こんにちは!
産婦人科医やっきーです!
突然ですが男性読者の皆様に質問です。
克・亜樹先生の『ふたりエッチ』はお好きですか?
大好きだという声が聞こえてきたので話を進めます。
女性読者の皆様のために解説しますと、『ふたりエッチ』とは青年誌の「ヤングアニマル」で1997年から連載を開始した作品です。
ただのエロ漫画と思うことなかれ、この作品は「セックス」に対し真剣に考え向き合う、純愛ラブストーリーなのです。
本題に入る前に、簡単にあらすじを解説しましょう。
主人公は小野田真。
真は心優しく人当たりの良い性格で、幼さがあるものの端正な顔立ちをしています。
仕事のできるエリートサラリーマンであり、それゆえに女性にもモテるのですが、
本人にその自覚は無く、奥手のため恋愛面でも全くの初心者…
というより、率直に言えば結婚するまで童貞でした。
そんな真は25歳でお見合いをし、ある女性と結婚しました。
彼女こそが小野田優良(旧姓:河田)。本作のヒロインです。
優良さんは桁外れの美人、かつ抜群のプロポーションを誇り、性格も穏やかで誰もがうらやむ理想的な女性として描かれています。
しかし彼女もまた、女子高育ちで恋愛に対しては非常に奥手で、25歳で真と結婚するまで処女でした。
『ふたりエッチ』は、結婚後に初体験を迎えた童貞と処女の夫婦、真と優良さんが性生活や夫婦の悩みを解決していくという少し大人向けのラブストーリーなのです。
題材が性生活なのでどうしてもエロ漫画と捉えられがちですが、男女の心理や恋愛観、セックスに関するテクニックやデータなどがふんだんに盛り込まれており、非常に勉強にもなる作品です。
この手の作品にありがちな不倫を真と優良さんは作中で一度もしないため安心して読めますし、登場人物たちの人柄も全体的に温かいためヒューマンドラマとしても良質です。
まさしく「名作」と呼ぶに相応しい作品と言えるでしょう。
連載期間25年、累計2700万部超は伊達ではありません。
そして私は『ふたりエッチ』を読んでいて、常々疑問に思っていたことがあります。
ぜんぜん優良さんが妊娠しない。
というのも、この『ふたりエッチ』は真と優良さんがセックスしまくる話と言っても過言ではないほどに、毎話毎話とことんセックスしまくるのです。
もちろん、結婚後1~2か月で妊娠してしまったら作品の根幹が揺らいでしまうという事情は理解できます。
しかしそれにしても、いつまで経っても優良さんが妊娠する気配はありません。
これはもう産婦人科医としては気になって仕方がありません。
不妊治療、すなわち「生殖医療」は産婦人科の専門分野のひとつですからね。
そこで今日は、日本中の全男性が気になっていた作中最大の謎、
『ふたりエッチ』優良さんは不妊症なのか?を考察していこうと思います!
データ集め
このブログではお馴染みですが、正確な考察には完璧なデータ集めが欠かせません。
『鋼の錬金術師』イズミ師匠の時にも全巻+関連書籍を何周もして描写を確認しました。
それに「不妊症」とは、「妊娠を望む健康な男女が避妊をしないで性交をしているにもかかわらず、1年間妊娠しないもの」とされています。(日本生殖医学会より)
真と優良さんの妊活期間がどのくらいなのか、妊娠に関わる描写はあるのか、できれば漫画に出てきた性交回数までしっかり確認したいところですね。
よーし、それでは『ふたりエッチ』本編の確認を…
…
…既刊89巻を全部確認するの?
…………
ここでやっきーの脳裏に悪魔がよぎりました。
やめとけやめとけ。Wikipediaに書いてある「○○歳で結婚」「○○歳で妊娠」を引用して、
ちゃんと読んだ風な記事を書いちまえ。
お前は私の心に住む悪魔!
いけません!イズミ師匠の記事がバズったのも手間と時間を惜しまなかったからでしょう!
天使さん!
お前、イズミ師匠の時は「このへんで師匠が出てきたな」って思いながら飛ばし飛ばし読めてたろ?
それはまあ確かに。イシュヴァールとかブリッグズとか、
師匠の絡まないエピソードも多いからね。
『ふたりエッチ』は89巻にわたってずーーーーーっとセックスしっぱなしだぞ?
その回数を全部数えるのか?
確かにその通りだ…!
この作業のダルさ、イズミ師匠の比じゃない!!!
悪魔の言うことに耳を傾けてはダメよ!
このブログには1億人を超える読者(やっきー調べ)がいるでしょう!
天使さん!確かにそうです…!
私には10億人を超える読者(想像)がいる…!
そうです!1兆人の読者(妄想)の期待を裏切らないために!
わかりました!不妊症に悩む方々のためにも!!
漫画好きの皆様のためにも!!
さあ、読むのです!既刊89巻を!
16000ページ以上を!
集計のルール
はい、そんなわけで地獄の作業を始めます。
今回の調査を始める前に、集計のルールを設けておきましょう。
・真の射精回数を全て計測する
・「コンドームを付けている」「付けていない」「不明」「腟外射精」
の4項目に分けて集計する
・カウントするのは確実に射精したと見なされる描写のみ
・その他、妊娠に関係する描写も全てピックアップする
補足としては、ナレーションで「○○回した」と名言されているものは射精回数○○回としてカウントしますが、
真たちが「もう1回しよ♡」と言っているだけでその描写が無いものに関してはノーカウントとします。
本編の全描写を確認
1巻~5巻
それでは気合を入れて本編を読んでいきましょう。
1話は真と優良さんの結婚まで、2話はベッドインまでなので、
ふたりの初体験は3話で描かれます。
コンドームの有無は不明。
これが記念すべき二人の初体験にしてやっきーの地獄の始まりです。
4話では真の兄、明が初登場。
明は「性の伝道師」を自称するほどの上級者であり、この後も何かと真たちにテクニックを伝授します。
その夜、明から聞いた前戯のテクニックを真が実践。
そしていざ射精!というタイミングで優良さんが引き離し、この回は腟外射精1回となります。
優良さんはセックス初心者であることを気にしているため、
「もっともっと勉強しなくちゃ」「今はふたりだけでいたい」と話します。
これは重要な発言です。
これ以降、しばらくはコンドームを付けてセックスをしているということになります。
避妊をしている期間はもちろん不妊症とは言えません。貴重なデータですね。
この宣言通り、ここからはコンドームを付けている(または付けていると思われる)セックスが続きます。
例外が2巻15話です。
慣れないラブホテルで励む2人ですが、優良さんは「安全日だからそのままでいいよ」と話します。
医学的には安全日なんてあって無いようなものですが(安全日でも普通に受精します)、
これが『ふたりエッチ』において初めて明確に描写された腟内射精となります。
そして2巻18話では、真の両親から初めて赤ちゃんの話題が出ます。
しかし2人はまだまだ子供を作る気はありません。
4巻40話では、重要キャラクターの杏子が登場します。
杏子は真や明の従姉妹で、現役の産婦人科医(30歳)です。
抜群の美貌とプロポーションを誇り、妊娠・出産の知識は豊富なものの、男性経験が無いことが悩みです。
杏子は真の母から「子供を作るようけしかけてほしい」と依頼されて真たちのもとを訪ねましたが、
優良さんは「真をもっと好きになっている」「まだ2人でいたい」と話しました。
なにこの奥さん…真がうらやましい…
5巻44話では、真とのセックスで最近痛みが出てきたという優良さんが、
杏子の病院で診察を受けました。
産婦人科医としては、ここで何の診察をしているのかが気になります。
まず、腟炎を疑っているのであれば帯下(おりもの)のチェックはしているでしょうね。
帯下の色や匂い、内診の痛みなどである程度の当たりはつきますし、もしかするとその場で顕微鏡を使った菌のチェック等もしているかもしれません。
ともかく、それらに関しては異常は無いようです。
性感染症の種類によっては妊娠しにくくなる可能性もあるので、これが除外できたのは嬉しいですね。
さらに診察室の風景を見たところ、超音波診断器もありそうです。
従兄弟の奥さんが受診したとあれば、おそらく超音波で子宮や卵巣に異常がないか、簡単なチェックくらいはしているはずです。
とすると、子宮筋腫や子宮奇形、内膜症性嚢胞といった、妊娠に影響のある疾患(かつ超音波で診断できる疾患)は除外して良さそうですね。
この回から得られた情報は非常に多いですね。
5巻までの振り返り
ということで、これで5巻までのチェックが終了しました。
真の合計射精回数(腟外射精除く)は25回という結果でした。
そして重要な事実がひとつ。
この作業、想像の100倍しんどいです。
まさか(漫画とはいえ)他人のセックスを見続けるという行為がここまで疲れる作業だとは思っていませんでした。
セックスの回数を数えるだけならまだしも、ゴムを付けてるか付けてないかを判断する作業まで付け加えたことに関しては心の底から後悔しています。
しかも、ちょくちょく射精したかしてないかが曖昧な描写が入ってくるので、適当に読んでいたら集計を間違えかねないのです。
しかし私は全国1兆人の読者様達と、心の中の天使さんに誓いましたので、
ここで引き下がるわけにはいきません。
優良さんが妊娠する日まで、私は全てのセックスを見届けます。
頑張れ優良さん!
ただし体力と集中力の問題で、
1日で確認できるのはせいぜい5巻程度です。
6巻~10巻
では6巻です、はりきって読んでいきましょう!
…と言っても6巻はこれといって目新しい描写は無し。
しかし、7巻では旅先の露天風呂や玄関でいたすなど、「コンドームつけてないな」と思われるセックスが増え始めます。
これは良い変化ですね。
8巻74話では、優良さんの母、河田千春さんが初登場。
「子供はまだなの?」と、久々に子供の話題に触れました。
しかし真と優良さんは「もう少し2人でいたい」と話します。
まだ子供を作る気はないようですね。
ところで、千春さんは「あなたも…若くないんだからね」と言いますが優良さんまだ25~26歳ですよ。
1999年当時の平均初産年齢は約28歳なので、そんな言うほどか?と思ってしまいますね。
早く孫の顔を見たい気持ちは分からんでもないのですが。
そして8巻79話では、なんと優良さんの妊娠疑惑がありました。
うっかり腟内射精をしてしまったあと、10日ほど生理が遅れたため、妊娠したかもしれないと考えたようです。
しかし結局生理が遅れただけで、妊娠はしていませんでした。
続く80話では、「結婚して一年」と明言されました。
時期に関する具体的な描写は大事なデータですので、これ以降もしっかり確認していきましょう。
8巻は重要な情報が目白押しで、目の離せない展開が続きます。
かと思いきや、9巻と10巻は真と優良さんがただセックスをしまくっているだけでした。
仲睦まじいのはよろしいのですが、考察すべき描写は特にありません。
そんなわけで、10巻までの真の射精回数は55回。
とはいえ、まだほとんどが避妊した状態ですね。
11巻~15巻
このあたりから、産婦人科的にはほとんど進展が無い回が続きます。
12巻118話で友人の赤ちゃん(8か月)を預かったことをきっかけに、
120話で優良さんが「赤ちゃん欲しくなっちゃった」と発言します。
この120話では、3日間にわたって6回もの腟内射精が描写されていますが、
結局妊娠することはなく、優良さんの「赤ちゃん欲しい願望」はおさまってしまいました。
14巻138話では、「3~4日に一回はしてる」「次エッチしたら100回目」という具体的なデータが登場しました。
これはこれで貴重なデータですが、
基本的に避妊しているので不妊症の診断には役立ちません。
ちなみに私が集計した138話までの射精回数は82回なので、誤差は意外に少ないですね。
作中で描写されていないセックスはそれほど多くないようです。
そしてそれ以降も、これといった新展開は無く15巻まで終わってしまいました。
15巻149話までの射精回数は90回。
…しかし妊娠に関係する情報は殆どありませんでした。
私は…
毎日仕事をして…
寝る前にブログ記事を書き…
ひと段落したら『ふたりエッチ』を読む…
眠い目をこすりながら読む毎日…私は…今回も…
16巻~20巻
そろそろ私の精神がおかしくなってきましたが、検証を続けます。
そして迎えた17巻、ついに優良さんの妊娠に関する進展がありました!!!
優良さんの実家でワンちゃんが出産したことをきっかけに、
優良さんの「赤ちゃん欲しい願望」が再燃しました!!
「おれたちも子作りはじめよっか」が来ました!!!
来ましたよ皆さん!!!
生産性のないセックスを見続ける苦行がついに終わるのか…!
その言葉通り、これ以降はコンドームをつけていない描写や、子作りに励んでいる発言が明らかに増え始めます。
それを体現するように、コンドームを付けているシーンは1回たりとも描写されなくなりました。
ついに真と優良さんの妊活がスタートします。
(他の描写とあわせて考えると、結婚1年以上2年未満の時期と思われます)
ついに意味のある検証が始まる…!!!
20巻204話までの射精回数は131回。
1~15巻で90回(1巻あたり6回)であるのに対し、16~20巻で41回(1巻あたり8.2回)というわけです。
これは明らかにペースが上がってきましたね。
私の作業量も増えて血を吐きそうですが、そんなのは検証に比べれば些細なことです。
21巻~25巻・ゆらさん日記1巻~2巻
相変わらず真と優良さんは子作りに励んでおります。
が、22巻まではこれといった進展なし。
ここで、『ふたりエッチ for Ladies ゆらさん日記』について解説しましょう。
この作品は『ふたりエッチ』をさらに女性向けにした番外編であり、
優良さん視点での性生活に関する漫画となっています。
どことなくセックスの描写も女性向けアダルトビデオ風になっていますし、
作中の悩みも優良さんの視点によるものが多いですね。
これはこれでなんか良いですね。
私の中の安田くんが暴れ出す前に、読み進めましょう。
私の中の樫村さんもご満悦です。
正直なところ、『ふたりエッチ』はだいたい一通り読んでいましたが、
『ゆらさん日記』は今回初めて読んだので内容をさっぱり知りませんでした。
しかし私個人としてはこっちの方が好きかもしれません。
ゆらさん日記…いいじゃないか…!
ちなみに前書き・後書きによると、『ゆらさん日記』は本編の22巻と23巻の間くらいのエピソードだそうです。
本編以上に「夫婦関係」にスポットを当てていますので、女性はもちろん男性にもお勧めできますね。
こちらは朝の出勤時は誕生日を忘れていたような素振りを見せつつ、夕食時にサプライズでプレゼントを渡す真。
と、それに胸キュンする優良さん。
なるほど…そりゃモテるわけだ…
ともかく、ゆらさん日記を堪能したところで本編の方に戻りましょう。
タイミング法
そして24巻227話!
最近…毎月 排卵日にあわせて「子作りデー」をつくっています☆
とのこと。
優良さんは以前、杏子から基礎体温を測り排卵日を推定する方法について聞いていますので、
基礎体温や月経周期から排卵日を推定しているのでしょう。
「排卵日を意識している」という情報は、
何気ないですが非常に重要ですね。
このように、正確に排卵日を推定しつつ適切な時期に性交渉を行う治療を「タイミング法」と呼びます。
タイミング法は不妊治療のひとつ目のステップのような立ち位置です。
基礎体温等から自己流でやってもそれなりの効果はありますが、
長期間不妊に悩んでいる場合は医師の指導のもと行うのがお勧めです。
医師が指導して行う場合には、より正確に排卵日を推定するため、
超音波検査による卵胞の確認や、血中・尿中のホルモン測定を行うことも多いですね。
これで、優良さんたちが少なくとも自己流のタイミング法(杏子のアドバイス付き、受診はたぶん無し)を行っていることは分かりました。
続く25巻では特に新しい情報なし。
25巻までの合計射精回数は169回。
この数字を見て、「私は169回も漫画のキャラの射精回数を数えたんだな」と急に虚しさが襲ってきたのでカーズ様のごとく考えるのをやめました。
26巻~30巻
だんだん余計なことばかり考えるようになってきましたので、集中して読み進めましょう。
27巻258話では、「結婚して2年も経つのに」と時期に関する言及がありました。
29巻268話では、優良さんの母・千春さんから再び「赤ちゃん…まだなのかしら?」とつつかれます。
真は「バンバン膣出しやってるんですけど」と返します。もうちょい言い方ないんか。
それにしても千春さん、妊活を頑張っている夫婦に対してわざわざ実家に呼びつけてこの言動はちょっとどうなのかと思わなくもありません。
「不妊治療のお金が不安なら援助するわよ」とかならまだしも。
30巻287話までの射精回数は208回。
すなわち、ゆらさん日記を含めた1巻あたりの平均回数は6.5回です。
26~30巻に限れば39回(1巻あたり7.8回)なので、確かに平均以上にしているようです。
しかし、まだまだ妊娠の気配はありません。
31巻~35巻
31巻297話では、優良さんは排卵日でした。
そこで、早漏だが回復も早いことに定評のある真が4時間で7回という記録を打ち立てます。
真のすごさに目がいきがちですが、これでも妊娠しないんですね…
そして32巻302話、ついに誰もが気になっていた領域に踏み込みます。
真が杏子に不妊治療の相談をしに行きました。
ついにその可能性を考え始めたか、真…!
悩む真に、杏子は体外受精(顕微授精)の説明をしますが、
「もうちょっとがんばってみようかな」と様子を見ることにしました。
一見普通のやりとりですが、個人的にこの対応はいただけません。
不妊治療
杏子が提案した顕微授精は確かに妊娠の確率が高い、優れた不妊治療ですが、基本的には初手でいきなり行うべき治療ではありません。
すごく大ざっぱに言うと、不妊治療は以下のようなステップで行われます。
(もちろん状況に応じて例外はあります)
①原因検索:子宮、卵管、排卵、精子などに異常がないかを調べる
②タイミング法:ホルモン値等から正確な排卵日を推定する
③排卵誘発:排卵誘発剤を使い、たくさん排卵させて妊娠率を上げる
④人工授精:精子を子宮の中に注入する
===超えられない壁(妊娠率も値段も一気に高くなる)===
⑤体外受精・胚移植:卵子を取り出し、培養液で受精させて子宮に戻す
⑥顕微授精:極細の注射器で卵子に精子を1個注入し、授精させて子宮に戻す
顕微授精は他のどの治療でも上手くいかない場合や、精子の運動性などに問題があると分かっている場合に行うべき、最後の砦のような治療ですね。
料金も後ろの方に行くごとに上がっていきます。
つまり杏子はこれといった検査もしていない真に対し、いきなり最高額に近い治療を提案したわけであり、これでは真が乗り気になれないのも仕方ないところでしょう。
私であれば、避妊をやめてからそろそろ一年というのは不妊症と言えるかどうかギリギリのラインですから、積極的に治療を勧めるまではいきませんが、
簡単な検査やタイミング法の提案くらいはすると思います。
ということで結局、不妊治療について触れたのはわずか2ページでした。
ここまでで真たちのセックスを6000ページ以上読んできた私にとっては既に苦痛以外の何物でもないので、もっと核心に迫る進展が欲しかったところですね。
さて、35巻335話までの射精回数は249回。
30巻までの平均回数が1巻あたり6.5回、31~35巻の平均回数は1巻あたり8.2回となるので、
これは確かにどんどんペースを上げていますね。早く妊娠してくれ
36巻~40巻
36巻343話では、3年目の結婚記念日であることが明記されました。
妊活開始が結婚1年以上2年未満の時期でしたから、この描写をもって不妊期間は1年以上であることが確定しました。
最初にも書きましたが、「不妊症」の定義は「妊娠を望む健康な男女が避妊をしないで性交をしているにもかかわらず、1年間妊娠しないもの」ですので、真と優良さん夫婦は医学的に不妊症であるということになります。
これで医学考証が一歩前進しました。
真か優良さんのどちらか、あるいは両方に何らかの原因がある可能性が高いと言えます。
38巻359話はお正月の話。
今年の抱負について話しているとき、「今年こそ赤ちゃんかな♡」と優良さんが話しました。
かわいいかよ。
そして40巻までこれといって何もありませんでした。
40巻384話までの射精回数は288回。
36巻~40巻の間は1巻あたり7.8回の射精ということになるので、おおよそペースは保てていますね。
41巻~45巻
43巻410話、さらに話が動きました。
優良さんの不妊の悩みが本格化してきました。
その結果、いつもの杏子の病院へ相談に行きます。
排卵を規則的にするため、基礎的な生活指導をするのは良いのですが……
そろそろ何か検査したら??
優良さんが妊娠しないまま既に1年以上2年未満が経過しています。
そういう人がわざわざ産婦人科まで来たのですから、
できる範囲で不妊の検査をする、タイミング法を指導する、不妊治療専門医へ紹介するなど、何らかのアクションを取っても良い頃合いだと思います。
しかし、杏子の指導の内容はググれば出てくる程度の知識のみ。
だんだん私の中で杏子への不信感が高まってまいりました。
というわけで、45巻434話までの射精回数は323回。
41巻~45巻では1巻あたり7.0回です。
31~35巻は1巻あたり8.2回、36巻~40巻では1巻あたり7.8回なので、じわじわ減ってきてます。
サブキャラクターが増えたことで描写回数が減っているのもありますが、この傾向はよろしくありませんね。
ちなみに私の精神状況はというと、
こんなにも『ふたりエッチ』を読みたくないという状態に陥ったのは人生で初めてだという段階に達しています。
46巻~55巻
そろそろ話の進展がゆっくりすぎることに気付いたので、ここからは10巻単位で読んでいきましょう。
46巻440話、4回目の結婚記念日だそうです。
つまり妊活を始めて2年以上が経過したことが明らかとなりました。
(妊活を始めたのは結婚1年以上2年未満の時期)
おめでとう。そして早く私を解放してくれ。
48巻462話、またも不妊に悩む真は、杏子の紹介で看護師の小平楓に相談します。
なんか物凄く見覚えのあるビジュアルをしていますね。君もしかして情報統合思念体と繋がってたりしない?
そう思ってこの話の掲載年を見てみると2010年。
たぶんちょうど克・亜樹先生が憂鬱だった頃なのでしょう。
そしてこの看護師、なぜか妊娠に関する統計値をやたらと暗記しているのですが、
結局真は話を聞いただけで不妊治療に関する具体的な進展はありませんでした。
頼むから…何か検査か治療を始めてくれ…
そして49巻473話、ついに!!!
2人で不妊相談に行くことになりました!!!!!
不妊は男性側に原因があるか、女性側に原因があるかを探るところが最初の一歩です。
正直なところ、ここまでの片方だけが杏子のところに相談に行ってたのはいまいち意味がない行為だったので、2人で産婦人科に行ったのは素晴らしい決断ですね。
ここまで長かった…長かったよ……
そこで杏子が行った指導とは!!!!!!
要約:「排卵日にセックスしてみよう」
それもう227話でやったよ!
俺は見てたよ!!!!!
なんなの?杏子は産婦人科医のくせにググったら出てくる程度の不妊治療しか知らないの?
もういい優良さん、そいつに頼るのはやめろ!!!
俺の病院に来い!!!!
失礼しました、取り乱しました。
結局杏子はそれ以上のアドバイスも検査もしませんでした。
これが、私が杏子を嫌いになった瞬間です。
50巻483話、真と優良さんは不妊セミナーに参加しました。
いいぞ、杏子から離れろ!正しい知識を身に付けるのだ!!!
しかし多額の費用がかかる不妊治療に二の足を踏む優良さんは、
いつもの杏子のところへ。
あろうことか「大丈夫よ!優良ちゃんはまだ若いんだから☆」と不妊症の原因を調べようともせず、
高額の治療に悩む優良さんに比較的安価な検査や治療の提案すらしませんでした。
確かに体外受精などは数十万円かかりますが、タイミング法や人工授精なら数千円~数万円で可能です。
もはやこの杏子からは自分の知識を広げる気のないダメ医者の匂いしかしません。
うちの病院に来てくれたらもっと打つ手は色々あるのですが、優良さんの妊娠はまだ遠そうです。
私の精神力も限界を超えています。
52巻502話では、長門小平さんが妊活中の女性たちに謎の指導を行います。
もちろんこんなストレッチには妊娠に対し何の医学的根拠もありません。
ていうか妊娠すらしてない人の乳腺をストレッチして何か良いことあるの???
腰痛や肩こりは取れるかもしれませんね。
それより早く不妊治療専門医のもとに行きなさい。
53巻512話。
ご近所さんの果穂さんとるいちゃんに先を越されました。
果穂さんとるいちゃんは義理の親子で、るいちゃんは現役女子高生(既婚)で担任教師と結婚しています。
皆様の理解が追い付いていないと思うのでもう一度言いますが、
るいちゃんは現役女子高生(既婚)で担任教師と結婚しています。
どういう事情か気になる方は『ふたりエッチ』本編をどうぞ!
そして私の集計が間違ってないか全巻チェックしてみて下さいね!
そんなわけで、46巻~55巻の射精回数は77回、1巻からの累計はジャスト400回!
1巻あたり7.7回なので、しっかりペースは保てているようですね!
私はと言いますと、『ふたりエッチ』を読むのが苦痛を通り越してふたりエッチーズハイになってきました。
恐らく、この異常なストレスを緩和させるため脳内麻薬が出ているのだと思います。
大丈夫か私。
56巻~65巻
57巻549話では、5回目の結婚記念日が描かれます。結婚6年目に突入しました。
つまり妊活を始めて3年以上経過したようです。
どうせ2人がイチャイチャするだけで終わるかと思いながら読んでいましたが、
案の定イチャイチャして終わりました。
58巻555話では、優良さんに吐き気が!
まさかつわりか!?
診断の結果、インフルエンザからくる吐き気でした。
さすがにこの時は「妊娠しているはずだ」と思っていたため、優良さんも落ち込みます。
妊活中、月経が遅れて「妊娠かな」と思いきや妊娠していなかったり、流産してしまったりするのは精神的にもつらいものです。
ごめん優良さん…私が間違っていたよ…
優良さんの妊娠を最後まで見届けるよ!!!
はい、覚悟完了しました。
さあ、かかってきなさい。あと100巻でも200巻でも読みましょう。
というわけで中間報告。
46巻~55巻の射精回数は77回で、
56巻~65巻の射精回数は42回でした。
ごりごりにペース落ちとるがな!!!!!!
66巻~75巻
66巻634話では庄子さんの勧めで妊活ヨガを導入。
そんな民間療法より前にすべき検査や治療があると思うのですが、もう好きなようにしてくれ。
70巻683話では、ついに。
ついに。
まともな不妊検査をすることになりました。
長かった…!長かったよ…!
やっと原因が分かるよ…!
どうやら杏子の勧めのようです。
やっと勧めてくれたのは良いのですが遅いよ!
この人たち3年以上妊娠してないんだよ!バリバリの不妊症だよ!
超音波検査、ホルモン検査、精液検査などをしている模様ですね。
うむ、まともな検査をしています。
杏子の当たり障りのない指導や小平さんの無意味な指導を受けていた頃を思うと大進歩です。
検査の結果、
分かる範囲で優良さんに異常はないが、真の精子の運動率が少し良くないとのこと。
WHOでは精子運動率42%以上が正常値と定められています。
これを下回る場合は「精子無力症」と呼び、人工授精や体外受精が考慮されます。
しかし、この描写では具体的な数字は示されておらず、精子無力症なのかどうかは不明です。
ちなみに、この医者の精子運動率に関する表現は正確ではありません。
精子運動率は、一般的に「運動精子数/全精子数」の%表記です。
つまり、「運動率が低い」とは「動いている精子が少ない」という意味であって、
この医者が言うように「移動する力が弱い」という意味ではありません。
2人はその後、性交後検査(ヒューナーテスト)の案内など受け、
次回受診予約をして終了となりました。
さて、その後の進展はあるのでしょうか。
71巻692話。
もちろんその後の不妊治療の進展が描かれることはなく、優良さんは31歳になりました。
妊娠を考える上で遅すぎるとまではいきませんが、
確かに急いだ方が良い時期ではありますね。
72巻703話では、杏子のすすめで子宮卵管造影検査を受けることになりました。
子宮の中に造影剤を注入し、子宮や卵管の形に異常がないか、卵管が塞がったりしていないか調べる検査ですね。
子宮卵管造影も、不妊症の原因を調べるための大切な検査ですね。
私としては真に精子無力症の疑いがある以上、人工授精(精子を子宮内に注入する治療)を選択するのも有りかと思いますが、このあたりは医師ごとに好みが分かれるところかもしれません。
ともかく、優良さんが検査を受けた結果、子宮も卵管も問題なかったようです。
子宮卵管造影検査
子宮卵管造影検査では、こんな感じで子宮の中に造影剤(レントゲンに写りやすい検査薬)を入れます。
前述したように、これで子宮や卵管の形態に異常がないかを調べることができますし、
この検査をした後は妊娠率が上がるというデータがあります。
詳しい仕組みは不明ですが、卵管を塞いでいる粘液などの詰まりが取れる、卵管の絨毛運動が改善する等の仮説が立てられていますね。
この検査で使う造影剤には、
水溶性(1日で検査が終わるが写りがやや悪い)と、
油溶性(検査が2日かかるが写りが良い、まれに副作用がある)の2種類があります。
ちなみに油溶性の方が検査後の妊娠率が高いという論文がありますが、どちらも差が無かったとする報告もあり、今のところはっきりした結論は出ていません。
優良さんの検査ではその日のうちに結果が出ているので、水溶性造影剤を使っているようですね。
とにかく、子宮や卵管に異常が無かったようで何よりです。
後日、真は一週間の禁欲後、排卵日にあわせていつものように営みました。
お???
おおお????
うおおお?!??!?
ごふっ(吐血)
い、いや…待て、おちつけ、まだあわてるような時間じゃない
そうだ、まずは深呼吸だ… ヒッヒッフー ヒッヒッフー
気持ちを落ち着けるために素数を数えるんだ…
1、3、5、7、9…
えんだあああああああああああああああああああああああああああああああいやああああああああああああああああああああああああああああああ
失礼しました。嬉しすぎてエンダーイヤーしてしまいました。
妊娠成立までに要した話数は72巻703話でした。
合計483回の射精を見届けた私にとって優良さんの妊娠は、わりと本気で産婦人科専門医試験に合格した時くらい嬉しいです。
そうか…ついに私と優良さんの子供が…
いや俺のじゃないわ。真のだわ。
すみません、私はいま錯乱しています。
私も真と同じ気持ちです。
1巻から検証を始めた頃は、まさか優良さんの妊娠に涙する日が来るとは思いませんでした。
不妊症の原因は?
本編に熱中しすぎてすっかり本題を忘れていましたが、
今回の記事のテーマは「優良さんは不妊症なのか?」でしたね。
途中で解説しましたが、1年以上で不妊症とされる中、3年間妊娠しなかったので「不妊症」の定義に該当します。
では、その不妊症の原因は何なのでしょうか。
まとめると、本編中で2人に行われた検査は以下の通りです。
優良さん…超音波検査、ホルモン検査、子宮卵管造影
真…精子検査
これらの結果、本編で具体的に指摘された異常は「精子無力症の疑い」以外にありません。
(精子運動率などのデータが無いので、本当に精子無力症なのかは不明です)
ということは、優良さんの不妊の原因は真だけのせいだったのかと言うと、そうとも限りません。
優良さんが子宮卵管造影をした直後に妊娠が成立したということは、
優良さんの卵管にも何らかの問題があったものの、造影剤が通ることによって卵管の環境が改善され、精子が通りやすくなった可能性も高いと思われるためです。
実際、この受精が行われた時には人工授精や体外受精などを行っていないわけなので、
それらの補助がなくとも真の精子には受精できるだけの能力があったということです。
結論としては、「優良さんの卵管の精子通過性が悪い」「真の精子運動率が低い」の2つの原因が重なったことで、3年以上にわたり妊娠しなかったのではないかと推測します。
ちなみに、真と優良さんの情事の回数をどうしても知りたいという研究熱心な皆様のために、
この結論に至るまでの調査の結果(セックスの回数、ゴムの有無など)を作成しましたのでこちらのPDFからご確認下さい。
まとめ
以上、『ふたりエッチ』優良さんの不妊症の原因に関する考察でした。
不妊治療というのは難しいもので、女性側に原因がある場合、男性側に原因がある場合、両方に原因がある場合で行うべき治療が異なりますし、
検査で分かるタイプの原因、検査で分からないタイプの原因もあるので、結局は不妊治療の専門病院へ相談するのが最善と言えるでしょう。
比較的安価な検査や治療もいくつかありますので、不妊にお悩みの方は専門病院で相談してみましょうね。
~ある日の診療風景~
えーと、今日の初診は…不妊症の患者さんですね。
そうなんです、なかなか妊娠しなくて…
ふむふむ、どのくらいの期間ですか?
妊活を始めて3年になります。
(3年間の不妊期間…ちょうど『ふたりエッチ』と同じか…)
ふたりエッチ…3年…
あ、あばばばばばば
せ、先生?
………
やっきー先生がアナフィラキシーショックに!
今回の記事を書いた代償として『ふたりエッチ』という言葉に重度のアレルギーを発症してしまいましたが、
これからも不妊に悩む患者さんたちの力になれるよう頑張っていきたいと思います。
ここまでお読み頂き、ありがとうございました!
以下、関連記事です。
この記事を不妊治療専門医の先生と一緒に振り返る、まさかの続編記事ができました。
不妊症に関連する、『ハコヅメ』桜に関する考察はこちらです。
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初めまして。通りすがりの内科専攻医です。
この記事の、あまりの熱量に感銘を受けたのでコメントさせていただきました。
先生の漫画への愛、そして産婦人科的な考察の深み、本当に尊敬します・・・!
あまりに面白くて一気に読んでしまいました・・・最後のPDFには、思わず涙を流してしまいました・・・(笑い過ぎで)
世の中には、まだまだ知らない凄い人がたくさんいるのだなぁと、思い知らされた、そんな感覚です。
これからも応援しております!
日常診療に差し支えのない範囲で、無理はなさらず頑張ってください!!!笑
おちばさん、お読み頂きありがとうございます!
論文で目の肥えている医師の方から見て満足頂ける内容になっていましたら、非常に嬉しいです!
診療と並行しながらの執筆は大変ではありますが、まだまだ頑張っていきますので、
引き続きよろしくお願いします!
楽しく読ませていただきました。
射精回数を数えたPDFも見ました笑
本当ーにお疲れ様でした
また新記事がでるのを楽しみにしています
1は素数じゃないです…。
このご指摘はたびたび頂きますが、いちおう私は平均以上には算数・数学が好きな人間です。
1も9も素数でないことは百も承知です。要するにボケているんです。
とはいえ分かりにくいボケであったことは否めないかもしれません。お騒がせして申し訳ありません。
お詫びに、自分が行ったボケを事細かに解説するという羞恥プレイに興じさせて頂きます。
まず、漫画の世界には「素数を数えて気持ちを落ち着けるキャラクター」が居ることをご存知でしょうか。
有名な『ジョジョの奇妙な冒険』第6部のラスボス・プッチ神父です。
彼は窮地に立たされた際、1と自分の数でしか割ることのできない孤独な数字「素数」を数えることによって勇気を貰うという癖があります。
素数はご存知の通り、2、3、5、7、11…と無限に続きます。
最小の素数は2と定義されており、素因数分解において一意性が成り立たなくなるため「1」は素数に含まないのが一般的です。
さて、真と優良さんの受精が成立したシーンですが、私は「素数を数える」として「1、3、5、7、9…」と発言していますね。
そうです、なぜか素数でないはずの1や9を数えているのです。
何故、算数・数学に詳しいはずの私がそんな超初歩的なミスを犯しているのでしょうか。
私はここに至るまで、計72巻にのぼる調査とカウントを行い、心身共に疲弊していました。
そんな中、プッチ神父の真似をして「気持ちを落ち着けるために素数を数える」と言いながら、素数ではない数列…というかただの奇数を並べただけの「1、3、5、7、9…」を数えているわけです。
これはつまり、私も読者の皆様も算数・数学の知識を十分に持っていることを前提としたボケであるとともに、私がいかに動揺していたかを表しているセリフだというわけです。
ご理解頂けましたら幸いです。
初めまして!
xのワクチンの記事から流れついてきました。
楽しく読ませていただき、優良さんが妊娠したところでは自然と涙がこぼれました‥相当な労力が必要だったと思います。読み応え抜群で最高でした!!
そして精子が卵子へ到達する確率も億分の一と考えると、我が子も奇跡の塊、本当に愛の結晶なんだな、と二人エッチの記事を読みながら我が子の手を強く握り締めました‥
心がジーンと温かくなる記事、ありがとうございました!