の生存者のうち4人が女性でした。
女尊男卑の権化…!!?
さらに補足しますと、コナンが見惚れる美女だったり、アイドルや若い女性だとコナンの必死度アップです!
というか中高年女性は一人として助かってません!!
男に至っては106巻全巻を通してオッサンが一人助かっただけです!!!
コナンお前…お前…
総括
それでは大岩先生、最後にコナンに対して何かご意見はありますか?
そうですね…まず言いたいこととして、コナン君は証拠隠滅のリスクを気にしすぎです。
コナン君はやたら「動くな!」「触っちゃダメだ!」と周りの人に指示しますが、良い子の皆様はむしろ積極的に心肺蘇生のため動いてください。
コナン君の救命が基本おろそかな理由は「現場保全を優先しすぎ」「見切りが早すぎ」の2点に尽きると思いますので。
言われてみれば動かさないよう指示しまくってますね…
あと「警察と救急車を呼べ」というセリフも頻繁に登場しますが、救急車を呼んだら必要に応じて警察も来てくれます。
もちろん警察を呼んでもいいんですが、迷うくらいならとりあえず救急車を優先ですね。
総括として、これは日常生活でも重要なんですが、
・目の前で誰かが倒れたら人を集めて救急車を呼ぶ
・AEDを装着して、心臓が止まってる可能性があれば心臓マッサージする
これだけでもかなりの救命率アップが見込めます。
「心臓止まってるかな?」「息してるかな?」といった確認を適切に行うのは難しいので、
まずは何をおいても救急車を呼んでAEDを付けましょう。話はそれからです。
蘇生のゴールデンタイム(すぐに処置をすれば生還できる可能性が高い)は4分間と短いですから、一般の方であっても上記の処置だけは覚えておきたいところですね。
なるほど、ありがとうございます!!!
やっきー先生からも何か、総括はありますか?
私からの総括ですか…?
哀ちゃんかわいい、じゃダメですか?
ダメです。
……
……
探偵甲子園に出てきた南の高校生探偵・越水七槻もいいですよね!
実は20歳なのに変装のためにセーラー服を着るとことか!!!
先生のマニアックな趣味は聞いておりませんが。
なら私はどのキャラを愛でればいいんですか!!!
ご自由にピ〇シブで探してきてください。
というわけで、今回の検証の結論をまとめてみましょう。
・コナンは被害者の半数以上を見殺しにしている
・積極的に助けるのはだいたい若い女性(+オッサンが1人)
・現実で「動くな」は禁物、むしろ積極的な救命を!
いかがでしたでしょうか。
救急医の先生に全面的にご協力をお願いするという当ブログ初の試みでしたが、
実に有意義な検証ができたと思います。
最後になりますが、今回の検証に多大なご協力を頂いた大岩祐介先生が院長を務めるリベ大総合クリニックをよろしくお願いします。
つまり何が言いたいかというと、哀ちゃんは可愛すぎるということです。
ここまでお読み頂き、誠にありがとうございました。
以下、関連記事です。
『コナン』において青酸カリが使われた全事件のまとめです。
『名探偵コナン』でおなじみの毒物・青酸カリについて徹底解説する
コナンが適切に救命した数少ない症例です。
『DEATH NOTE』でも似た考察をしたことがありました。
デスノートに名前を書かれた時の対処法について本気で考えてみた
本記事以上に検証に凄まじい手間を要した『ふたりエッチ』の考察記事はこちらです。
長年の疑問に終止符!『ふたりエッチ』優良さんは不妊症なのか?
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