こんにちは!
産婦人科医やっきーです!
私がX(旧Twitter)で質問箱を開設していることは読者の皆様もご存知の通りかと思います。
特に「〇〇の漫画に出てくる◇◇の描写について考察してほしい」というリクエストは多く、
質問箱のリクエストから作った記事もいくつか生まれました。
『鋼の錬金術師』最終決戦でホークアイ中尉が首を切られた描写について考察する
そんな中、1記事を書けるほどではないが埋もれさせるのも勿体ないリクエストも多く寄せられてきました。
そんなわけで、今日は過去の回答の中からいくつかピックアップしてお届けしましょう!
第3弾となる今回は「漫画描写で学ぶ医学編」です!
『るろうに剣心』志々雄の自然発火について
『るろうに剣心』京都編のラスボス・志々雄真実の自然発火ですね。
志々雄はかつて暗殺未遂を受け、全身を焼かれつつも生き永らえたわけですが、
その代償として発汗による体温調節ができなくなり、際限なく体温が上がり続けてしまうという弱点を抱えていました。
医者からも「十五分までしか戦えない」と言われていましたが(どういう計算をしたんだろう)、
剣心らの命懸けの猛攻により志々雄は活動の限界を超え、ついに自然発火してしまいました。
さて、この現象を医学的にどうとらえましょうか。
質問者様がおっしゃる通り、人間は体温が42℃を超えるとタンパク質が不可逆的な変性を起こして死亡するとされています。
通常の人間は、そうならないように発汗をしたり体表面の血管を拡張させたりして放熱するわけですね。
つまり発汗できなくとも体温を調節する機構は生き残っている(というか包帯は熱をこもらせるから取った方が良い)ので、
汗をかけない程度で発火するほど体温が上がることはありえません。
というかそもそも汗をかけない難病(特発性後天性全身性無汗症)も実際に存在するわけですが、
その方々が自然発火したという話は聞いたことがありませんね。
というわけで志々雄の体質は現実にはありえないわけですが、この前提を無視して温度が上がり続けるとどうなるでしょうか。
ここでバーベキューを想像してみましょう。
バーベキューは炭火で600℃、ガス火で1000℃を超える温度が出ているわけですが、
それだけの高温にさらされてもお肉はすぐに発火するわけではないですよね?
もちろんお肉には汗をかいたり血管を拡張させたりといった体温調節機能はありませんが、それでも発火はしません。
しかし、ずーーーーっと放置して炭になってしまうと、ここで初めて火がつきます。
この原理を説明しましょう。
水分が100℃で蒸発するのは小学校の理科で習った通りですが、この温度ではお肉の水分が抜けていくだけで、まだタンパク質の分子構造自体は保たれています。(熱変性で働きは失っています)
ところがタンパク質などの炭素化合物は、酸素の供給が不十分な状態で200℃を超える高温が加わると無理やり水分子が引っぺがされて蒸発していきます。
この時に揮発性の低い「炭素」だけが残り、いわゆる消し炭になります。この現象を「炭化」と呼びます。
そしてさらに炭の温度が上がり、炭の発火点である250~300℃に達すると、そこで初めて火が付くわけですね。
以上をまとめると、志々雄の体温が上がり続けるとこのような経過を辿ることが予想されます。
①42℃を超える…タンパク質の熱変性が起こる(常人はここで死ぬ)
②100℃を超える…志々雄様の水分が全部蒸発し、カラッカラのビーフジャーキーになる
③200℃を超える…タンパク質の炭化が始まる(ビーフジャーキーが消し炭になっていく)
④250℃を超える…志々雄様の形をした真っ黒な消し炭が発火する
⑤250℃を超えたまま放置…少しずつ消し炭が消滅し、劇中のように跡形もなくなる(ただしおそらく数時間以上はかかる)
ちなみに死闘の終盤では志々雄の血液が蒸発し、その直後に発火してしまったので志々雄ジャーキーは完成しませんでした。
これはつまり、志々雄のタンパク質は42℃になっても熱変性を起こさず、100℃に達しても血液は沸騰せず、200℃に達しても炭化を起こさず、少なく見積もっても250℃くらいまで活動でき、発火点に達したところでようやく急激に炭化⇒発火して死ぬということを示していますね。
志々雄は分子レベルで一般人とは構造が異なるとしか言いようがありません。
医学どころか科学すらも完全に超越していますので、私の手には負えません。誰か良い感じの仮説があったら教えて。
『るろうに剣心』不二の斬撃を受け止めた師匠の体について
おおう…衝撃力とかの物理的な話はもう、空想科学研究所あたりに聞いた方が良いかもよ…?
とはいえ折角のリクエストなので頑張ってお答えしましょう。
「破軍」の不二は志々雄様の配下「十本刀」の一人で、
人体発火とか二重の極みとかがどうでもよくなるくらいサイズ感がおかしすぎるファンタジー人間です。
君もしかして進撃の巨人に出てた?
8メートル超えのバケモンに襲われたら少々剣の腕が立つ程度ではひとたまりもありませんが、
不二と戦ったのは作中ぶっちぎり最強の人間にして剣心の師匠である比古清十郎でした。
比古は不二の渾身の一撃を事もなげに受け止めます。
というわけで、比古の骨密度や筋力。確かに気になります。
ところで今回、不二の身長を初めて知りました。剣心皆伝あたりに載ってるのかな?
手元に資料が無いので裏付けができないのですが、Wikipediaにも記載されている840cm・1280kgを前提として計算してみましょう。
師匠の耐久力を考える前に、まずは剣の衝撃力から考えるわけですが、
そのためには剣の重さが重要になってきます。
しかし、あまりにも不二の身長・体重が規格外すぎるので、身長からアプローチした場合と体重からアプローチした場合とで剣の重さが全く変わってきます。
①身長からアプローチした場合
明治時代の成人男性の平均身長・体重は157cm・50kgでした。
不二の身長は当時の一般人の5.3倍にあたるわけですね。
ということは、不二が使う剣の長さはこれまた一般的な日本刀の5.3倍の長さがあったと考えるのが妥当でしょう。
日本刀の重さは1kg前後なので、不二が使っていた剣の重さは1kg*(840/157)^3 = 150kgくらい、ということになります。
②体重からアプローチした場合
50kgの人間が上手く扱える剣の重さとして日本刀が1kgになったと仮定した場合、体重の50分の1が日本刀の適正な重量ということになります。
この考え方だと、不二の剣は1280kg÷50 = 25.6kgくらいになります。
あれれ~おかしいぞ?
身長からアプローチしたら150kg、体重からアプローチしたら25.6kgが不二の剣の重さになるぞ?
これはもう誤差なんてレベルではないので、計算を簡単にするために間を取って100kgということにしましょう。
不二の剣の重さは100kgである。いいね?
さて、熟練者の竹刀の振り下ろし最大速度は16.0±0.94m/secとされています。(参考「剣道のバイオメカニクス的研究」)
この速度は身長に比例するため、現代日本人の平均身長である170cmから算出すると、
不二の剣速は16.0*840/170 = 79m/sec となることが予想されます。
(日本刀と竹刀の重さの違いによる振り下ろし速度の違いについては考えないものとする)
はっっっっっっっや。時速284.6kmやんけ。新幹線やんけ。
以上をもとに、不二が剣を振り下ろした時のエネルギーの計算にまいります。
100kgの物体が79m/secで衝突した際の運動エネルギーは、
1/2*100*79^2 = 312050ジュールとなります。
数値だと分かりにくいかと思いますが、要するに100kgの鉄の棒が新幹線の速さで降ってくると思えばイメージしやすいでしょう。
他の物で例えると、だいたい70kgの人間が450メートルの高さ(東京スカイツリーの第2展望台)から飛び降りた時の衝撃力と同じくらいですね。(空気抵抗を含まず)
この衝撃を受け流すでも避けるでもなく、師匠のように受け止めたらどうなるでしょうか。
しぬわ。
というわけで結論として、師匠は人間ではありません。人の形をした鋼鉄か何かだと思います。
ついでに師匠の刀も耐久性がおかしいのでヴィブラニウムか何かだと思われます。師匠はアベンジャーズに出た方が良いんじゃないかな。
師匠の耐衝撃性能についてはごめん、計算方法がさっぱりわからん!!!柳田理科雄先生に聞いてくれ!!!!!
(骨の荷重能などはある程度調べられましたが、関節等を考慮した値が全く分かりませんでした)
あと計算ミスってたらごめん!!!!!
『コウノドリ』点滴の練習について
倉崎先生の点滴の練習…『コウノドリ』13巻、TRACK39「腎盂腎炎」のエピソードですね。
では、私の研修医時代の話をしましょう。(大学や病院ごとに流儀が異なるのであくまでも私の話です)
私のところでは学生時代に人に針を刺すことはありませんでしたが、
採血や点滴に関しては研修医になった時に同期の友人同士で練習をし合いました。
1学年上の(研修医2年目の)先生に見てもらいながら教わるわけですが、
人間の血管にうまく針を刺して点滴をとるという技術は一般人の皆様のご想像の50000倍くらい難しいので、
今まで人に針を刺したことのないピヨピヨ研修医がいきなりこんなもんをやっても百発百中で失敗します。
私も失敗しまくりました。
うまく血管に当たらない程度ならまだしも、針が血管を傷つけた上で他の場所をウゴウゴした日には壮大な皮下出血が起こるので、
前腕だけド級のDVを受けた人みたいな見た目になります。
とはいえこんなのは研修医同士ではお互い様です。
血管のないところに外筒をねじ込まれて「こいつブッ〇してやろうか」と思う時も、
1週間くらい半袖の服を着れなくなる時も、
駆血帯の解除に失敗されて自分の服が血まみれになる時もありますが、
全ては患者さんのためなので気まずくなることも文句を言うこともありません。
ただまあ、倉崎先生のように18G(太さ1.2mm)の針を先輩にぶっ刺す勇気は私にはありません。
普通、練習に使うのは24G(0.5mm)とか22G(0.7mm)くらいですね。
言われるがままに初心者に18Gを刺される四宮先生はえらい。
『五等分の花嫁』一卵性の五つ子は存在する?
実は『五等分の花嫁』に関する考察は以前に構想したことがありますし、少し下調べもしましたが、
ぶっちゃけ面白い考察ができなさそうなので却下しました。
こういう脳内でボツにしたマンガ考察はいっぱいあります。
そもそも、漫画界の「一卵性の●つ子」というくくりであれば彼女らの上を行く『おそ松くん』が既に居ますから、
ことさら『五等分の花嫁』にフォーカスするのが難しいのです。
それはさておき、一卵性双胎の発生確率は約0.4%と言われており、これは人種による差はほぼ無いとされています。
これを応用すると、一卵性品胎(三つ子)の発生確率は
0.004^2×2 = 0.000032(0.0032%)
となります。詳しい計算方法は割愛します。
さらに一卵性周胎(五つ子)となると、1つの受精卵が5個に分割されるパターンは14通り存在するため、
0.004^4×14 ≒ 0.00000000358(0.000000358%=妊娠10億回につき3.58回の頻度)
となります。めちゃくちゃ稀ですね。
世界の分娩件数は年間1億4千万件程度とされていますから、
確率的には世界中を探しまくれば5年に1組くらい居る計算になりますかね。
しかしながら、これはあくまでも「発生する確率」であり、5人全員がきっちり胎内で育つ確率となると各段に下がります。
具体的にどんな確率になるのか、そして実在するのかは…ごめんなさい、いろいろ文献をあたってみても分かりませんでした。
どちらにせよ、『五等分の花嫁』における中野五姉妹は奇跡的な状況と言えるでしょう。
『おそ松くん』の一卵性六胎の発生確率は…もう計算が難しすぎるので放棄します。
めちゃくちゃ大ざっぱな計算では100億~1000億分の1くらいの範囲になると思います。数学に強い人、誰か計算して教えてください。
『グラップラー刃牙』格闘技と解剖学について
ドアノブに負けてた頃の勇次郎が言ってたことなので現在のバキワールドに通用するかは分かりませんが、
専門知識が闘争に使える科となると個人的には救急科がトップだと思います。
骨・筋肉に精通している整形外科もかなり強いと思いますが、救急はそこの知識をある程度持っている上で内臓破壊に関する知識も豊富ですからね。
おまけに救急や整形は力仕事もいっぱいあるのでパワーも十分。
まさに最強の科ツートップと言っても過言ではないでしょう。
ちなみに私の大学の知り合いで、空手・柔道で全国に行った人がそれぞれ1人ずつ居ましたがどちらも整形外科に入ってました。
こちらは私の独断と偏見による強い科ランク表です。
(知識だけでなく、普段の診療で筋力を鍛えられるかどうかも加味しています)
S:救急科、整形外科
A:腹部外科、リハビリテーション科
B:胸部外科、脳神経外科、産婦人科
C:内科系全般、小児科、泌尿器科、形成外科、耳鼻科、眼科、皮膚科、口腔外科、精神科、心療内科、麻酔科
D:病理科、放射線科
外科系は全般的に体育会気質のところが多く、部活でスポーツを経験していた人は珍しくありません。
必然的に格闘技経験者も多いでしょうし、腹部外科となると腎臓や肝臓などの腹部臓器を狙った打撃も的確だと思われます。
最後に産婦人科について。
闘争においてその専門知識をふるう場面はほぼありませんが、意外とパワーを使う場面が多いので多少は戦えると自負しております。
ちなみに私は身長205cm、体重130kg、ベンチプレスで270kgを差して100mダッシュは裸足で11秒を切る超健脚です。ご参考までに。
『ジョジョの奇妙な冒険』ドイツの医学薬学は世界一?
ドイツの医学薬学は世界一なのかどうか?
面白い疑問ですね。
ご存知でない方のために説明しますと、『ジョジョの奇妙な冒険』第2部の舞台となったのは1938年のニューヨークです。
ちょうど第二次世界大戦が始まるかどうかくらいの時期ですね。
作中でナチスドイツの軍人・シュトロハイムが石油王・スピードワゴンに自白剤を注射する際、
「我がドイツの医学薬学は世界一ィィィ!できんことはないイイィーーーーーッ!!」
という異様に記憶に残る有名なセリフを叫びました。
さて、なぜ医学といえばドイツのイメージなのか。
それは、第二次世界大戦の前くらいまでは確かにドイツが世界一と言っても良いくらいの水準だったためです。
そのため、日本でも西洋医学を海外から輸入する際にドイツ医学をめちゃくちゃ参考にしました。
今でも年配の先生などはカルテを書く時にドイツ語がかなり混ざっていますし、
「カルテ」「ギプス」「アレルギー」「チアノーゼ」など、ドイツ語がそのまんま残っている医学用語も多いです。
つまり、シュトロハイムの「世界一ィィィ!」は誇張ではなく本当にそうだったと言えます。
しかし、ナチスに嫌気がさした優秀な医師たちが国外に流れた上、第二次世界大戦の敗戦も重なったことでドイツが世界一ィィィ!の時代はとうに過ぎ去りました。
それに、第二次世界大戦が終わって国際交流が盛んになると、医学や科学を世界で共有して「全員で発展していく」という流れになっていきます。(それまでは国内で得た知見は国内で独占することもよくありました)
そのため、医学における最先端技術は世界で共有されており、(医薬品開発などで特定の国に強い企業がある他、保険水準などの差異はありますが)現場で使用される医療そのものは日本もアメリカもドイツもそれほど大差ありません。
とはいえ、未だに医学界においてドイツが超重要なポジションを占めていることは確かです。
日本同様、水道水をそのまま飲める数少ない国であり衛生環境も良いですしね。
結論として、当時は世界一ィィィ!と言って良いレベルでしたし、今でも世界有数ゥゥゥ!であることは間違いないと言えるでしょう。
『王の病室』医療費問題
『王の病室』は医療費問題を題材とした漫画ですね。
高齢化が進み、医療費が嵩み続ける日本において、医療に対しどう向き合うか…といった内容です。
ただ、この医療費問題。
ぶっちゃけ産婦人科ではあまり考えないんですよね。
あとは小児科でも比較的、意識されづらいと思います。
『王の病室』で取り上げられるように、PS(パフォーマンスステータス=自力でどれくらい動けるかの指標)の低い高齢者に対しガンガン高額の医療を行うというシチュエーション自体が産婦人科では多くありません。
産婦人科で高額の医療費が必要になる状況といえば、産科における過多出血やDICの発症、婦人科では悪性腫瘍が思い浮かびますが、
産科はもちろん、婦人科も内科の患者さんに比べて年齢層が全体的に若めですから、高額な治療を行うことに対するハードルは低いと思います。
例えば抗癌剤治療などもPSが2以上(それなりに自立していること)であることが条件だったりするので、適応のある方に対してはできる治療をガンガンやっていくことが大半です。
このへん、内科と産婦人科・小児科で隔たりがあるところだと思います。
『メイドインアビス』カートリッジについて
んなぁ…
カートリッジについては具体的な描写がいまいち無いので考察しにくい題材ですが、可能な範囲でお話ししましょう。
以下、『メイドインアビス』のネタバレとグロテスクな表現を含むので未読の方はご注意下さい。本当に。
そういうのが苦手な方はここをクリックして飛ばして下さい。
『メイドインアビス』は主人公のリコと相棒のレグが未知の大穴「アビス」を探検する物語ですが、
アビス内では上昇(地上側へ戻る方向に移動)すると「上昇負荷」と呼ばれる呪いを受けます。
この上昇負荷は坂や階段をちょっと昇っただけでも発症するので基本的に防ぎようがなく、しかも深層に潜れば潜るほどに致命的な症状になっていくので、
アビスを探検する「探窟家」にとって最大の悩みの種です。
そんな状況を打開すべく、「黎明卿」ボンドルドが発明したのがカートリッジです。
これはアビスの上昇負荷を防げるという画期的なアイテムですが、恐るべきはその製造方法。
人間の子供から脳と脊髄と最低限の臓器以外の全てを削ぎ落とし、生きたまま箱詰めした物で、
中身の子供が代わりに上昇負荷を受けて死ぬというメチャクチャな代物でした。
その性質上、上昇負荷が無くともカートリッジの「消費期限」は数日間とされています。
そんなカートリッジを現実に作るとしたら、
脳や脊髄が数日間生きられるためには循環器と呼吸器が必須ですから、
心臓・肺、そして呼吸に必要な胸部はまるごと残しておかないといけません。
呼吸に必要な横隔膜の動きをコントロールするには腹腔のスペースもそれなりに必要です。
よって、少なくとも胸部・上腹部は残しておかなければならず、最低限それさえあれば数日はもつわけですが、
わざわざ出血死等のリスクを冒してまでそれ以外の臓器(消化器や泌尿器、肝臓、脾臓など)を削ぎ落す必要があるかというと度し難いとしか言いようがありません。
以上より、効率的にカートリッジを作るのであれば、四肢を切る以上の必要性は乏しいと思います。
にも関わらずボンドルド卿が目だのアゴだのを削っていることの意図としては、おそらくカートリッジを少しでも軽量化するためであり、加工された子の苦痛などは何も考えていないのでしょう。
ボンドルド卿滅ぶべし。いや滅んだけど。
『TOUGH』幻魔拳について
恒例の『タフ・シリーズ』に関する質問ですね!
本当多いんだよこの手の質問!!!
うちは産婦人科ブログだよ!
うっかり鬼龍と静虎のMM双胎の考察をしちゃったばかりにこんなことになるとは思ってなかったよ!!!
『TOUGH』を読んでる妊婦さんなんて玄腿の持ち主より少ないよ!!!
『TOUGH』より双子(一絨毛膜一羊膜双胎)について解説する
しかしマネモブ諸兄も大事な読者なことには変わりないのでお答えしましょう。
とはいえ妊婦の皆様にとってはマジで何を言ってるのかさっぱりだと思うので、「幻魔拳」について説明しておきます。
「幻魔拳」は主人公・宮沢熹一が継承している古武術「灘神影流」の技のひとつです。
要するに超すごい寸止めパンチです。
寸止めの際に「幻魔」というなんかよくわからない気のエネルギーを送り込むことで相手に肉体が破壊されるビジョンを植え付け、戦意を喪失させるというニフラムみたいな技です。
とはいえ高レベルな格闘家同士では幻魔が通用しづらいため、
作中における役割としては親父こと宮沢静虎がチンピラを懲らしめるための精神技といった感じでした。
しかし武装したテロ組織を単身で壊滅させたくせにラーメン屋にボコボコにされたおじさんこと鬼龍の息子である悪魔王子が登場したあたりから幻魔拳の存在感は一変します。
悪魔王子は幻魔拳にオリジナル・アレンジを加え、食らった人間は顔面がはじけ飛んだような錯覚がずっと続くという相当エグい技になりました。
というわけで、ご質問の内容は「幻魔拳に似た症例はあるかどうか」でしたね。
…………
あったら私が教えてほしいわ。
『TOUGH』心臓で”弾丸すべり”は可能?
うぁぁぁ マ…マネモブがブログを練り歩いてる
…そんなわけでまず”弾丸すべり”について解説しましょう。
例のごとく古武術「灘神影流」の技のひとつで、要するに相手の攻撃を受け流す回避技です。
達人ともなれば斬撃・矢・銃弾などを回避することもできます。
そんな中、主人公・熹一の叔父にあたる宮沢尊鷹はサブ・マシンガンの銃弾を胸部に打ち込まれながらも心臓で”弾丸すべり”を発動させて難を逃れました。
確かに、この尊鷹の”弾丸すべり”はタフ・シリーズの中でも人外を超えた人外と言わざるを得ないでしょう。
さて、心臓の表面を銃弾が滑るとどうなるのでしょうか。
サブ・マシンガンに限らず銃弾というのは非常に高い運動エネルギーを持ち、弾丸自体も高温(ものによりますが、数百℃くらいにはなるようです)であるため体内を破壊しながら進みます。
そのため、ただ弾丸が通過したところだけではなくその周囲も甚大なダメージを負うわけですね。
仮に尊鷹の心筋が鋼でできていたとしても、心臓が自身に血液を供給するための血管「冠動脈」は高熱による血液凝固で閉塞してしまい、心筋梗塞を発症する可能性が高いでしょう。
また、射出口の場所を見るに「心臓は無事だったからセーフだぜ!」ということには絶対になりません。
肺と肺の間のスペースである「縦隔」を通過していますので、縦隔内にある大静脈か大動脈か食道か気管か胸髄のどれかは確実に逝ってます。
言うまでもなく大静脈や大動脈に銃弾大の穴が開けば出血死は必然ですし、
食道に穴が開けば「縦隔炎」というシャレにならん感染症が起きかねません。
気管に穴が開けば呼吸困難は必至ですし、胸髄に穴が開けば下半身麻痺は避けられません。
結論としては、普通に体の表面で”弾丸すべり”をすればよかったと考えられる。
忌憚の無い意見ってやつっス。
余談ですが、一般的な拳銃の弾よりも重くて速いライフル弾は人体に与えるダメージが極めて大きく、
例えば拳銃の弾の2倍の重さ・3倍の速さを持つライフル弾は18倍の運動エネルギーを持ちます。
よって、人体にとっても単純に18倍のダメージになる…とは限りませんが、
拳銃弾やそれを射出するサブ・マシンガンに比べ、ライフル弾の殺傷能力が極めて高いことは押さえておきたいですね。
………
体を一周させる意味とは…!?
『タフ・シリーズ』で再起の厳しい必殺技は?
この質問者さんはこれを知って何の役に立てるというのだろう。
質問者さんは灘神影流と敵対する人なのかな?
アイアン木場かな?
一応お答えしておくと、破心掌や蠢蟹掌といったシンプルに心停止に至らしめる技は厳しいですね。
心臓系を除くと、真・大蛇捻り、鹿落し、首落しといった頸椎損傷系が厳しいでしょう。
ジイちゃんによって荼毘に付されること間違いなしです。
まとめ
今回の質問箱まとめは以上となります。
引き続き、質問箱の回答が溜まってきたら不定期にこのような形でまとめていきますね。
マンガ考察のリクエストだけでなく、妊婦さんや女性の皆様の健康に関するご質問も大歓迎です。
以下、関連記事です。
『TOUGH』関連の記事はこれで3本目…なぜこんなに縁が深くなったのか。
『TOUGH』より 宮沢熹恵の出産と熹一の誕生について考察する
前回の質問箱まとめ記事はこちら。
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現在、ニュースレター『産婦人科医やっきーの全力解説』を配信中です。
「男女の産み分けってできるの?」「逆子って直せるの?」「マーガリンは体に悪いの?」などの記事を基本無料で公開しておりますので、こちらもお楽しみください。
お見事ですやっきーボー
やはり私がにらんだ通りあなたは優れた産婦人科医だ
タフなんてオカルト漫画の質問に丁寧に回答してくれるから尊いんだ 理解が深まるんだ
ボ卿は滅んでないんだよなぁ