当サイトにはプロモーションが含まれています。

産婦人科医やっきーが医師国家試験に合格するまでの話



今日はちょっとした日記をお届けしよう。

読者の皆様は「医者になる」ためにどのような過程を経るものなのか、ご存知だろうか。


なんかめっちゃ勉強しないと医者になれないんだよね?

と思われるかもしれない。

申し訳ないが、少し違う。





その想像の100000倍くらい勉強しないと医者にはなれない。

正直、私は医学部に入って「こんなに勉強するとは聞いてなかった」と1億回くらい言ったと思う。



医者になるためにはいくつもの関門をくぐり抜ける必要があるのだが、中でも厄介なのが「医師国家試験」という試験である。

もちろん、医学部に入学したり、医学部内で進級をしたりするのにもかなりの勉強と努力は必要なのだが、

本日は医師国家試験にスポットを当ててお話ししてみたい。

お時間があれば少々、お付き合い下さい。


これを意外と思われるか、当たり前と思われるかは人によるかもしれないが、

医学部を卒業したからといって全員が医師になれるわけではない。

医師になるためには、「医師国家試験」にパスしなければならない。

稀にだが、医学部を卒業しても医師国家試験を通らず医者になれなかった人もいるのだ。



そこそこ死ぬ思いをして医学部に合格し、その医学部の中でも死ぬほど勉強してようやく卒業にこぎつけられるわけで、

正直なところ医学生としては「卒業できた」というだけでもエヴァンゲリオンの最終回くらいの感じで学校から送り出してほしいものなのだが、なぜか最後の最後に「医師国家試験」という圧倒的な砦が待ち構えている。




勘弁してくれ、もう俺たちはそうとう勉強したつもりだ。

これでもまだ足りないと言うのか。



うん、確かに私は医学生時代、大して勉強熱心だった方ではない。



いや、ごめん話を盛った。

勉強熱心じゃないどころかどうかしてるレベルの劣等生だった。



原因は分かっている。勉強をしていなかったからだ。

勉強をしないと試験には合格しない。エジソンは偉い人。そんなの常識。




私が勉強をしなかった理由は、これまたシンプルで、

私は何かを始めると必要以上に熱中してしまうためだ。

丁度この時期はプロ野球を追いかけるのに忙しく、なんJでやきうのお兄ちゃん彡(゚)(゚)の1人として精力的に活動していた。

※用語解説

なんJ=野球に関する実況・雑談、何でもござれの匿名掲示板。
やきうのお兄ちゃん=なんJに巣食う謎の集団。



今はブログやニュースレターといった物書きの副業(半分くらい趣味)が楽しいので、正直なところこの趣味に助けられてるところはある。



もし今ハマっているのがサウナだったら日本の誰よりもととのっているだろうし、

乳首相撲(洗濯バサミを介してお互いの乳首を引っ張り合う競技)にハマっていたら乳首が2~3回は生え変わるくらい鍛え上げているに違いない。

私はそういう性質だ。




私が医学の知識を発信して、読者の皆様がそれに対し評価をして下さる。

このサイクルが無かったら、今ごろ私は3個目の乳首で自主練に励んでいてもおかしくなかった。

読者の皆様にはいつも感謝している。



ともかく、そんな調子で1日のうち29時間くらいなんJに滞在していたこともあり、学業はお世辞にも優秀な方ではなかった。

私自身、「これ留年したかも」と思ったことも20回くらいあったし、

同期の友人たちからは「今年のやっきーは留年しそうだ」「今年こそは間違いなく留年だろう」

「今年は今までにないほど確実に留年するに違いない」と新作のボジョレーヌーボーのような評価を毎年受けていた。



しかし私は追いつめられるとやる気が出る方…

というより追い詰められない限りやる気が出ないので(あまりに勉強しなさすぎて高校生の頃に留年しかけたことすらある)、

本試験はとりあえず落とすものとして、後がなくなった再試験の直前に力技で暗記を詰め込んできたし、必要とあらば目にも留まらぬスピードで教授の靴をなめてきた。

これらの技術を駆使することで常に留年ゾーンギリギリを低空飛行した末に、辛うじて6年間で卒業できたのだ。



しかし、医師国家試験となるとそうはいかない。

医大の進級試験であれば「今日は産婦人科のテスト」「来週は整形外科のテスト」「再来週は泌尿器科のテスト」といった感じで、単元ごとの狭い範囲をその場凌ぎでやってこれたが、

医師国家試験は全ての範囲がまとめて出題されるので今までの一夜漬けが通用しないし、舐めるべき靴も存在しない。



さて、そんな私が医大6年生の冬に受けた、国家試験の模擬試験の結果はどうだったかと言うと、

学年100人中、

100位。



ビリ以外の何物でもない数字にさすがの私もかつてない危機感を抱いたが、

この腐臭を嗅ぎつけてやってきたのが友人のダニエル(仮名)だ。

「やっきー、100位は流石にヤバくないか?」



ぐうの音も出ない。

100人中100位だもの。

これを超える数字なんてドンキーコングの全クリ以外で見たことがないもの。



…いや、待て。

ダニエル、お前も大して成績は良くないじゃないか。私は知っているぞ。

私は2年生の進級試験(再試験)に落ちた時、教授に土下座をしに行き、すんでのところで再々試験を受けさせてもらい、辛うじて留年を免れた。

今でも忘れない、ほろ苦い青春の1ページだ。



その時、隣で一緒に土下座してたのはダニエル、お前じゃないか。

この事実に気付いた私は、唇を震わせながら尋ねた。



「ダニエル、お前は何位だったんだ?」



ダニエルは、やれやれと肩をすくめるわざとらしいポーズを取り、

私を見下しながら、こう答えた。







「99位だった。」







99位だったのである。

私とダニエルで、仲良く学年のケツを支えていたのである。



俺たちはいつでも2人でひとつだったが、同学年じもとでは誰よりも負けていた。

アホの修二と彰がここにいた。

呆気に取られる私に対し、



「やっきー、そろそろ勉強しないと流石にまずいぞ。」

よりによって99位のダニエルに危機感を煽られる恥辱に、流石の私も手が出そうになるが、

手を出すわけにはいかない。

だって100位だから。

もし私が98位なら「お前が言うな」と叫びながらワニワニパニックより激しくダニエルの頭を連打するところだが、

いくらダニエルをぶちのめしたところで、ダニエルが99位、私が100位という状況には変わりはない。



いや、あるいはダニエルを再起不能にすれば繰り上がりで99位にはなれるのかもしれないが、

残念ながら医師国家試験において下剋上システムは採用されていないし、

ぶちのめした相手の点数を自分のものにできる戦国大名システムも搭載されていない。

仮に後者が採用されたとしても、99位の奴をぶちのめすのは効率が悪い。

殺(と)るならもっと上位の奴だろう。



「じゃ、俺は勉強するから。さすがに頑張らないとな」

ダニエルはそう言い残して去って行った。

お前…99位が今さらそんな勉強したところで皆に追いつけると思ってるのk

いやダメだ。これはダメだ。その言葉はオレに効く。



仕方ない。



勉強するか。



ようやく尻に火がついた私は、必死に勉強を始めた。

とりあえず、押さえるべきは得点効率の良い内科だ。

心臓、肺、胃腸、腎臓、肝臓、脳…

このあたりの重要臓器はきっちり理解しておくと配点が高い。国家試験合格には欠かせない。



産婦人科?

こんなもん後回しに決まっている。

正直、6年間も医学部にいて産婦人科はちっともピンと来なかったので、産婦人科医になる気なんぞ今のところ皆無だ。




眼科?耳鼻科?

よくわからんから後回しだ。配点も大して高くないし。




皮膚科?整形外科?

それより、点を取れる内科が優先だ。


こうして、得点効率以外何も考えていない、進研ゼミの漫画に出てくるダメなパターンの奴みたいな勉強方法が功を奏し、

無事に医師国家試験に合格した。



この医師国家試験から時が経ち、

当時まさかコレだけは無いだろうと思っていた産婦人科医になり、

あの時に後回しにしていた眼科医と耳鼻科医のインフルエンサーと一緒にYouTubeライブ配信をすることになり、

何の因果か医師国家試験予備校の講師まで務めることになった。

しかも、かつてあれほど勉強を避けてきたにも関わらず、

やっきーの活動を始めてからの丸2年間は本業と副業をあわせて1日12時間ぐらい医学のことを考えている。



人生、何が起こるか分からないものである。

おそらく、当時の大学の同期たちに私の現状を教えても、誰も信じてはくれないだろう。




まあ仕方ない。100人中100位だったから。





スペースが余ってしまったので、最後にお知らせをひとつ。

誕生日が1997年4月2日~2008年4月1日の女性は、ぜひHPVワクチン(子宮頸がんワクチン)の「キャッチアップ接種」を受けてほしい。

本来、10万円かかるHPVワクチンの接種費用がタダになる最後のチャンスだ。

これを打つだけで子宮頸がん、肛門がん、中咽頭がんという命に関わる病気も、

尖圭コンジローマという非常に治しにくいイボが性器にできる病気もかなり高い確率で予防できるんだ。


2024年9月に接種を始めないとタダにならないので、まだHPVワクチン接種を受けてない人は是非、受けてほしい。

上記の年齢以外であっても、小6~高1は男女を問わず受けてほしい。

詳しくはこの記事に書いたので、読んでくれると嬉しい。

【医学の話】『コウノドリ』より 子宮頸がんとHPVワクチンについて考える

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA