こんにちは!
産婦人科医やっきーです!
突然ですが、皆様は「ザ・ドラえもんズ」をご存知ですか?
2024年現在でおよそ30歳以上の方なら覚えているかもしれません。
もはや語るまでもない国民的作品『ドラえもん』ですが、
かつてドラえもんには6人の親友と結成したチーム「ザ・ドラえもんズ」がありました。
一時期は劇場版ドラえもんと同時上映されたり、またTVスペシャルでも専用コーナーが設けられるなど、
その高いキャラクター性で人気を博しました。
…ところが皆様もご存知の通り、
いつの間にか全く見かけなくなりましたね。
若い世代の人の中にはそもそも知らないという方も多いはずです。
しかしながら彼らは未だに色褪せない魅力を持っており、
多くのファンから新作が熱望されているのです。私とか。
本日はそんな悲運のキャラクター「ザ・ドラえもんズ」と、
彼らを主役とした絶版人気マンガ『ザ・ドラえもんズ』および『ザ・ドラえもんズ スペシャル』について解説していきましょう。
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ザ・ドラえもんズ
まずは、チーム「ザ・ドラえもんズ」について解説します。
野比のび太の同居人として有名なネコ型ロボット・ドラえもんですが、
彼はかつてロボット養成学校に通っていました。
のちにザ・ドラえもんズを結成する彼らはロボット養成学校のクラスメイトで、落ちこぼれ集団として扱われていたのです。
彼ら7人はある事件をきっかけに不滅の友情を誓い合い、
本当の友情と勇気を持つ者だけが手にできる伝説のひみつ道具「親友テレカ」を獲得します。
ロボット養成学校卒業後のドラえもんズはそれぞれ時代や国を跨いで活躍をすることになりますが、
誰かが窮地に陥った際は親友テレカの効果により全員で駆けつけ、問題の解決にあたるのです。
ちなみに「ザ・ドラえもんズ」の他にも「ドラドラ7」という別称や「ドラズ」という略称もしばしば使われます。
それでは、ドラえもんズのメンバーを解説していきましょう。
ドラ・ザ・キッド
まずは西部開拓時代のアメリカ(作品によって微妙に異なります)で保安官代理として活躍するガンマン、ドラ・ザ・キッド。
空気砲を操り、映画やアニメで「ドカーン!」という台詞と共に敵と戦う姿を覚えている方も多いはず。
ちなみに射撃の腕はのび太と互角です。
※のび太は原作でも宇宙有数の殺し屋にタイマンで勝つレベル
ドラえもんズのメンバーにはドラえもんにとってのネズミのような弱点が存在しますが、
キッドの弱点は高所恐怖症ということ。
彼を主人公とした劇場版作品が2作(『ロボット学校七不思議!?』、『ドキドキ機関車大爆走!』)もあり、
高い戦闘能力とどこか可愛らしさのある弱点、そして何よりドラミと恋仲にあるという優遇ぶりのため、
ドラえもんズの中でもかなり目立つポジションに居ます。
王ドラ
次にご紹介するのは王ドラ。
清朝末期の中国で活躍し、カンフーの達人にして漢方医学に精通しています。
その医術はお医者さんカバン等のひみつ道具でも治せなかった症状を漢方薬で治してしまうレベル。
ロボット養成学校で一番の秀才と言われる知識の幅広さに加え、機転も効き、前述の戦闘能力と医術を兼ね備えた完璧超人です。
彼が落ちこぼれ集団の一員として扱われていたのは恐らくとばっちりでしょう。
劇場版では『おかしなお菓子なオカシナナ?』で主役を務めました。
そのかわりに純情な性格で、弱点は女性です。
目の前に女性がいるだけでフニャフニャになってしまいますが、
その割に看護師ロボットのミミ子さんという恋人が居たりします。
ちなみにミミ子さんは座った状態でひみつ道具の「心吹きこみマイク」を踏み壊せる剛の者です。
ドラリーニョ
次はブラジルで活躍するサッカー大好き・ドラリーニョ。
ドラニーニョと言い間違えられること山のごとし。
ドラえもんズで最も運動能力が高いとされる彼ですが、
劇場版ではサッカーボールを巨大岩にぶつけて岩の方が砕け散ったり、
巨大岩でできたサッカーボールを蹴って川をせき止めていた岩山を砕いたりと、
もはや「蹴る」という動作さえ挟めば何でもアリの様相を呈しています。
弱点は異常な忘れっぽさで、ギャグパートでは3歩歩けば全てを忘れてしまうというもはや病的なレベル。
ただし、思慮深さが無い代わりに物事を色眼鏡なしに捉えられるという長所もあります。
ギャグもシリアスもこなせるためか、劇場版では『怪盗ドラパン謎の挑戦状!』 『宇宙ランド危機イッパツ!』『ゴール!ゴール!ゴール!!』の3作で主役を務めました。
ドラニコフ
冷戦時代のロシアで人民奉仕活動をしているのがドラニコフ。
寡黙で心優しい男ですが、生まれたばかりの時にひみつ道具「月光灯」の光を浴びてしまい、
以来、月などの丸い物を見るとオオカミに変身してしまうという性質を持ちます。
オオカミに変身すると理性が失われて狂暴化する(初期のみの設定。いつの間にか変身中の行動をコントロールできるようになっている)のですが、
これを利用して敵との戦闘時などにあえて変身することもしばしばです。
彼のストーリー上の特徴と言えば恋愛話の異常な多さ。
もともと惚れっぽいという性格が設定されているのですが、特に『ザ・ドラえもんズ スペシャル』ではこの性質が強く押し出されており、
入院中の女の子や歌手、果ては人魚姫、かぐや姫など1~2巻に1人ぐらいのペースでドラニコフの恋愛話が描かれます。
エル・マタドーラ
スペインで闘牛士として活躍するのがエル・マタドーラ。
ドラえもんズで一番の怪力を誇るほか、闘牛剣を初めとした剣技にも優れ、ひみつ道具「ヒラリマント」の扱いを得意とします。
怪力と剣技とヒラリマントというイマイチ嚙み合わない組み合わせには若干の疑問がありますが、
とにかく戦闘時にはドラえもんズのメイン戦力として活躍します。
弱点といえば彼の代名詞でもあるシエスタ(昼寝)。
のび太レベルで所かまわず寝てしまうため、ギャグシーンに使われるばかりか事件の発端となってしまうこともあるほど。
劇場版や田中道明版『ザ・ドラえもんズ』だと王ドラとライバル関係にあることが強調されがちですが、
『ザ・ドラえもんズ スペシャル』では両者の関係性はあまりピックアップされません。
ドラメッド三世
サウジアラビアで大富豪の子息・アラシンのお世話ロボットとして働くのがドラメッド三世。
温厚な性格で、一人称は「わがはい」、語尾は「○○であ~る」という特徴的な喋り方をしています。
炎や雷、風などを自在に操る魔術(ひみつ道具を魔術っぽく使用していると思われる)を使いこなすほか、
怒ると巨大化する(原理は完全に不明)ため仲間のピンチに大活躍します。
「三世」とつきますが、一世や二世の存在については不明。
カナヅチのため弱点は水で、足が浸かる程度の水はおろか、雨に打たれる程度でも取り乱します。
そしてドラニコフに並んで多数の女性との恋愛模様が描かれがちです。
『ザ・ドラえもんズ スペシャル』6巻では若かりし頃のしずちゃんのママと恋仲になりかけたことも。
(あと一歩でドラえもんの存在意義に影響しかねない事態に陥るところでした)
『ザ・ドラえもんズ』の媒体
メンバーを紹介したところで、次に『ザ・ドラえもんズ』の発祥について解説しましょう。
そもそも、『ドラえもん』原作のどこにも存在しないはずの『ザ・ドラえもんズ』はどこから生まれたキャラクターなのでしょうか?
それは1995年に発売された3DO専用ゲーム、『ドラえもん 友情伝説 ザ・ドラえもんズ』に遡ります。
このゲーム自体は3DOというドマイナーなハードで発売されたこともあり知名度が十分に得られませんでしたが、
ドラえもんの根幹設定に大胆に切り込んだこと、そして『ザ・ドラえもんズ』の優れたキャラクターは一定の評価を得ました。
定価は8500円でしたが、現在では中古市場でなかなかのプレミア価格で取引されています。
映画作品
さらに原作者の藤子・F・不二雄先生がドラえもんズのキャラクターを高く評価したことで、
同年上映の『映画 2112年ドラえもん誕生』にごく僅かながらドラえもんズが出演しました。
(この経緯については諸説あります)
この『映画 2112年ドラえもん誕生』ではドラえもんが青くなった理由が変更されるなど、
年代ごとに『ドラえもん』の細かな設定の認識に齟齬が生じる原因となりました。
※元々は「ネズミに耳をかじられた」⇒「鏡で自分の姿を見て青ざめた」(ただし方倉設定)でしたが、
この映画公開から約10年間は「ネズミ型ロボットに耳をかじられた」⇒「ひみつ道具『元気の素』を飲んだつもりが『悲劇の素』を間違えて飲んでしまった」⇒「三日三晩泣き続けて黄色い塗装が剥がれて青くなった」になりました。
※※方倉設定について詳しく書くとそれだけで1記事書けてしまうので割愛します。
ドラえもんの設定周りはとんでもなく複雑だということだけ分かればOKです。
ともかく、こうして一介のゲームオリジナルキャラだったドラえもんズは公式の映像作品に登場し、一定の市民権を獲得。
翌年以降も劇場版ドラえもんの同時上映という形でドラえもんズを主役とした映画作品が公開され、
結局ドラえもんズ主役映画は『ドラミ&ドラえもんズ ロボット学校七不思議!?』から『ザ☆ドラえもんズ ゴール!ゴール!ゴール!!』まで合計7作品が制作されました。
前述の3DOゲームや後述の漫画版と異なり、こちらの映画版に関しては今でもお求めやすい価格で購入可能です。
『ザ・ドラえもんズ』(田中道明版)
このムーブメントと同時に、ドラえもんズのキャクターデザインを担当した田中道明先生によりコロコロコミックで『ドラえもんゲームコミック ザ・ドラえもんズ』の連載が開始。
短編~中編にてオリジナルの物語が展開されるほか、前述のドラえもんズ主役映画のコミカライズも描かれました。
ドラえもんズ界隈では「田中版」「田中道明版」と呼ばれることが多いですね。
ちなみに田中道明先生は藤子スタジオのアシスタント出身で、
藤子F先生の存命中より代筆を担当するなど藤子F先生からの信頼も実績も確かな先生です。
『ザ・ドラえもんズ スペシャル』(三谷幸広版)
コロコロで連載された田中道明版に対し、『小学五年生』『小学六年生』といった学年誌で連載されたのが、
シナリオ:宮崎まさる先生、作画:三谷幸広先生による『ザ・ドラえもんズ スペシャル』。
ドラえもんズ界隈では「三谷版」「三谷幸広版」「ドラスペ」とよく呼ばれます。
シナリオの宮崎まさる先生は『人形草紙あやつり左近』(作画:小畑健先生)や『ブラック・ジャック創作秘話』(作画:吉本浩二先生)などを手掛けた実績があり、
ドラえもん大長編並みに壮大なストーリーが展開されます。
作画の三谷幸広先生もまた藤子スタジオの出身であり、
本屋さんの児童コーナーなどによく置いてある『ドラえもんの学習シリーズ』を複数手掛けた実績があります。
そして三谷幸広版は学年誌連載ということを意識してか、
小学校の勉強にもなるような展開が随所にねじ込まれているのも特徴です。
週刊少年ジャンプが「友情」「努力」「勝利」であるならば、
三谷版ドラえもんズは「友情」「涙」「理科」「社会」と言っても過言ではありません。
壮大なストーリーと相まって、子ども心をくすぐる優れた作品です。
「ドラえもんズの漫画」と言えばこの『三谷版ドラえもんズ』を連想する方も多いと思います。
そして、人気が故にぶっ飛んだプレミア価格で取引されることもしばしば。
2024年7月現在、Amazonや楽天における全巻セット(全12冊)の相場は7万円近いです。
(現在でも単巻で集めれば1~2万円で揃うため、セット買いをする必要性は低いです)
『ザ・ドラえもんズ スペシャル ロボット養成学校編』
三谷版の番外編のような位置付けの作品が、
『ザ・ドラえもんズ スペシャル ロボット養成学校編』です。
こちらではドラえもんズのロボット養成学校在学中のエピソードが描かれています。
『スペシャル』でシナリオを担当した宮崎まさる先生がノータッチであり、ほぼ全編に渡りドタバタギャグが展開されています。
こちらもプレミア化しており、全巻セット(全3冊)の相場は2万円くらいです。
ドラえもんズが推された理由
このようにドラえもんズは1995年~2002年にかけて、映画やコミックスなど多方面にわたり展開されていきました。
そのため、2023年現在でおよそ30歳~40歳前後の人にとっては幼少期のアイドルとも呼べる存在でした。
スピンオフ作品でありながら公式からこれほどにプッシュされた理由として、
1996年に藤子・F・不二雄先生が逝去されたことで、ドラえもん関連作品を含めた藤子F作品を再評価する機運が高まっていたことが大きいと思われます。
加えて、ライバル会社である集英社にキラーコンテンツが無かった時期(『DRAGON BALL』終了後かつ『ONE PIECE』放送前)でもあり、
さらに『ポケットモンスター』の流行により子どもたちの関心が小学館のコンテンツに移っていたことも影響しているでしょう。
こと「ドラえもんズ」に関して言うと、メンバーの活躍地の都合上、
東西ドイツ統一や冷戦終結などで国際交流の機運が高まっていた時期であることも一因となっていたはずです。
ドラえもんズが居なくなった理由
こうして子供たちのアイドルとなっていた「ドラえもんズ」ですが、
2002年3月公開の映画『ゴール!ゴール!ゴール!!』にて映像作品での露出が終了します。
続く2002年9月発売の『ザ・ドラえもんズ スペシャル』最終12巻と、2003年1月発売の『ザ・ドラえもんズ スペシャル ロボット養成学校編』最終3巻を最後に、
漫画・映画・アニメを含めた全ての動きがピタリと止まってしまいました。
なぜ人気コンテンツであった「ザ・ドラえもんズ」は居なくなってしまったのでしょうか。
私は、これは1つの原因によるものではなく複合的な理由によるものと考えています。
以下にその理由を列挙します。
(私の個人的な推測が多分に含まれていることをご承知おき下さい)
アニメプロデューサーの意向
最も頻繁に言われる理由としては、当時『ドラえもん』アニメのプロデューサーを務めていた別紙壮一氏の意向というものです。
別紙氏は『ドラえもん』原作ならびに藤子・F・不二雄先生を強くリスペクトしていたことで知られています。
そのため、藤子F先生公認とはいえ『ドラえもん』の原作に存在しないキャラクターを前面に押し出すことには難渋しており、
映画における「ドラえもんズ」の扱いも、30分アニメ⇒15分アニメ⇒7分アニメ(声なし)と意図的に待遇を悪くしていたのです。
しかし、別紙氏が悪者というわけでは決してありません。
『ドラえもん』のアニメといえば、皆様もご存知のようにテレビ朝日(1979年~)ですが、
実はその前の1973年に日本テレビが『ドラえもん』のアニメを放送していました。
この『日テレ版ドラえもん』にはひと悶着もふた悶着もあり(アニメ制作会社の資金繰り悪化、社長の夜逃げ、倒産による制作途中での打ち切り、その後の社長の逮捕など)、
原作とのキャラクター解釈の差異やオリジナル要素の多さも相まって藤子プロから実質的な黒歴史扱いを受けているアニメです。
視聴率もさほど悪かったわけではありませんが、藤子F先生がこのアニメに対し低い評価を下していた証言がいくつも残されている等、原作者の立場としては納得できない作品だったようです。
『アオイホノオ』でホノオ君がすっきりしないコメントを残していたのも『日テレ版ドラえもん』ですね。
賛否はさておき、日テレ版におけるドラえもんの声優が孫悟空でおなじみの野沢雅子さんであることから、
テレ朝版ドラえもんとキャラクターの解釈が大きく異なることはお分かり頂けるかと思います。
そんな中、アニメ制作会社・シンエイ動画の楠部三吉郎氏が立ち上がります。
楠部氏は各所の信頼を落としてしまった『日テレ版ドラえもん』の汚名をそそぐかのように、
藤子F先生の説得や制作資金確保、テレビ局への働きかけに苦心し、年単位で『ドラえもん』アニメ実現のために奔走し、
ついにテレビ朝日にて『ドラえもん』の放送に成功したのです。
こうして楠部氏は『ドラえもん』アニメ成功の立役者となりました。
この時、楠部氏は藤子F先生の期待に応えるため、そして『日テレ版ドラえもん』と同じ轍を踏まないよう、
『ドラえもん』の原作を尊重することを徹底的に配慮していました。
オリジナルのコンテンツも展開したいテレビ朝日側と意見が対立し、お偉いさんとの言い争いも辞さなかったほどだと言われています。
こういった流れがあったからこそ、楠部氏とともにシンエイ動画を立ち上げ、『ドラえもん』のプロデューサーを担当することとなった別紙壮一氏もオリジナル要素をなるべく排除する方向で動いていたわけですね。
2005年のアニメリニューアル
2005年に『ドラえもん』のアニメは大幅なリニューアルがなされ、
具体的には声優の総入れ替え(大山のぶ代さん⇒水田わさびさん等)、キャラクターデザインの変更、BGMや効果音の変更、ハイビジョン化などが行われました。
この際、「原作への準拠」をより強く意識して制作されることになったと言われています。
結果として原作に存在しないドラえもんズはリニューアルに伴って存在を抹消されたわけです。
同時にアニメオリジナルの設定も次々に無かったことにされ、
ドラえもんが青くなった理由も元々の「ネズミに耳をかじられた」⇒「鏡を見て青ざめた」に戻されました。
つまり、公式で「ドラえもんが青くなった理由」が「悲劇の素を飲んだから」という設定だった期間は1995~2005年くらいの間に限られるため、
この設定を知っている方は2024年現在で約30~40歳くらいである確率が高いと言えます。
「元々は方倉設定で『青ざめたから』だったけど【2112年ドラえもん誕生】で『悲劇の素を飲んだから』に変更されて、その後のリニューアルで原作準拠の『青ざめたから』に戻された」と答えられる人はだいぶ厄介なドラえもんマニアです、おめでとうございます。私と同類です。
余談ですが、Xで「ドラえもんの体が青い理由」についてアンケートを実施したところ、
1387名の方々からご回答を頂き「青ざめた」が60.1%、「悲劇の素」が20%という結果になりました。
私のXのフォロワーさんは多くが妊活中・妊娠中・産後の方々なので、
『映画 2112年ドラえもん誕生』のリアルタイム世代(30~40歳くらい)が必然的に多いわけですが、
そんな中でも「悲劇の素」設定の認知度がこれほどに少ないことは意外でしたね。
ドラえもんが目立たない
原作ファンにとって最も重大な問題がこちら、「ドラえもんが目立たない」です。
この問題は「ドラえもんズ」が展開されている最中にも原作ファンから指摘されていました。
他のメンバーの個性が強すぎて、リーダーであるはずのドラえもんが居なくても成立してしまうのです。
もちろんこの問題は作者側も認識していたため、「リーダーシップがある」「友情が深い」「思いやりの心が強い」などちょっと苦しいフォローを入れていました。
とはいえ、それでも原作の熱心なファンにとって無視できる問題ではありませんでした。
これも「ドラえもんズ」が沈静化した原因の一つでしょう。
国際情勢の影響
日本という国で作るアニメで決して軽視できない問題が国際情勢です。
「新作ができない理由」と言うよりは「再開できない理由」になるかもしれません。
前述の通り、「ドラえもんズ」が作られた1990年代という時代は東西ドイツ統一や冷戦終結の直後でした。
言うなれば米ソを中心とした二極体制から、多極化する国際社会へとシフトしていった時代です。
しかし、これは同時に湾岸戦争の勃発など、アメリカと中東の関係がこじれた時代でもありました。
サウジアラビアはそんな中でもアメリカと緊密な関係を築いていましたが、
聖地のメッカ・メディナのあるサウジアラビアに軍靴で踏み込んだとしてイスラム過激派を刺激してしまうなど、
冷戦後の社会の歪みが2001年のアメリカ同時多発テロに繋がってしまいました。
そして「ドラえもんズ」の作品は2002年の映画『ゴール!ゴール!ゴール!!』が最後となります。
……
個人的には全くの無関係とは言えないのではないか、と考えています。
しかも、21世紀に入り国際問題はさらに深刻になりました。
2001年に中国が世界貿易機関に加入したことをきっかけに中国経済は大きな躍進を遂げ、アメリカを脅かしかねない存在にまで成長しました。
これによってアメリカと中国の間に経済的な摩擦が増えることとなりました。
2014年のクリミア併合を始めとする、ロシアによるウクライナへの介入も無視できません。
2022年に始まった軍事侵攻、それに端を発するアメリカやEUとの諍いは記憶に新しいところですね。
要するに、ドラえもんズのメンバーの活躍地(日本、アメリカ、ブラジル、ロシア、スペイン、中国、サウジアラビア)を考えると、
彼らが仲良くチームを組むという展開がギリギリ成立したのが1990~2001年頃だったのかもしれません。
ちなみにドラえもんズの正式なメンバーではありませんが、映画版にはドラパン(フランスで活躍)やジェドーラ(イタリア在住)といった面々も登場します。
これらの国々を見てみると、今となってはちょっと気まずい組み合わせやバチクソに相性の悪い組み合わせが何組も存在してしまっていますね。
このへんの問題に全て片が付けば、あるいはドラえもんズ再始動もあり得るのかもしれませんが…
声優問題
上記の3つに比べると比較的解決しやすいものの、実際のアニメ制作において無視することのできない問題、それが声優問題です。
上のキャラクター解説ではあえて省略しましたが、
ドラえもんズは声優が今では考えられないほど豪華なのです。
まずは何といっても王ドラ。
彼の声優は林原めぐみさん(綾波レイ、灰原哀、リナ=インバースなど)です。
言わずと知れた1990年代アニメ界の覇者ですね。
他にも、ドラ・ザ・キッドの声優は難波圭一さん(上杉和也、男塾の飛燕など)、
ドラリーニョの声優は一龍斎貞友さん(しんべヱ、マサオくんなど)、
ドラニコフの声優は桜井敏治さん(カイジの安藤など)、
エル・マタドーラの声優は中尾隆聖さん(ばいきんまん、フリーザなど)、
ドラメッド三世の声優は佐藤正治さん(トライのCMのアルムおんじ、亀仙人など)と、
超大御所ばかりですね。
声優のギャランティ事情は結構複雑らしく、調べてもはっきりしたソースが見つかりませんでしたが、
このレベルの大御所声優をドラえもんを除く6人も揃えるとなると中々にギャラが嵩むことだけは間違いなさそうです。
しかし超個人的な意見としては「ドラえもんズ」の声優は代わってほしくありませんが、
アニメにおいて声優の交代はよくあること(そもそも上記のドラえもんズメンバーも作品によって声優が違うことがあります)ですし、
仮に大御所声優の皆さんを続投したからといってさすがに制作費が1000万円も2000万円も増えるわけではないでしょうから声優問題は邪推のレベルかもしれませんね。
とはいえ、ちょっとした特番を組んだ程度で軽々しく起用できるレベルの方々ではないことは確かです。
まとめ
というわけで『ザ・ドラえもんズ』の歴史と発展、そして無かったことにされてしまった理由について解説しました。
まとめの前に、『ドラえもんズ』が私にとっていかに思い出深い作品であるかをお話しさせて頂きたいと思います。
私と『ドラえもんズ』の出会いは小学生の頃で、友人宅に置かれていた『ザ・ドラえもんズ スペシャル(三谷版)』がきっかけでした。
元々『ドラえもん』は好きでしたが、ドラえもんズの優れたキャラクター性とストーリーにすぐに夢中になり、即座に全巻購入を決意しました。
さらに、原作である『ドラえもん』にもそれまで以上にのめり込み、
新品のノート1冊に「ドラドラ大百科」をタイトルをつけ、自作のドラえもん百科事典を数か月かけて制作しました。
今では現物は残っていませんが、そこにはドラえもんの世界観に関する考察(小学生の拙いものでしたが)なども書いていたことを記憶しています。
やってることが今と一緒ですね。
中学生になった後はHTMLを必死で勉強し、ドラえもんのファンサイトを設立しました。
そこでドラえもんの二次創作小説なんかを書いていたものです。やってることが今と一緒ですね。
考えてみれば、小学生の頃に作った「ドラドラ大百科」こそが今の私の原点なのかもしれません。
あの時はノートに考察を書いて1人で楽しむだけでしたが、
現在では月間10万PVのブログで『ドラえもんズ』のことを12000字にわたり書くことができるようになったのですから、本当に感慨深いです。
当時の自分に聞かせたらどんな反応をするでしょうか。
それでは、「ドラえもんズ」の今後の話をしましょう。
色々な大人の事情が絡んで「ドラえもんズ」を再び目にすることは難しくなってしまいましたが、
それでも彼らの優れたキャラクター性は未だに高く評価されており、根強いファンが存在します。
それにも関わらず、公式からこれといったアナウンスも無く、突然無かったことにされてしまったという不遇ぶりから、2017年にはファンによるオンライン署名活動が行われました。
これによりなんと1442人の署名が集まったのですが、その後もテレビ朝日・藤子プロからの声明はありません。
(参考:change.org「ドラえもんズを復活させたい!」)
とはいえ、諦めるのは早いと思います。
ドラえもんズが「誰からも忘れ去られてしまったキャラクター」になっては絶望的かもしれませんが、
「かつて存在した子供たちのアイドル」として人々の心に残っている限り、ドラえもんズの復活の可能性は残されているはずです。
かつてドラえもんズを観ていた・読んでいたという方にとって、彼らを思い出すきっかけとして、
そしてドラえもんズを知らない世代の皆様にはドラえもんズを知るきっかけとして、
この記事がお役に立ちましたら幸いです。
ここまでお読み頂き、誠にありがとうございました!
最後になりますが、本記事の執筆にあたりゆっくりドラちゃんねる様(@YukkuriDoraChan)の動画を参考にさせて頂きました。
徹底したリサーチに裏付けされた『ドラえもん』の深い考察動画は非常に興味深く、ドラえもんファンとしても漫画考察系メディアとしても尊敬に値します。
この記事を読んで興味を持って頂けた方は、是非ご視聴をお勧めします。
ドラえもんズのことや日テレ版・テレ朝版アニメの経緯、方倉設定についても詳しく解説されています。
以下、関連記事です。
かの『ブラック・ジャック』にも絶版となった作品がありました。
【閲覧注意】『ブラック・ジャック』幻の未収録作品「快楽の座」を解説する
『ドラスペ』を始めとする、お勧め漫画解説記事です。
世界一漫画が好きな産婦人科医が選ぶ、おすすめ漫画ベスト100:前編(100位~51位)
2024年10月18日より、産婦人科医やっきーのオリジナルLINEスタンプを発売開始しました!!
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現在、ニュースレター『産婦人科医やっきーの全力解説』を執筆中です。
「男女の産み分けってできるの?」「逆子って直せるの?」「マーガリンは体に悪いの?」などの記事を基本無料で公開しておりますので、こちらもお楽しみください。
記事拝見しました、丁度初期のドラえもんズ世代です。
コンテンツを再開出来ない理由で、紹介されている各説以外で考えられるといえば
「○○だから○○が大好物、得意、苦手」…といった
『出身地によるキャラづくり』が現代では好ましくない、にあるかも知れません。
90年代から世界各国の特色をそのまま個性にしたキャラクターによる作品が多数展開されていました。
例えば、現代でも展開している格闘ゲームの「ストリートファイター」のキャラの一人、インド人のダルシムですが
当時のインドのイメージ、魔術染みた大道芸、東洋の神秘ヨガ、未開の部族(この辺はアフリカと混同してる感じ)などステレオタイプな、いや特に偏ったイメージのインド人そのものでした。
もちろん当時の「国際化」というのがその国の文化、料理、環境を知ることから始めるのが前提だったのもあるんですが、王ドラみたく
「中国出身だから真面目で拳法家で料理上手でチャイナ服でいいだろう。」
…ではさすがに現代では古くなってしまったのも大きいんじゃないでしょうか。
匿名さん、お読み頂きありがとうございます。
確かに、国や地域のステレオタイプが少々出過ぎている感は否めませんね。
個人的には、嫌な側面が目立つ形でなければステレオタイプによるキャラ付けも好きではあるのですが…
2020年代には合わない、と言われるとその通りかもしれません。
貴重なご意見、ありがとうございました。
ドラえもんズは日テレ版ガチヤ子はスタートしたS45年ドラえもんの初めの妹として出てくる本当の最後はS48年アニメガチヤ子登場アニメは20世紀に残るしずかちゃんの家に居候ガチャ子まんがはおかしな電波を最後当時ドラえもんは総理大臣幼稚園の先生に嫌われてたドラえもんは本屋単行本は本屋におくな図書館におくなドラえもんズは青少年図書館にThe ドラえもんズの単行本大人気で図書館管理のお姉さんの当時また見てねのローカルアニメみたいにドラズぜひ見てねが横浜青少年図書館は大人気もう21年頑張っていたH15年まで応援H16年見なくなるH17年リニューアルでドラえもんズは時代に合わないチロリン村とクルミの木人形劇と同じ放送禁止大人気中に消されたは大人のむなさんずん
はじめまして。たいへん興味深く拝読いたしました。
ひとつ気になる点がありましたのでお知らせします。
本文中の「ドラえもんズが居なくなった理由」で
>続く2022年9月発売の『ザ・ドラえもんズ スペシャル』最終12巻と、2023年1月発売の『ザ・ドラえもんズ スペシャル ロボット養成学校編』最終3巻を最後に、
とありますが、これはそれぞれ「2002年」「2003年」かと思います(初め、ごく最近まで連載されていたのか?と期待しました)。
またいつかどこかでドラえもんズの活躍を見たいものだと私も願っています。
梅吉さん、コメントありがとうございます。
………
ウオアアアアアー!!!!!!!!
こんな魂を込めたはずの記事でなんちゅうミスをやっとるんでしょう私は。
ご指摘ありがとうございました。訂正いたしました。
今後ともご愛顧のほどよろしくお願いします。
やっきー先生
細かいことでウザ絡みしてしまい申し訳ありません。そして訂正ありがとうございました。
先生のブログは近年珍しくなった「面白く読みごたえがある上に、読んでいてストレスが少ない(日本語の間違いが少ない)」良質なブログだと感動しております。これからも応援させてください。
とんでもありません、可能な限り正確な情報を掲載するのが漫画ブログとしての義務です。
ご指摘を頂けて非常に助かりました。
そして、勿体ないお言葉をありがとうございます。
引き続き精進致します。
はじめまして、本記事を読ませていただきました。ドラえもんズ関連に関しては、わさドラに消されたレベルの話が八割以上跋扈する中で劇場版や漫画連載の終了までをきちんと記載できていてここまで細かくまとめられた記事は他にないのではないでしょうか。
終了した理由、再開されない理由についての個人的な考察は記事にもあったドラえもんが目立たないというのと関連してドラえもん側にドラえもんズを本編の枠を割いてやるメリットに乏しいのではないかと考えています。
ドラえもんズばかりが目立ち本編にもたらす利益がないと判断したかもしれません。元々ゲーム編集サイドとゲーム会社の企画なので他人のキャラという意識が強いのかもしれないですね。
私としてはドラえもんズの終了は米たにヨシトモ監督が降板、三谷先生の最初の連載が終了した1999年からその道筋が開いていたと思います。
匿名さん、お褒め頂きありがとうございます。
映画の規模の縮小ペースを考えると、「ドラえもんズ」最盛期も少しずつ梯子を外していった印象はありますね。
仰る通り、その象徴が米たにヨシトモ監督の降板、三谷先生の連載終了にあることは間違いないと思います。
返信ありがとうございます。ドラえもんズの終了はファンの方々から見れば突然弾けた風船のように思われています。実際には少しずつ風船から空気が抜けて萎んでいった感じですね。
ところで三谷先生のツイッターはご覧になったことはあるでしょうか?ドラえもんズ史を語る上での重要な証言があります。気になったのはファンの方への返信でドラえもんズの復活の可能性を超大勢の方の要望があれば「万が一極小の可能性ありかも」としています。私達の見えないところで難しいところがあるかもしれません。
リニューアルに伴って存在を抹消されたのはちょっと違いますね。
リニューアルが2005年、ドラえもんズの最後の登場が2002年なのでリニューアル前に抹消されたのが正しいです。
ドラえもんズは当時H一桁映画の中のクラスメイトロボットオーディションにドラザキツドドラニコフドラニーヨはボールでジヤイビーとスネ吉からたすけるドラえもんドラメツド3世無口な笛吹男子王ドラエルマタドーラは戦う個性がそれぞれありH14年の映画最後ドラえもんズは完結編そのままコロコロからも学年雑誌掲載消えるおそ松さんがおそ松くん時代消されてしまうと同じなるなんてトホホ
初めまして、タフ考察からこのブログを知り医学的観点から見た漫画考察や漫画紹介も含めて楽しく読ませていただきました。
昔HTMLを学んでドラえもんのファンサイトを作っていたとのことですがやっきーさんはもしかしたらアヒヒパラダイスとかを知っている世代なのでしょうか?
アヒヒパラダイス懐かしい…!
丁度、そのあたりの個人サイトをよく徘徊していた世代です。
はじめまして。とても興味深く拝読させて頂きました。
ただ、気になる点がございまして…
私の記憶では藤子・F・不二雄先生「公認」なのでは無く
ゲーム開発の段階で藤子・F・不二雄先生が「監修」し、ドラえもんズが誕生したような…
ただ私の記憶違いの可能性もございますので
私の個人的な意見として受け取って下されば幸いです。
基本的に監督の先生へのリスペクト、そして意向にてドラえもんズが消えてしまったといった経緯があると知った時「先生が監修して産まれたれっきとしたドラえもん作品だったはずなのになー」と、ガッカリした記憶がありまして…
他、国際問題も理由にあったとしたならば上記より切ない話ではありますね…。
監修でも公認でも藤子・F・不二雄先生は確かにドラえもんズを知っていて、亡くなられた後で周りの勝手な意見、国際問題で無かったものにされたという事実を、もし天国があって藤子・F・不二雄先生が聞いたらそれこそさみしいのではないかと思いました。生前から御本人に前向きな気持ちがなかったとしたらもっと早く無くなっていたと思いますので…。