![やっきー](https://yacky-sanfu.com/wp-content/uploads/2022/10/a8d9df951dad0336d175feeab3774b45.png)
こんにちは!
産婦人科医やっきーです!
本日の記事は『やっきーの好きな漫画ベスト100』の後編です。
前編をまだ読んでいない方はこちらの記事を先にご覧ください。
世界一漫画が好きな産婦人科医が選ぶ、おすすめ漫画ベスト100:前編(100位~51位)
簡単におさらいしますと、本企画は以下のルールに基づいて私の独断によるおすすめ漫画ベスト100を紹介する企画となります。
・ 「完結済」、「連載中」の区別はしない。
・ 同じ作家の作品は2作までとする。
・ 全ての作家が対象。
・ 客観的な評価基準は無し。2024年11月現在の私の好みで順位を付ける。
前回の記事は前編として100位~51位を紹介しましたので、後編となる本記事では50位~1位を紹介していきます。
(本記事は2023年6月に執筆し、その後2024年11月に改訂しました)
それでは早速、ランキングを見ていきましょう!
第50位~第41位
第50位『こちら葛飾区亀有公園前派出所』秋元治…既刊201巻
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通称「こち亀」。
言わずと知れた「週刊少年ジャンプ」の顔であり、40年間休載なしで連載され続けた怪物マンガ。
東京都葛飾区の「亀有公園前派出所」を舞台として、ハチャメチャ警察官の両津勘吉を中心としたキャラクター達の周りで起こる出来事を描いたコメディポリス漫画です。
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よく「100巻までなら面白い」「寿司屋までは面白い」「大阪までは面白い」などと言われます。
確かに中期くらいまでは「ハチャメチャな警官・両津勘吉」を前面に押し出した出来事が描かれ、
擬宝珠家(寿司屋)あたりからヒューマンドラマの頻度が上昇してきたためにこのように言われることが多いのでしょう。
確かに私もそう思うのですが(個人的には70~100巻台が特に好きです)、
擬宝珠家以降もコメディ漫画として十分すぎるほど良質であり、決して馬鹿にできるものではありません。
というか100巻まで面白い時点で凄すぎる。
第49位『らんま1/2』高橋留美子…全38巻
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バトルラブコメの金字塔。個人的には天才・高橋留美子先生の最高傑作だと思っています。
主人公は水をかぶると女性になってしまう男子高校生格闘家・早乙女乱馬。
彼は許嫁である天道あかね一家のもとで居候をすることとなり、彼らの周囲で起こる様々なドタバタ騒ぎが描かれます。
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高橋留美子先生のお家芸であるラブコメに、高い漫画力で魅せるバトルアクション。
この2者がここまで高いレベルで両立できている作品は、世界広しと言えど『らんま1/2』を置いて他に存在しません。
ちなみに女らんま派とシャンプー派とウっちゃん派が存在すると思いますが、
私は熱烈なウっちゃん派です。異論は認めない。
第48位『メシ事情シリーズ』小坂俊史…既刊5巻(『新婚よそじ』全3巻・『よそじとふたご』既刊2巻)
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4コマ王子→ショート・エッセイ漫画家と華麗なる転身を遂げた小坂俊史先生による4ページ漫画。
40歳まで一人暮らしを貫いていた小坂先生が、同じく漫画家である王嶋環先生とご結婚され、
お二人の新婚生活における「メシ事情」にスポットを当てたノンフィクションエッセイです。
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その内容は、小坂先生と同じく大学入学以来10年以上だらけきった一人暮らしをした経験のある男として「ただただ共感」に尽きます。
新婚生活のギャップに戸惑う全ての男女にとって必読の書と言っても過言ではありません。
上記の『新婚よそじのメシ事情』だけでも十二分に面白いのですが、
さらにこの作品の奥行きを飛躍的に広げたのが双子のご誕生を期に改題された『よそじとふたごのメシ事情』でしょう。
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吉田戦車先生といい、重野なおき先生といい、松本ぷりっつ先生といい、
4コマ出身の先生が育児エッセイを描いた時の異常な打率の高さはなんなんだろう。
王嶋環先生による双子育児エッセイ『なんもわからん双子育児』は、より幅広い視点で不妊治療・妊娠・出産・育児について描かれており、こちらも非常におすすめです。
第47位『ブッダ』手塚治虫…全14巻(文庫全集7巻)
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ここでついに手塚治虫作品が登場です。
いわゆる「お釈迦様」「仏様」として世界的に知られる仏教の開祖・ブッダことゴータマ・シッダルタの生涯を描いたストーリーです。
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「ブッダの生涯」というと何とも堅苦しい話のように思えますが、そこは手塚治虫作品。
手塚作品特有のギャグやメタ発言が「ただ堅苦しいだけの伝記もの」から「読み応えのあるエンタメ作品」へと昇華しており、
史実に存在しない人物であるタッタやデーパ、ヤタラといった登場人物たちが物語をさらに盛り上げます。
それでいてブッダが悟りを開くまでの数々の苦難や、教団設立後の様々な困難を真正面から描き切っているのは流石ですね。
第46位『マチネとソワレ』大須賀めぐみ…既刊15巻
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狂気と憑依の演劇マンガ。
主人公の舞台役者・三ツ谷誠が役者として成長し、実兄にして「天才」の名をほしいままにする役者・三ツ谷御幸と戦う物語です。
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そもそも「演劇」を漫画で描くには、単純な画力にとどまらない高い表現力を要求されるため尋常でないほど難しく、
過去に大ヒットしたと言える演劇漫画といえばレジェンドである『ガラスの仮面』と存在が消滅した例のアレくらいしか無いのですが、
この作品はそんなハンデを補って余りあるほどに巻数が進むごとに狂気と温度が高まり続けていくのが特色です。
また、主人公の誠はスタンダードな演劇作品だけでなく、全くの無名劇団、曰くつきの演出家が作る舞台、
2.5次元の漫画原作ミュージカル、アニメの声優など、様々な演劇業を経験するため、単純な「職業もの」としても非常に秀逸な作品です。
第45位『上野さんは不器用』tugeneko…全10巻
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発明ギャグラブコメ。
とある中学校の科学部部長である少女・上野さんは、部活の後輩・田中に想いを寄せていました。
しかし上野さんは素直になれない性格であるため、その輝かしい頭脳による発明品を駆使して濾過した自分の尿を飲ませようとしたり、パンツを食べさせようとしたりという遠回しすぎる告白を行います。
いやこれ告白なのか?
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ところが田中はことごとくデリカシー皆無の反応を見せ、天然で上野さんの目論見を外してきます。
そんな上野さんによる空回りまくりのギャグラブコメです。
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また、ここまできわどい題材にも関わらず直接的な描写は皆無であり、
「脱いだパンツ」は描くが「パンチラ」は一切存在しないという謎のこだわりが光ります。
tugeneko先生によるポップな絵柄、独特な言語センスから紡ぎ出されるギャグの数々は他では味わえません。
第44位『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』和月伸宏…全28巻(完全版22巻、文庫版14巻)
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暗黒期のジャンプを支えた傑作。
かつて幕末志士の一人にして最強の人斬りとして知られた緋村剣心は、明治時代に入ると「不殺」を掲げて旅をしていました。
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明治時代初期という決して少年漫画向きではないはずの時代設定でありながら、
剣技をもって悪を成敗し人々を救うという王道をしっかり踏襲しています。
当ブログのかなり初期の頃に四星というザコキャラを取り上げたのも良い思い出。(現在非公開)
現在連載中の『北海道編』も目が離せない展開でござるよ。
第43位『君のことが大大大大大好きな100人の彼女』原作・中村力斗、作画・野澤ゆき子…既刊18巻
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令和を代表するトチ狂ったラブコメ。
恋愛の神様の凡ミスにより、主人公・恋太郎は100人の恋人を幸せにしなければならないことを運命付けられてしまいますが、
持ち前の超人的な体力と気配り・男気により現在進行形で彼女を作り続け、下は12歳から上は89歳まで全員を幸せにしている(2024年11月現在で31人)
…という、どう頑張ってあらすじを説明しても狂ってしまう作品に仕上がっています。
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常識が迷子になっている設定ではありますが、ラブコメとして秀逸なイチャイチャ描写も時折ブチ込まれ、
31人も彼女がいて一人も捨てヒロインがいない(出番は減ってもスポットはきちんと当たり続ける)ことが特色で、
それを支えるのが野澤ゆき子先生による優れたキャラクターデザインと、その人数を週刊連載で描き切ってしまう筆の速さにあります。
(延べ30人以上出てくるページもある中、下描き込みで2~4時間で描いてしまう模様。参考:マンダンラジオ2P)
フォーマット自体はラブコメですが、本質的には彼女同士の友情を楽しむ作品になっているのも仕掛けとして面白いですね。
なお、この作品に登場する6人目の彼女・花園羽々里の妊娠・出産についてムダに頑張って考察した記事もありますのでこちらもどうぞ。
13歳で人工授精・出産した『100カノ』花園羽々里について不妊治療の専門家と考察してみた
第42位『ACMA:GAME』原作・メーブ、作画・恵広史…全22巻
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隠れた名作頭脳バトル漫画。
主人公の織田照朝は、現役高校生でありながら父が築いた一大財閥「織田グループ」の会長を務めていました。
そんな中、イタリアンマフィアの少年マルコ・ベルモンドが突然襲撃を仕掛けてきます。
そして彼は「悪魔の鍵」を取り出して織田に勝負を持ち掛け、ゲームの勝者が要求するものを何でも奪うことができる「悪魔のゲーム」を始めます。
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「悪魔のゲーム」の内容は毎回異なり、1対1の頭脳戦や、チーム同士での戦略バトル、中には身体を使ったスポーツに近い戦いまで多岐にわたります。
本作の見どころは「悪魔のゲーム」の高い完成度、「悪魔の鍵」の力で世界を支配しようとする組織との戦い、
昨日の敵が今日の友になっていく王道的な展開、シリアスな物語にも関わらず突然ぶち込まれるギャグパートのクオリティの高さにあります。
(アンケートが振るわなかったため)連載は打ち切りだったようですが、終わり方は打ち切りとは思えない程すっきりしており、読後感も良好です。
熱い頭脳戦を楽しみたい方には是非お勧めしたい名作ですね。
第41位『よんこまのこ』重野なおき…全6巻
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現役4コマ漫画家における頂点のひとり・重野なおき先生による育児コミックエッセイの最高傑作。
奥様は同じく4コマ漫画家の藤島じゅん先生で、長男・るい、長女・あいとの4人家族の日常が描かれます。「4」多いな。
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『よんこまのこ』は日常のネタの拾い方や表現力が抜群に上手く、他の育児エッセイ漫画とは一線を画します。
育児漫画雑誌『すくすくパラダイス』の黎明期から連載されていましたが、松本ぷりっつ先生・佐藤両々先生・重野なおき先生の存在感は飛び抜けていました。
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また、雑誌連載時はモノクロでしたが単行本化にあたってオールカラーになっているという豪華ぶり。
妊娠中や乳幼児の育児をされている親御さんにとっても肩の力を抜いて読める育児漫画の大傑作ですので、重野作品の中では知名度こそ低いものの絶対に読んでほしい作品の一つと自信を持ってお勧めできます。
第40位~第31位
第40位『ソウナンですか?』原作・岡本健太郎、作画・さがら梨々…全10巻
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JK遭難サバイバル漫画。
高校の修学旅行中に発生した飛行機事故により無人島に遭難してしまった4人の女子高生たちでしたが、
卓越したサバイバル能力を持つ鬼島ほまれの主導により無人島での共同生活が始まります。
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とにかく容赦のないサバイバル描写と、それに反してリアルに寄りすぎない適度なフィクション要素のバランスが絶妙で、真剣だが深刻さを感じさせない作りになっています。
全10巻とほどよく読みやすい長さなのも大事なポイントですね。
そしてこの作品に出てくる肛門から水分を摂取するシーンについてどこよりも深く掘り下げた記事を書いたので(肛門だけに)、こちらも併せてお読みください。
第39位『スピーシーズドメイン』野呂俊介…全12巻
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学園ファンタジーラブコメの頂点。
通常の人間と、エルフ・ドワーフ・鬼・人魚など異世界の種族の血を引く「亜人種」が存在する世界が舞台となります。
主人公は高校1年生の容姿端麗なエルフ・風森弦子。
彼女が科学マニアで発明好きの同級生・大機発彦と出会ったことから物語が動き始めます。
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この漫画の魅力といえば、大機のとんでもない発明や亜人種という非現実的なものが存在する世界でありながら、
それらを上手く取り込みつつごく普通の高校生たちの日常会話を上手く切り取るセンス。
野呂俊介先生はこの会話劇が抜群で、質の高いトーク番組を観ているかのような感覚に陥ること必至です。
第38位『ブラック・ジャック』手塚治虫…全25巻(全集22巻、秋田文庫版17巻、その他媒体多数)
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医療漫画の原点にして頂点。
この作品を当ブログで取り上げた回数は、スピンオフ含め6回。好きすぎるだろ。
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今回の記事のルール(同一作者による作品は2作まで選出可)において手塚治虫作品の中からは『ブッダ』と『ブラック・ジャック』を選出したわけですが、個人的にはメチャクチャ心苦しい選択でした。
それこそ「ただの漫画オタクが手塚治虫作品を品評しようなんて おこがましいとは思わんかね…」と自問自答したものです。
もちろん『三つ目がとおる』も『火の鳥』も『ジャングル大帝』も『MW』も『アドルフに告ぐ』も(以下略)好きです。
そんな中でも『ブッダ』と『ブラック・ジャック』を選出した理由としては、私自身が特に好きなことと、漫画を読み慣れていない方にとっても特に読みやすいことが大きいですね。
一応、妊婦さんの読者の多いブログですので『きりひと讃歌』『奇子』あたりをお勧めするのは厳しいものがあります。
漫画の歴史を変え、手塚治虫を復活させたこの名作。
未読の方には是非読んで頂きたいと思います。
当ブログでの紹介記事はこちらからどうぞ。
『ブラック・ジャック』より常位胎盤早期剥離と緊急帝王切開について解説する
【閲覧注意】『ブラック・ジャック』幻の未収録作品「快楽の座」を解説する
ブラック・ジャックが唯一愛した女性、如月めぐみと子宮癌について考える
如月めぐみの子宮頸がんの新解釈『ヤング ブラック・ジャック』を解説する
実写ドラマ『ブラック・ジャック(2024年・高橋一生版)』を観た感想
第37位『フラワー・オブ・ライフ』よしながふみ…全4巻(文庫版3巻)
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青春群像劇の最高峰。
ストーリーテラー・よしながふみ先生が描く名作です。
主人公の花園春太郎は1年1か月遅れで高校に入学します。
その理由は白血病で、懸命な闘病と姉からの骨髄移植により克服しました。
彼の特技は闘病中に暇つぶしに行っていたイラストで、クラスメイトで漫画好きの三国翔太・真島海らと共に漫画研究会に所属することになります。
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漫研に入ったことで漫画家を目指すことを決めた春太郎や、
キャラクターの立ったクラスメイトと教師、春太郎の家族たち。
彼らは皆それぞれに夢と悩みを持つ等身大の人間で、彼らが成長していく様子が描かれます。
そして最終巻を読んだ時、誰もが心を動かされるはず。
余談ですが、私は某オタクショップで女性の皆様がたむろするフロアに単独乗り込み、
「大沢家政婦協会(よしながふみ先生の別名義)の同人誌探してるんですけど!!!!!」と店員さんに聞き、
橘と小野と千影が濃密に絡んでいる本を買って帰る程度にはよしながふみ先生の大ファンです。
ちなみにウィングス・コミックス版から文庫版として出版されるにあたり、描き下ろしエピソードが1つ追加されているので文庫版がおすすめです。(同様に『西洋骨董洋菓子店』も文庫版に描き下ろしがあります)
第36位『レベルE』冨樫義博…全3巻(文庫版2巻)
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天才・冨樫義博先生によるSFオムニバス。
宇宙から日本の山形県にやってきたドグラ星の王子は、宇宙一と評されるその頭脳を嫌がらせのために駆使する悪魔のような男です。
『レベルE』では、そんなバカ王子の身の周りで起きる様々な事件(7割くらいは王子のせい)が描かれます。
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1~4話程度で構成されるオムニバスからなる漫画で、それぞれのストーリーは極めて緻密に構成されています。
話の展開は非常に濃密で読むのに時間がかかりますが、シュールなギャグも織り込まれた極めて完成度の高い作品で「冨樫義博の最高傑作」と称されることもしばしばです。
この作品に登場するミキヒサについて解説していますので、そちらの記事も併せてどうぞ。
『レベルE』ミキヒサの性分化疾患について産婦人科医学的に考察する
第35位『ドリフターズ』平野耕太…既刊7巻
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アクション系歴史ファンタジー作品。
主人公の島津豊久は関ヶ原の戦いにおける「島津の退き口」の最中、突如として見知らぬ空間へ召喚されます。
流れ着いた先に居たのは、関ヶ原の戦いから18年前に死んだはずの織田信長、そして400年前の人物であるはずの那須与一でした。
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この異世界において、島津豊久や織田信長のように歴史上で生死不明のまま行方不明となった英雄・有名人たちは「漂流者」として召喚されています。
そして非業の死を遂げた人物たちは「廃棄物」として召喚され、人間に対する強い憎しみを持ち、黒王の指揮のもとに人間を滅ぼそうとします。
彼らがエルフやドワーフ達の存在する異世界でどのように立ち回り、戦うのか。
織田信長と明智光秀、那須与一と源義経、サン・ジェルマンとラスプーチンなど、こちらの世界でも因縁があった(と思われる)関係性にスポットが当たる展開もあり、歴史好きとしても目が離せない作品です。
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この漫画の欠点はめちゃくちゃ面白いのに平野耕太先生の筆の遅さと度重なる休載のために15年で7冊しか単行本が出ていないこと。
そして雑誌連載のペースから考えるとこの速度はさらに鈍化していく見通しです。早く続き読みたい。
第34位『かぐや様は告らせたい〜天才たちの恋愛頭脳戦〜』赤坂アカ…全28巻
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ラブコメギャグの最高傑作。
舞台は超名門校の秀知院学園高等部で、主人公は生徒会長・白銀御行、ヒロインは副会長・四宮かぐや。
二人は相思相愛にも関わらず、プライドの高さから互いに告白することができないため、
優秀な頭脳を相手の側から告白させるべく様々な策謀を巡らせることに費やすというバカバカしくも熾烈な「恋愛頭脳戦」が描かれます。
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それまで知る人ぞ知る漫画家だった赤坂アカ先生をスターダムへのし上げ、
『ゴールデンカムイ』と共に2010年代ヤングジャンプの地位向上に一役を買った漫画です。
ちなみに回が進むごとに二人のポンコツな部分が露呈していくため「天才たちの恋愛頭脳戦」要素は早々に消し飛ぶことになります。
ヤンジャンの鬼門と言われたアニメ化を見事に成功させたばかりか、2回にわたり実写映画化もされるなどメディアミックスとの相性も良く、
ふだん漫画を読まない層からの知名度も非常に高い名作ですね。
田沼正造先生に関する考察はこちらからお読み頂けます。
『かぐや様は告らせたい』田沼正造はいかにして四宮家のお抱え医師になったのか?
第33位『ナナマルサンバツ』杉基イクラ…全20巻
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いわゆる「高校生クイズ」などに代表される、クイズにより勝敗を競う「競技クイズ」を題材としたスポーツ漫画。
主人公は読書以外にこれといった趣味も取り柄もない高校1年生・越山識。
彼の運命を変えたのは、1学年上の先輩である超ド級のクイズマニア・笹島学人でした。
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運動神経にも体格にも自信の無い越山ですが、純粋な知識量と応用力が求められる競技クイズの世界に興味を抱き、
ヒロイン・深見真理や、社交性がありサブカルに明るい同級生・井上大将らと共に競技クイズの全国大会「SQUARE」出場を目指します。
この漫画は(おそらく)現時点で唯一の競技クイズ漫画でありながら、後追いがほとんど不可能と思えるほどにキャラクターもストーリーも完成されているという恐ろしい作品です。
最初から最後まで一切の隙が無く、ただひたすら面白くあり続けました。
あと深見さんがかわいい。
第32位『おれは直角』小山ゆう…全14巻(新装版6巻)
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時代劇コメディの金字塔。
主人公は長州藩士の中でも最下級の家柄の一人息子・石垣直角。
彼は幼少期に父から受けた「武士は決して曲がったことをしてはならない」「もし曲がることがあっても直角で曲がるくらいの心構えを持つべし」と言う教えを真正面から受け止め、
身の回りのあらゆる物の形を直角に整え、自分自身の動きもことごとく直角にするという癖を持っていました。
![](https://yacky-sanfu.com/wp-content/uploads/2023/05/image-104.png)
その性質とあまりにも真っすぐな性格が逆に災いし、名門校・萩明倫館きってのトラブルメーカーとなります。
とはいえ単なる厄介者というわけではなく、直角は武芸において右に出る者がいないほどの才能を有しており、
剣の軌道を直角に曲げる変幻自在の必殺技「直角斬り」を駆使して名を揚げます。
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時代劇漫画家の頂点とも呼ぶべき大ベテラン・小山ゆう先生のデビュー作で、
後の作品でも遺憾なく発揮される「絵が動いている」と言えるほどのアクションシーンの圧倒的な上手さは『おれは直角』で既に確立されています。
巧みに挟まれるギャグ描写も優れていますし、全編を通して「友情」を大きなテーマとした展開の熱さも魅力的です。
50年近く前の漫画ではありますが、いつ読んでも新鮮な気持ちで読める名作ですね。
第31位『プラネテス』幸村誠…全4巻
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言わずと知れた、名作宇宙SF漫画。
舞台は2070年代。宇宙開発の進行と共に、人々は月や火星にまで資源探索の手を広げ始めていました。
そんな中で社会問題となっているのが、地球の衛星軌道上に溢れるスペースデブリ(宇宙ゴミ)。
秒速8キロ近い速度で飛翔するそれらは宇宙旅行や宇宙開発にとって大きな障害のひとつであり、主人公の星野八郎太らはスペースデブリの回収を生業としています。
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八郎太はいつか自分用の宇宙船を持つことを夢見て、終わりのないスペースデブリ回収業に勤しみますが、
そんな彼に襲い掛かる様々な苦悩や困難、遠大な夢との向き合い方など、等身大の青年の姿が描かれます。
近未来の宇宙空間という想像しにくい題材ながら、そこに登場人物が居るかのようなリアリティのある描写、
「人生」「夢」「愛」といった重いテーマが八郎太を通すことで非常に取っつきやすいものになるバランス感覚は見事です。
全4巻と短いながら多くのファンを魅了してやまない、まさに不朽の名作と呼ぶに相応しいでしょう。
第30位~第21位
第30位『ONE PIECE』尾田栄一郎…既刊110巻
![](https://yacky-sanfu.com/wp-content/uploads/2023/06/image-268.png)
説明不要の超大作。
海賊王を目指す少年、モンキー・D・ルフィを主人公とした「ひとつなぎの大秘宝」をめぐる海洋冒険ロマンです。
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ジャンプのテーマでもある「友情・努力・勝利」を丁寧に描きつつギャグの質も高く、
度肝を抜く展開、丁寧な伏線、壮大かつ緻密な世界観は王道にして革新的で、まさに「最高の少年漫画」と呼ぶに相応しい作品でしょう。
初めて読んだ当時、子供心ながら「1話目からオーラが違い過ぎる」と感じたものです。
欠点は2024年11月現在で既刊110巻という尋常ではない長さですが、
尾田先生いわく「軽い気持ちで王下七武海を思いついちゃった」ことが話が長くなった最大の原因だそうです。(商業的理由もあると思いますが)
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とはいえ、ようやくワノ国編も終わって物語はクライマックスに突入しています。
途中で読むのを止めた人も多いと思いますが、『ONE PIECE公式漫画アプリ』でほぼ全編無料で読めますので今が再開するのにお勧めのタイミングです。
そういえば、そもそもこのブログの1つ目の記事からして『ONE PIECE』に関する考察でした。
『ONE PIECE』ポートガス・D・エースの出生を産婦人科医学的に考察する
第29位『山田太郎ものがたり』森永あい…全15巻
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夭逝した天才女性作家・森永あい先生の最高傑作。
主人公の山田太郎は成績優秀、眉目秀麗、スポーツ万能、人柄にも優れ、
女子生徒たちの憧れを一身に集める学園のヒーローですが、
凄まじい程の極貧生活を送っているという唯一にして最大の欠点を持ちます。
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その佇まいの王子様ぶりに、学園の皆は太郎のことを大金持ちのお坊ちゃんだと思い込んでいるわけですが、
実際には太郎のアルバイトが家計のほぼ唯一の収入源であり非常食用に犬を飼っているという貧困生活を送っています。
完璧超人ながら思考は超庶民派という愛すべきキャラクター・山田太郎、
そして彼を取り巻く個性的な友人や家族たちが織りなす名作コメディ、それが『山田太郎ものがたり』です。
いつ読んでも楽しめる大傑作ですね。
ちなみに当ブログの最初期に『山田太郎ものがたり』の考察記事を書いています。
『山田太郎ものがたり』山田綾子の三つ子の出産について産婦人科医学的に考察する
第28位『天 天和通りの快男児』福本伸行…全18巻(新装版13巻)
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世界一の麻雀劇画。
個人的に『カイジ』『アカギ』とめちゃくちゃ悩みましたが、あちらは途中からのグダりっぷりを加味して『天』をランクインさせて頂きました。
主人公は凄まじい麻雀の腕前と、決して勝負を諦めない粘り強さを兼ね備えた麻雀打ちの天貴史。
もう一人の主人公が、コンピューターのような理詰めの麻雀を得意とする青年・井川ひろゆき。
物語はそんな天とひろゆきが出会ったことから始まります。
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この作品を名作たらしめている要因は大きく分けて2つ、「緻密な闘牌劇」と「魅力的なキャラクター」にあります。
他のどの作品でも味わえない、ロジカルながら大胆、繊細ながら熱量の高い頭脳戦は、
この漫画を読むためだけに麻雀を覚える価値があると言えるほどの魅力を誇っています。
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キャラクターの魅力度も高く、作中に登場した天才雀士・赤木しげるは彼単独のスピンオフ『アカギ』を作るほど(というか一般的には『アカギ』の方が有名)ですし、
それ以降も『HERO -逆境の闘牌-』『闇麻のマミヤ』『老境博徒伝SOGA』など多数の派生作品が生まれるきっかけとなりました。
最終章の葬式編は麻雀漫画なのに一切麻雀をしないという異色の展開ながら、その熱い展開が語り草となっています。
第27位『もやしもん』石川雅之…全13巻
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作者・石川雅之先生いわく「農大で菌とウイルスとすこしばかりの人間が右往左往する物語」。
主人公の沢木惣右衛門直保は、菌・ウイルスといった微生物を肉眼で視認しコミュニケーションをとれるという特殊能力を持ちます。
そんな沢木は実家のもやし屋(種麹屋)の祖父の紹介で、日本の微生物研究の権威・樹慶蔵が教授を務める「某農業大学」に入学しました。
『もやしもん』は、沢木が菌が見える能力を使ったり使わなかったりしつつ農大で生活していくゆるグダ青春漫画です。
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「肉眼で菌を視認できてコミュニケーションがとれる」という能力は深く考えるまでもなくヤバすぎる能力ですが、
基本的にゆるグダな物語なので、その能力が遺憾なく発揮される…とはなりません。
しかしながら作中に登場する菌たち(厳密にはウイルスは菌ではない)は可愛らしくデフォルメされており、非常に親しみやすく描かれています。
そもそも菌は食品の発酵や腐敗、感染症といった形で人間生活に多様な影響を与えますので、勉強にもなる上に面白いという非の打ちどころのなさです。
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ちなみに登場人物の一人・美里薫(20歳くらい)は作者の趣味で漫才コンビ「笑い飯」の西田幸治さんの見た目をそのまま流用したキャラクターとして描かれたのですが、
実写化に際しモデルとなった西田さんご本人(放送当時36歳)が演じたため当時の視聴者はざわつきました。
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第26位『銀の匙 Silver Spoon』荒川弘…全15巻
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学園青春バラエティの大傑作。
とある理由で大蝦夷農業高校に入学した一般家庭出身の優等生・八軒勇吾が、
初めて触れる農業に悪戦苦闘しつつ成長していく様を描いた農業高校青春漫画です。
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大自然・生命と向き合う農業高校生活の中でも飯テロあり、青春あり、ギャグありと、「農業高校」という設定を遺憾なく発揮しています。
農業高校出身・元農家の荒川弘先生ならではの視点で、生徒たちの等身大な学園生活が描かれます。
荒川先生の前作は正統派ファンタジーの『鋼の錬金術師』でしたが、その連載終了直後に描かれた本作がリアル路線の学園漫画だったという事実は当時のファンに衝撃を与えました。
第25位『3月のライオン』羽海野チカ…既刊18巻
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将棋漫画の最高峰。
将棋漫画というジャンルは地味に人気で、過去には両手でも足りないくらいの作品が発表されてきましたが、その中でも最高と言える作品が『3月のライオン』です。
というより、ボードゲームが題材のヒューマンドラマというくくりの中でも『ヒカルの碁』とツートップを争うでしょう。
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主人公の桐山零は、史上5人目となる中学生でプロ入りした棋士です。
傍から見れば天才少年以外の何者でもないわけですが、彼が将棋にひたすら没頭した理由は幼少期に家族を事故で亡くした故でした。
元々内向的でナイーブな桐山は、家族の事故や義理の家族と反りが合わなかったことでさらに繊細な性格になりましたが、
彼を支えてくれる川本家3姉妹や元担任の林田先生、心友の二階堂、A級棋士の島田といった面々のおかげで棋士として、人間として成長していきます。
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桐山の実績と成績は文句なく超天才のレベルであり(連載開始から10年ほど経ってリアル世界にとんでもない棋士が登場したのはさておき)、
繊細な性格に反して将棋に関してだけはエゴイスティックな彼ですが、
年齢相応に苦悩し、壁にぶつかり、将棋以外の問題にも全力で取り組む姿は実に熱いですね。
あとは何といってもオッサンたちの格好よさ。
島田さんみたいな30代後半に私もなりたい。
第24位『ベルセルク』三浦建太郎…既刊42巻
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日本漫画界が誇るダークファンタジーの最高傑作。
主人公のガッツは右目と左腕を失った全身傷だらけの巨体の剣士で、その凄まじい強さと黒ずくめの風貌から『黒い剣士』と呼ばれていました。
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ガッツはその巨躯を超えるほどの大剣「ドラゴン殺し」を武器に、「使徒」と呼ばれる化け物たちを狩る旅をしていました。
何が彼を駆り立てているのか、彼の目的とは…といった王道のファンタジー要素を踏まえつつ、
壮大かつ繊細なストーリー、18巻くらいから飛躍的に向上する画力が魅力です。
というか描き込みが緻密すぎて漫画を読んでるのか画集を鑑賞してるのか分からない事態に陥ること請け合い。
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一時期のヤングアニマルの巻末コメントでは作者・三浦建太郎先生の凄まじいまでの働きぶりが吐露されており、
三浦先生の健康や、物語の完結を危惧する声も多く見られました。
その懸念は最悪の形で実現し、2021年5月6日に三浦先生が他界したことが発表されました。
そのまま未完となるかと思われていましたが、故・三浦先生の友人であり『ベルセルク』の今後のストーリーを全て聞かされていた唯一の人間である漫画家・森恒二先生の監修を受け、
三浦先生のアシスタント業務を行っていたスタジオ我画の作画により2022年6月24日より『ベルセルク』が連載再開されました。
物語は佳境であり、まだまだ解決していない問題や倒すべき敵が多くいる現状。今後のストーリーは必見ですね。
第23位『ヒカルの碁』原作・ほったゆみ、作画・小畑健…全23巻(完全版20巻、文庫版12巻)
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囲碁マンガの最高傑作。
ごく普通の小学生・進藤ヒカルは、ある出来事をきっかけに平安時代の天才棋士・藤原佐為の霊に憑り付かれます。
最初は囲碁に興味の無かったヒカルでしたが、ライバル・塔矢アキラや友人達との切磋琢磨を経て囲碁の世界に魅せられ、成長していく様が描かれます。
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少年漫画としては異色すぎる囲碁を題材とした漫画ですが、
小畑健先生による繊細な作画、登場人物たちの心情をうまく捉えた壮絶な対局、緻密で熱いストーリーで圧倒的な人気を博しました。
その影響力たるや『ヒカルの碁』をきっかけにプロ棋士になった人がいるほど。
もっさりしたモブ顔だったはずの伊角さんが超絶イケメンになったり、
頼りない雰囲気だった緒方さんがイケメンを超えてヤ〇ザの若頭になったり、
初登場時から可愛かった奈瀬が絶世の美女になったりと、
小畑健先生の画力が飛躍的に伸びた時期だったこともあり作画の変化も楽しめる一作となっています。
第22位『今際の国のアリス』麻生羽呂…全18巻
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デスゲーム作品の頂点。
登場人物が死を伴うゲームに参加させられるという「デスゲーム」系の作品は、
複雑な人間関係や社会のルールなどの要素を一切排除し、容易にスリリングな展開を用意できて主人公への没入感を高められるため古くから人気のあるジャンルです。
しかしその反面、「デスゲームが開催されている理由」や「最後まで勝ち進んだ主人公の処遇」といったあたりをぶん投げた終わり方になることが多く、作者の技量次第ではツッコミどころ満載のゲームになっていたりすることも珍しくないため、
個人的にデスゲームはそんなに好きではありません。
そんな私が、これだけは別格だと自信をもってお勧めできる作品が『今際の国のアリス』です。
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勉強もスポーツも不得意な落ちこぼれの少年・主人公の有栖良平はある日突然、謎の世界「今際の国」に迷い込みます。
アリスらが元々居た東京23区を模した今際の国では、夜な夜な命を賭けた凄惨な「げぇむ」が開催されていました。
この「げぇむ」に生き残れば「げぇむくりあ」。
生き残ることができなければ「げぇむおおばぁ」、すなわち死を意味します。
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『今際の国のアリス』が他のデスゲームと一線を画す理由は、
単なる頭脳戦や心理戦・体力勝負になりがちだった従来のデスゲームものと異なる「げぇむ」への斬新なアプローチ、
そして何より陰惨な「げぇむ」の描写とそれに対抗するアリス達の生命への渇望が実にバランス良く描かれていることにあります。
前述したデスゲームにありがちな欠点・投げっぱなしで終わっていないのも大事なポイント。
物語のオチはしっかりと用意されています。
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本作は2016年に連載終了しましたが、その後もじわじわと人気を広げ、2020年にはNetflixで実写ドラマ化されました。
また、ランクインを逃したもののスピンオフ作品の『今際の路のアリス』も非常に読み応えのある名作です。クキィ!!!
第21位『JIN-仁-』村上もとか…全20巻(文庫版13巻)
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最高の医療漫画。
『ブラック・ジャック』か『JIN-仁-』か、それとも他の漫画か、という議論は尽きないと思いますが、
私は『JIN-仁-』こそが最高の医療漫画だと考えています。
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『JIN-仁-』の主人公は、西暦2000年の現代で脳外科医として活躍する医師・南方仁。
彼はふとした騒動に巻き込まれ、西暦1862年の江戸時代にタイムスリップしました。
江戸時代の人間にとって1世紀以上未来の医学を操る南方仁は誰も見たこともないほどの名医であり、人々は彼を必要とし、そして彼もまた人々を助けるべくその頭脳と医術を振るいます。
医療マンガとしても歴史マンガとしても類を見ないほどに良質な、まさしく名作中の名作と言えるでしょう。
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過去に『JIN-仁-』を題材とした記事も書いていますので、よろしければそちらもどうぞ。
第20位~第11位
第20位『ハコヅメ』泰三子…既刊23巻+番外編1巻
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警察官マンガの大傑作。
1976年以降の約40年間、日本において警察官コメディ漫画といえば『こち亀』であり、『こち亀』を超える漫画は存在しませんでした。
そんな状況を劇的に塗り替えた作品が『ハコヅメ』です。
身近な仕事に焦点を当てた、いわゆる「職業もの」ジャンルの中でも最高峰と言える作品でしょう。
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主人公は新人女性警察官・川合麻依。
想像を遥かに超える激務や、違反者・一般市民たちから浴びせられる罵声に耐えかねていた頃、彼女のもとに新たな指導員として配属されたのが藤聖子巡査部長でした。
『ハコヅメ』では、そんな川合が様々な事件にぶつかり、異様にキャラの濃い先輩達からの指導を得て少しずつ成長していく姿が描かれます。
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ちなみに作者の泰三子先生は警察官として10年間勤務されていましたが、
雑誌に投稿した漫画が好評だったので、連載漫画家になるために突然警察官を退職したという凄まじい胆力の持ち主。
漫画もあまり読んだことはなかったそうですが、それを全く感じさせないほど緻密に構成されたストーリー、散りばめられた伏線、会話劇のセンスは天才と呼ぶほかありません。
当ブログでの考察記事はこちらからどうぞ。
第19位『下弦の月』矢沢あい…全3巻(文庫版・愛蔵版2巻)
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少女漫画ミステリーの最高傑作。
『NANA』『天使なんかじゃない』『ご近所物語』など、少女漫画界のヒットメーカーとして有名な矢沢あい先生が「りぼん」で最後に描かれた作品です。
小学5年生の白石蛍は事故に遭い意識を失い、夢の中で謎の女性に会いました。
昏睡から醒め、やがて退院した蛍ですが、近所の古びた洋館の中で夢の中の女性と再会を果たします。
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しかし、その女性の姿は蛍にしか見えず、声も聞くことができない、いわゆる幽霊でした。
この女性の幽霊には元々の記憶が無く、覚えているのはギタリストの恋人・アダムのことだけ。
蛍は親友の香山沙絵と、同級生の三浦正輝、杉崎哲との4人で幽霊を成仏させる方法を探すことになります。
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果たしてこの女性の幽霊の正体は誰なのか、
恋人の「アダム」とは何者なのか、といったミステリーが軸となって物語が展開されます。
「りぼん」に連載されていただけあって子供が読んでも分かりやすく、しかも大人が読んでも読み応え抜群。
次第に明かされていく謎、怒涛の展開、様々な恋愛模様がわずか16話の中にこれでもかと凝縮されており、
老若男女を問わず楽しめる最高の少女漫画と言えるでしょう。
ちなみに幽霊が出てきますがホラー作品ではないため、ホラーが苦手な方も安心してお読み頂けます。
第18位『ヴィンランド・サガ』幸村誠…既刊28巻
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神作品。
中世ヨーロッパ時代に各地を荒らし回った恐怖の存在「ヴァイキング」、すなわち「海賊」にスポットを当てた漫画です。
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舞台は11世紀のヨーロッパ、主人公はアイスランド出身の少年・トルフィン。
かつて実在した商人で探検家のソルフィン・カルルセヴニ・ソルザルソンがモデルです。
『ヴィンランド・サガ』ではそんなトルフィンの人生がメチャクチャ脚色して描かれているわけですが、
バトルものとしても比類なき良作品でありながら、物語の芯にあるのは壮大な冒険譚と人間賛歌。
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あまりこのランキングの上位に現在連載中の作品を入れるのは憚られるのですが(今後の展開によって順位が変動しうるので)、
そんなもんどうでもいい、私はこの作品が好きだと言わざるを得ない。ただただ面白い作品です。
8巻のオビ(超ド級のネタバレが書いてあった)を作った奴は一生恨むけどね。
この作品に関する考察はこちらからどうぞ。
『ヴィンランド・サガ』アルネイズの死亡について医学的に考える
第17位『吼えろペン』島本和彦…全25巻(燃えよペン:全1巻、吼えろペン:全13巻、新吼えろペン:全11巻)
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漫画家漫画の最高傑作!!!
日本一の熱血ギャグ漫画家・島本和彦先生による熱すぎる漫画である!
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主人公は漫画家の炎尾 燃!!
島本和彦節全開の「熱血」と「ギャグ」をきわめて高純度で内包しつつ、漫画家の生活が非常にリアルに描かれており、
『バクマン。』を始めとした「漫画家を主人公とした漫画」のジャンルを確立した作品だ!!!
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これを読めば、ひとしきり笑ったのちに謎のやる気とエネルギーに満ち溢れてくること間違いなし!!
思わずこんな風に紹介文を赤文字+太字で書きたくなってしまうほどである!!!
第16位『あずまんが大王』あずまきよひこ…全4巻(新装版3巻)
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日本の漫画史を変えた4コマ漫画。
女子高校生6人と教師2人を中心とした学園4コマギャグ漫画で、可愛らしいキャラクターによる日常を描く、いわゆる「萌え4コマ」の先駆けとなった作品です。
…というより、『あずまんが大王』にインスパイアされたと思わしき作品が一時期、雨後のタケノコのごとく乱立しました。
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内容は言ってしまえば単なる女子高生たちの日常に過ぎないのですが、
ひとたび読み始めるとあずまきよひこ先生のセンスが遺憾なく発揮された会話劇とキャラクター造形にハマってしまうことは確実です。
それでいて3年間の連載期間で高校3年間をきれいに描き切っており、スパッと連載を終了してしまった潔さは特筆に値します。
というか潔すぎて読み終わった瞬間の喪失感は甚大です。
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描き下ろしの新作や加筆修正が行われた新装版もいとをかしですが、
個人的にはメディアワークス版(旧版)の雰囲気の方が好き。
第15位『こどものおもちゃ』小花美穂…全10巻(完全版・文庫版7巻)
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最高の少女漫画。
『こどものおもちゃ』と『下弦の月』を読まずして少女漫画を語ることなかれ。(個人の感想です)
主人公は小学6年生の女子・倉田紗南。彼女は売れっ子の子役タレントとしての顔を持っていました。
そんな彼女の悩みの種が、クラスメイトの男子・羽山秋人。クラスの男子を扇動し学級崩壊の限りを尽くしていました。
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紗南と秋人はお互いに喧嘩しながらも腐れ縁となりますが、
学級崩壊、家庭崩壊、芸能界の闇、捨て子、精神疾患などといった様々な問題が2人の前に立ち塞がります。
それでいてコミカルな描写もふんだんに盛り込まれておりテーマの重さを感じさせません。
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ストーリー、キャラ造形、ギャグセンス、会話のテンポ、絵の表現力など、
どの角度から見ても最高の完成度を誇る作品です。
個人的には小~中学生の時に読んでおくべき漫画ナンバーワンだと思っています。
この作品に関する考察はこちらからどうぞ。
『こどものおもちゃ』倉田紗南、『コウノドリ』矢野夏希から、未受診妊婦について解説する
第14位『大奥』よしながふみ…全19巻
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SF時代劇の超大作。
「疫病により男子が著しく少なくなり、女性が将軍を務め、大奥は男性だけの空間になった」
という斬新な設定を下地に、女性達が主導する幕府政治の姿が描かれます。
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「鎖国は日本に男性が極端に少ないことを悟られないようにするため」など、
史実を巧みに織り交ぜることで、この斬新な設定にむしろ説得力が増しています。
この仕掛けによって「話の大筋を既に知っている」という歴史ものの弱点を補完することに成功しており、
「何が起こるか知っているが、何が起こるか分からない」という緊迫感のあるストーリーが展開されます。
また、よしながふみ作品には欠かせない美味そうな食事とメガネキャラと男色も当然のように完備しています。
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「赤穂事件」「江島生島事件」といった史実の重大事件だけでなく江戸庶民の暮らしもほどよく織り交ぜて描かれているため、読んでいて教養も付くという非の打ちどころのなさです。
この作品に関する考察はこちらからどうぞ。
第13位『DEATH NOTE』原作・大場つぐみ、作画・小畑健…全12巻+番外編1巻(文庫版7巻)
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推理サスペンスバトル漫画の頂点。
2000年代のジャンプを象徴する漫画のひとつであり、社会現象にもなった圧倒的な面白さは未だ薄れることがありません。
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![](https://yacky-sanfu.com/wp-content/uploads/2023/06/image-134.png)
「このノートに名前を書かれた人間は死ぬ」というホラー作品にありがちなアイテム「デスノート」を使って繰り広げられるのはまさかのサスペンスバトル。
主人公・夜神月は成績優秀、スポーツ万能、眉目秀麗でモテモテという完璧な人間でしたが、それ故に刺激が無く退屈な日々を過ごしていました。
そんな月が偶然デスノートを拾ったことで、世界中の犯罪者たちをデスノートにより抹殺していくことを決意します。
やがて世界中の人々が「誰かが犯罪者を殺している」ということに気付き始め、世界一の名探偵「L」がこの事件の捜査に乗り出します。
お互いに顔も名前も知らない二人ですが、月はLを抹殺すべく、Lは月の正体を暴くべく動き出しました。
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緻密で熱い頭脳戦、脂が乗り切った時期の小畑健先生による繊細な描写、よく考えるとツッコミどころの多い展開や顔芸など様々な面でファンを獲得し、絶大な人気を誇りました。
あまりの人気ぶりにか、少年サンデーを読んでたらデスノートそっくりな催眠術漫画が載ってて「あれれ~おかしいぞ~?」と思ったものです。
当ブログのデスノート考察記事はこちら。
デスノートに名前を書かれた時の対処法について本気で考えてみた
第12位『Dr.STONE』原作・稲垣理一郎、作画・Boichi…全27巻+番外編1巻
![](https://yacky-sanfu.com/wp-content/uploads/2023/07/image-168.png)
最高の科学冒険譚。
突然発生した謎の光によって全人類が石化し、3700年経過して文明が完全に滅んだ頃に主人公・石神千空と相棒の大木大樹が石化から目覚めます。
![](https://yacky-sanfu.com/wp-content/uploads/2023/11/image-15.png)
常軌を逸した科学力を持つ頭脳担当の千空と、尋常ではない体力・筋力を持つ労働力担当の大樹のペアにより、石の世界で少しずつ文明が作られていきます。
文明が崩壊した世界でどのように文明を再興させるのか?科学をどう活用するのか?
果たして石化光線の正体とは?
といったあたりを少年漫画の王道をきっちり押さえつつ、かつ最後まで一切失速することなく描き切った名作中の名作です。
出てくる女の子たちがめっぽう可愛いのも大事なポイント。
唆るぜ、これは…!
![](https://yacky-sanfu.com/wp-content/uploads/2023/11/20-5-e1699257352760.png)
第11位『灼熱カバディ』武蔵野創…全31巻
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異色のカバディ漫画。
日本ではマイナースポーツではあるものの、カバディカバディカバディカバディと発し続ける珍しさゆえに「名前だけは知ってるスポーツ」の筆頭とも言うべきインド発祥の国技・カバディを題材とした作品。
マイナーを通り越してネタスポーツ扱いされがちなカバディですが、『灼熱カバディ』はそんなカバディの高い戦略性と肉体同士のぶつかり合いを余すところなく描き切っており、
日本におけるカバディの知名度向上に一役買ったばかりか、本国のインドでも評価されている作品です。
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主人公の宵越竜哉はかつて全国区のサッカー選手でしたが、チームメイトとの確執によりサッカーを辞めていました。
高校生になり動画投稿サイトの生配信活動に勤しんでいた彼ですが、半ば強制的にカバディ部に入部させられることとなります。
当初は嫌々行っていたカバディですが、先輩達との練習やライバル校との試合を経て少しずつカバディにのめり込んでいきます。
作者の武蔵野先生は『SLAM DUNK』を敬愛しており、それを意識したと思われる設定・展開が作中の随所に見られますが、
『SLAM DUNK』から予想される展開をほどよく外しつつも「灼熱」の名に違わぬ熱い対決・巧みな心理描写はスポーツ漫画全体を見渡しても類を見ない完成度です。
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バスケットボールにとっての『SLAM DUNK』、サッカーにとっての『キャプテン翼』と同様、
日本におけるカバディの立ち位置を大きく変えうるポテンシャルを秘めた凄まじい作品と言わざるを得ません。
余談ですが、2023年7月に本記事を執筆した時点では本作を19位に置いていましたが、その後2024年7月に完結。
この最終回までの展開が完璧すぎたため2024年11月のリライト時に11位までランクアップさせました。
第10位~第1位
第10位『ホーリーランド』森恒二…全18巻
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世界最高の格闘漫画。
単なる格闘・バトルにとどまらず「人生観」についても考えさせられる、非常に秀逸な作品です。
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中学生時代にいじめを受け、引きこもっていた過去を持つ高校生の神代ユウが物語の主人公です。
彼はたまたま書店で見かけたボクシング教則本に興味を持ち、自室でひとり猛特訓を積んでいました。
そんな中、夜の下北沢で不良に絡まれ、つい応戦して倒してしまったことで「不良狩り」と呼ばれ始めました。
以降、ユウは不良たちに目を付けられるようになります。
「不良狩りを成敗する」という名目でユウの元に送り込まれる、ボクシング・柔道・空手・レスリングなどの格闘技経験者たちですが、
ユウは彼らと時に闘い、時に友情を芽生えさせ、ただの「暴力」が少しずつ「格闘」へと昇華していきます。
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やがてユウは「闘い」を通して自らの人生を見つめていくことになります。
現代社会において「暴力」といった要素は歴とした「犯罪行為」になるわけですが、
それが爽やかさを伴った「格闘」に変わっていく、リアルとファンタジーの隙間をこれほど巧みに描写した漫画は他にありません。
ただの格闘漫画や不良漫画と思って読んでみると、その評価が大きく覆ることは間違いありません。
格闘漫画であり、不良漫画であり、人間ドラマであり、青春群像劇でもある、この作品の面白さは赤誠をもって保証致しましょう。
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ちなみに作者の森恒二先生は学生時代に実際にストリートファイトに明け暮れていた経験があり格闘技のスキルも豊富な上、
皆様の想像の5倍ぐらいのガチムチマッチョなので描写には異様な説得力があります。
詳しくは「森恒二 マッチョ」で検索だ!
第9位『お~い!竜馬』原作・武田鉄矢、作画・小山ゆう…全23巻(ワイド版・文庫版14巻、新装版12巻)
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最高の時代劇漫画。
言わずと知れた幕末の超有名人である坂本龍馬の生涯を、これまた坂本龍馬フリークでおなじみ武田鉄矢氏が原作を担当し、時代劇漫画の大家である小山ゆう先生が描くという、
そりゃ面白くなるわと言わざるを得ない超豪華スタッフによる作品です。
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実際のところ、坂本龍馬は比較的最近の人物であるため資料が豊富な上、
歴史学者の間でも人気がありすぎて現在ではほぼ1日単位での行動も正確に判明しているようですが、
『お~い!竜馬』は史実をベースとしながらも微妙にそこからズラしたフィクションを盛り込んでいるため先の読めない物語が展開されます。
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私はさほど龍馬フリークというわけではありませんが、この漫画の「坂本竜馬」は徹底して魅力的に描かれています。
というかこれを読んで坂本龍馬を好きにならない人は居ないでしょう。
坂本龍馬伝の原点とも呼ぶべき、司馬遼太郎先生の『竜馬がゆく』で描かれなかった幼少期の話を描いたり、
武市半平太(武市瑞山)や岡田以蔵(人斬り以蔵)との幼馴染設定を追加して物語に深みを加えるなど、
従来の坂本龍馬作品との差別化が実に巧み、かつ秀逸です。
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あとは北辰一刀流の免許皆伝で有名な坂本龍馬のドラマですので、小山ゆう先生の十八番・戦闘シーンの描写の上手さが光ります。
総じて、どの要素を取っても死角のない完璧な漫画と言えるでしょう。
第8位『銀と金』福本伸行…全11巻(文庫版8巻、新装版10巻)
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裏社会マンガの頂点にして、福本伸行作品の最高傑作。
主人公の森田鉄雄は、20歳にして親も兄弟もいないギャンブル中毒の素寒貧でしたが、
そんな彼に裏社会のフィクサー・平井銀二が声をかけ、裏の仕事に引き込んだことから物語が始まります。
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この平井銀二はあらゆる面で卓越した能力を持っており、特に金儲けに関して天才的な人物でした。
森田は彼のもとで裏社会のことを学び、また様々な窮地をくぐることで徐々にその才能を目覚めさせていきます。
やがて森田は銀二を超えること、「金」と呼ばれることを目標として裏社会を生き抜いていく決意を固めます。
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『天』『アカギ』『賭博黙示録カイジ』などを手掛けていた、脂が乗りまくっていた頃の福本伸行先生の作品であり、
裏社会における政治や経済の戦い、命懸けの戦闘、ギャンブルなどが実にテンポよく描かれています。
ひとつひとつのエピソードが素晴らしく秀逸で、福本伸行先生の良いところを全て盛り込んだフルコース料理といった趣の漫画です。
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その後の福本伸行先生に見られる悪い癖・エピソードがめちゃくちゃ長くなるという欠点が顕現する前の作品なので、
全11巻とは思えないほどとにかく濃厚で濃密な物語が楽しめます。
残念ながら、いくつかの伏線を残したまま1996年に休載し、以降の連載がストップしてしまったわけですが、
個人的には今さら再開せず、このまま『SLAM DUNK』のように輝かしい名作のまま終わっても良いような気がします。
実際、今後の連載再開の見込みもあまり無いでしょう。
掲載誌のアクションピザッツもこれエロ漫画雑誌やないかという勢いで誌面がそちら方向にシフトしてしまいましたし。
第7位『あした天気になあれ』ちばてつや…全58巻(ちばてつや全集36巻、文庫版31巻)
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好き。
ついに私が最も敬愛する漫画家・ちばてつや先生の作品を当ブログで紹介できる日がやってきました。
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主人公はプロゴルファーを目指す中学生・向太陽。
朝は実家の食堂を手伝い、夜はゴルフ練習場でアルバイトをしつつ、元プロゴルファーの竜谷の指導のもと腕を磨いていました。
太陽は様々な強敵たちや、難コースでの激戦を経て少しずつゴルファーとして成長していきます。
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この漫画の魅力と言えば、ゴルフという自分との戦いが重要なテーマとなるスポーツに相応しい太陽への感情移入のしやすさ、
そしてスポーツ漫画の大家であるちばてつや先生の巧みなコマ割りによる圧倒的な読みやすさにあります。
この漫画の読み進めやすさは尋常ではなく、「ちょっと1冊読むかな」というつもりで手に取ったが最後、いつの間にか10冊近く読んでいることがザラにあるレベル。
それでいて後続のゴルフ漫画にありがちなスーパーショットを連発するような展開は殆どなく、
太陽がプロゴルファーを目指す過程、ライバルに立ち向かう姿が真摯かつリアルに描かれます。
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全58巻というボリュームを良い意味で感じさせない読みやすさとテンポの良さ、
太陽の成長を間近で感じられる戦いの数々は、ゴルフ漫画としても勿論、スポーツ漫画としてもきわめて高い地位に居る作品と言えます。
というより、ちばてつや作品は全て名作と言っても過言ではありません。
『あしたのジョー』しか知らないという人は勿体ない。読んで下さい。決して後悔はさせません。
第6位『アオイホノオ』島本和彦…既刊30巻
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最高の自伝漫画。
先に挙げた『吼えろペン』『逆境ナイン』などを代表作に持つ島本和彦先生による自伝的作品です。
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舞台は1980年代初頭。主人公の焔燃は、大作家芸術大学に通いつつ漫画家を目指す一回生です。
『アオイホノオ』では、そんな島本和彦先生のアバターであるホノオが漫画家になるまでの紆余曲折が描かれています。
根拠のない絶大な自信による増長、才能に満ち溢れた周囲の人物たちから受ける敗北感、
己の力のなさを自覚してしまった挫折、先輩漫画家たちに先を行かれてしまう焦燥感、
といった若気の至りをギャグにして余すところなく描き切っているのが並の自伝作品と大きく違うところです。
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また、この作品独自の路線として1980年代当時の漫画・アニメの有名作品をホノオの視点(ときどき妙に上から目線)で解説しているのも見逃せませんし、
何といっても当時実際に大学の同級生だった、のちのエヴァンゲリオンの監督・庵野秀明氏の学生生活も同時並行で描かれていることが大きいですね。
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これによって、ギャグ漫画の天才である島本和彦先生(ホノオ)と、アニメ・特撮の天才である庵野秀明氏の二者を軸としたサクセスストーリーが展開されるため、
1粒で2度・3度おいしい秀逸な作品となっています。
それにしても同級生に庵野秀明氏だけでなく赤井孝美氏、山賀博之氏、南雅彦氏が居るのは強すぎる。
第5位『SLAM DUNK』井上雄彦…全31巻(完全版24巻、新装版20巻)
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スポーツ漫画の最高傑作。
発行部数としても『タッチ』や『はじめの一歩』『キャプテン翼』といった強者たちを抑えてスポーツ漫画界でNo.1となっています。(参考:漫画全巻ドットコム)
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主人公の桜木花道は恵まれた体格を持ちながら喧嘩に明け暮れる不良少年でしたが、
バスケットボール好きの上級生・赤木晴子に一目惚れしたことをきっかけにバスケ部に入部します。
スポーツ経験はほぼ皆無の桜木でしたが、厳格なキャプテン・赤木剛憲や、同級生のライバル・流川楓らと衝突を繰り返しつつ、
その高い潜在能力を徐々に開花させ、バスケットボール選手として成長していきます。
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この作品の良さは今更私などが語るまでもないと思いますので、ここは当ブログらしく少し違う角度から『SLAM DUNK』について考えてみましょう。
というのも、スポーツ漫画史を考える上でも『SLAM DUNK』の存在感はひときわ強いのです。
スポーツ漫画で最初にブームになったジャンルといえば、1960~1970年代に隆盛を極めた『巨人の星』『あしたのジョー』『プレイボール』『アタックNo.1』といったスポ根ものでした。
主人公の努力と根性をもとにして大リーグボールやクロスカウンターなどといった必殺技を会得して強大な敵に立ち向かうという構図は一大ジャンルを形成し、当時はスポ根こそがスポーツ漫画と呼べるほどの立ち位置にありました。
ところが、単調な構造と言えなくもない従来のスポ根ものは読者から次第に古臭い物語と捉えられるようになっていき、
その泥臭い展開に対する反発として、1980年代にかけて『エースをねらえ!』『タッチ』『がんばれ元気』などで人間ドラマへとシフトした作品が評価されていきます。
一方その頃、ジャンプでは『リングにかけろ』や『キャプテン翼』など必殺技に重きを置いたスポーツ漫画で従来のスポ根からの脱却を図っていました。
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そんな流れの中、当時としては比較的マイナースポーツだったバスケットボールを選択し、かつ従来のような必殺技が存在しない、
しかも主人公がポイントゲッターではなく絵的に地味なリバウンドに長けるという『SLAM DUNK』は異例尽くしの漫画でした。
このようなセオリー無視の漫画が世界一のスポーツ漫画になったわけですから、作劇というものの奥深さを感じますね。
第4位『HUNTER×HUNTER』冨樫義博…既刊38巻
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第4位は『HUNTER×HUNTER』です。
この作品はバトル漫画にも冒険活劇にも分類困難な、『HUNTER×HUNTER』というジャンルとしか言いようがありません。
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主人公はくじら島の大自然に囲まれて暮らす少年、ゴン=フリークス。
彼は父親のジン=フリークスに憧れを抱き、ハンターになることを決意します。
この世界での「ハンター」は現実世界のそれとは少し異なり、珍獣や財宝・賞金首など様々なものを探し求める冒険者といった立ち位置です。
ハンター協会が認定するプロハンターは経済的・法律的に様々な特権を得ることができるのですが、代わりに超難関の実技試験を合格する必要があります。
そんなハンター試験で出会った仲間や強敵との闘いを通じ、ゴンは一人前のハンターとして成長していくことになります。
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『HUNTER×HUNTER』における最大の発明といえば、やはり特殊能力の「念能力」の存在でしょう。
念能力とは、一言で言うと「肉体の生命エネルギーを利用した超能力」ですが、
この念能力には単純に身体能力を強化するもの、何らかの制約を課すことでより強力なリターンを得られるもののほか、全く戦闘に向かないものまで幅広い能力が存在しています。
これによってバラエティに富んだ駆け引きや戦闘が繰り広げられ、
また単純な勧善懲悪にとどまらない、様々な登場人物たちの思惑や思想が絡み合うストーリーは唯一無二の存在です。
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あとは『HUNTER×HUNTER』を語る上で決して欠かせないものが休載ですね。
もはや『HUNTER×HUNTER』と言えば休載、休載と言えば『HUNTER×HUNTER』といった立ち位置になってしまいましたが、
その理由としてはキャラクターの設定や行動のタイムラインを徹底的に練りまくることや、
ときどき作画に尋常ではないこだわりを見せること、アシスタントをほぼ雇っていないこと、
特に腰痛の状態が芳しくないことが大きな要因のようです。(漫画の執筆は腰への負担が非常に強いらしく、多くの漫画家さんにとっての悩みの種です)
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とはいえ、どの理由も作品のクオリティを維持するためだったりやむを得ない理由なわけですから、
私のような飼い慣らされてしまった信者からすると描いて下さるのは天の恵みのようなものなので、感謝こそすれど文句を言うつもりは全くありません。
というかむしろ2~3年の休載はスパイスのうちです。
空腹であればあるほどご飯が美味しいというアレです。
たとえ何年かかろうとも私は次の『HUNTER×HUNTER』の掲載を待ち続けるのであります。
第3位『鋼の錬金術師』荒川弘…全27巻(完全版18巻)
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世界一のファンタジー漫画。
その影響力は甚大で、2回にわたるアニメ化のほか、アニメ映画化、実写映画化、舞台化も経験しており、
ゲームに至っては11本も作られているというお化け漫画です。
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物語の舞台となるのは産業革命期のヨーロッパ風の世界で、科学を下地にした魔法のような「錬金術」と呼ばれる特殊能力が存在しています。(現実世界の錬金術とは大きく異なります)
主人公のエドワードと弟・アルフォンスは、幼少期に父が失踪した上、母を亡くしてしまいました。
並外れた錬金術の才能を持っている彼ら兄弟は、死んだ母親を人体錬成する(復活させる)という禁忌を犯します。
しかし人体錬成は失敗。
禁忌を犯した代償として、エドワードは右腕と左脚を、アルフォンスは全身の肉体を失います。
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エドワードは失った右腕と左脚に機械で動く義肢・機械鎧を装着し、アルフォンスと共に失った体を取り戻すための旅に出ますが、
その過程で暗躍する人造人間や国家の暗部でうごめく謎の権力者「お父様」の存在、
そして国全体を巻き込んだ恐ろしい陰謀が次第に明かされ、仲間たちと共に立ち向かうことになります。
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この作品の完成度は異常で、最終決戦に向けて全てのピースが完璧にはまっていく感覚は他では味わえません。
それでいて対立構造にあった陣営同士が最後には一致団結し、共通の敵に立ち向かうという少年漫画の王道をきっちり踏襲しており、
熱いバトルやギャグシーン、肉付きの良いキャラクター(男はガッチリ女はムッチリ)にも定評があります。
2001年のエニックスお家騒動(エニックスの漫画編集者が独立して作家を引き抜いたあげく空中分解した)でガッタガタになっていた月刊少年ガンガンをほぼ独力で復活させたという漫画史的にも重要な作品ですし、
最終回を掲載したガンガンは2割増しで発行したにも関わらず完売してしまったので翌々月にもう一度掲載するという前代未聞の事態を引き起こしました。
ちなみに私はこの作品が好きすぎて、当ブログ記事の中で5回にわたって考察記事を書いています。
『鋼の錬金術師』ウィンリィが立ち会った出産について産婦人科医学的に考察する
『鋼の錬金術師』イズミ・カーティスが失った臓器を医学的に推測する
『鋼の錬金術師』最終決戦でホークアイ中尉が首を切られた描写について考察する
『鋼の錬金術師』マスタング大佐の「焼いて塞いだ」について考える
第2位『おれは鉄兵』ちばてつや…全31巻(ちばてつや全集21巻、文庫版12巻)
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大好き。
ちばてつや作品の中からどの2作を選ぶか発熱するくらい悩んだ結果、『あした天気になあれ』と『おれは鉄兵』を選出しました。
このランキングに「同じ作家の作品は2作まで」の縛りを設けた理由は、ちばてつや作品からたった1作だけを選出することができなかったからであり、
かといって2作までにしておかないとベスト30のうち半分近くがちばてつや作品になってしまうという事情によるものです。
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主人公は山奥で育った野生児・上杉鉄兵。
古文書を頼りに埋蔵金の発掘を行っている父親と2人暮らしをしていましたが、実は鉄兵は東京の名門・上杉家の三男であることが発覚し、父親ともども東京に連れ戻されます。
鉄兵は中学2年生ながら義務教育を受けていなかったため、読み書きすら怪しいレベルでしたが、名門校・王臨学園の剣道部に入部したことで剣道の才能を開花させました。
山育ちで培った高い運動能力と観察眼を駆使し、強敵たちと激闘を繰り広げていきます。
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『おれは鉄兵』の魅力を一言で語り切るのは難しいですが、まずはちばてつや先生の得意分野であるスポーツ描写の上手さが挙げられますね。
第7位で紹介した『あした天気になあれ』にも共通して言えますが、何のストレスもなく読み進められるコマ割りとアングルの巧みさは特筆に値します。
鳥山明先生を発掘した伝説の漫画編集者・鳥嶋和彦氏も、新人編集者の時代に「読みやすい漫画とは何か」を勉強した末に行き着いたのが『おれは鉄兵』であり、
『おれは鉄兵』を何度も読み返したことが編集者としての基礎だったと話しているほどです。(参考:電ファミニコゲーマー)
この試合描写、読みやすすぎない?
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この圧倒的な読みやすさを土台に、勝負の行方が分からないハラハラする展開、コミカルな日常の描写、鉄兵の自由奔放で親しみやすいキャラクター、脇を固める登場人物たちの魅力の高さなど、全ての面において少年漫画として秀逸です。
私などは物心つく頃から何百回読み返してきたか分かりませんが、それでもなお新鮮な気持ちで楽しめる魅力を持っています。
「無人島に好きな漫画を1作だけ持って行っていい」と言われたら、たぶん私は『おれは鉄兵』を選びますね。
第1位『寄生獣』岩明均…全10巻(完全版・文庫版8巻)
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世界最高の漫画。
誇張抜きに私の人生の3割くらいは漫画でできていますが、
そんな私が「最高の漫画」だと確信しているのが『寄生獣』です。
人間の脳に寄生する未知の生物・寄生生物が人知れず地球上の様々な場所に飛来するところから物語が始まります。
そんなパラサイトがやってきた場所のひとつが、主人公である高校生・泉新一のもとでした。
![](https://yacky-sanfu.com/wp-content/uploads/2023/06/image-182.png)
右手から体内に潜り込んだパラサイトでしたが、新一の機転により寄生を食い止められ、
パラサイトは新一の右手に寄生することとなります。
高い知能と戦闘能力を持つパラサイトは自らを「ミギー」と名乗り、
新一の右手として生きていく、そんな奇妙な共同生活が始まります。
![](https://yacky-sanfu.com/wp-content/uploads/2023/06/image-185.png)
![](https://yacky-sanfu.com/wp-content/uploads/2023/06/image-184.png)
しかし、話はそれだけでは終わりませんでした。
ミギーが新一に寄生すると同時期に、世界各地で人間がズタズタに引き裂かれる殺人事件が多発します。
ミギーと新一にはその殺人事件の犯人が分かっていました。
人間の脳に寄生したパラサイトたちは、他の人間を食料とする性質を持っていたのです。
![](https://yacky-sanfu.com/wp-content/uploads/2023/06/image-188.png)
ミギーは脳を奪えなかったために食欲=人間を捕食する欲求を持っていませんが、
そんなミギーと新一の存在は他のパラサイト達から危険視され、
時には敵対され、時には生態解明のサンプルとして興味を持たれます。
やがて、新一とミギーは人間社会に紛れ込むパラサイト達との壮大な戦いに巻き込まれていくこととなります。
![](https://yacky-sanfu.com/wp-content/uploads/2023/06/image-187.png)
控えめに言ってもキングオブキングオブ神漫画です。
一見すると血や肉片が飛び交うグロ漫画と捉えられがちですが、
新一・ミギーという人間とパラサイトの中間的な立ち位置から「人間」「生命」「友情」といったものの存在を問うテーマ性の深さ、
意外性に溢れた劇的なストーリー、作り込まれた世界観は今なお多くのファンに愛されています。
私はこの作品に出会って20年ほど経ち、その間にも様々な漫画を読んできましたが、
私の中で『寄生獣』を超える作品には未だお目にかかれていません。
漫画に人生の3割を捧げた人間として、今後の人生のどこかで『寄生獣』を超える作品に出会うことが夢のひとつですね。
ちなみに、このブログのヘッダーアイキャッチ画像で私が読んでいる漫画は『寄生獣』の9巻だったりします。
![](https://yacky-sanfu.com/wp-content/uploads/2023/05/163b41880a08f4ba4710c82d67c52ec5-e1685714232139.png)
![](https://yacky-sanfu.com/wp-content/uploads/2023/06/image-189-e1687357820844.png)
![](https://yacky-sanfu.com/wp-content/uploads/2023/06/image-190-e1731565878769.png)
そんなわけで世界一面白い漫画『寄生獣』、もし読んだことがない方は是非読んでみて下さい。
第15位で紹介した『こどものおもちゃ』が小~中学生で読んでおくべき漫画とするならば
『寄生獣』は中学生~高校生くらいのうちに読んでおくべき漫画だと思います。
まとめ
というわけで、私のお勧め漫画ベスト100のうち50位~1位をご紹介しました。
前後編を合わせて5万字以上という狂った企画になりましたが、ここまでお読み頂き本当にありがとうございました。
特に20位~1位あたりは私の人生そのものと言っても過言ではないほどの存在ですので、
機会がありましたら是非、お手に取って頂ければと思います。
以下、関連記事です。
同作家は2作まで、の縛りがなければ入っていたであろう作品です。
ベスト100からギリギリ漏れてしまった作品は沢山あります。いずれそれらもご紹介したいところ。
『TOUGH』より双子(一絨毛膜一羊膜双胎)について解説する
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![](https://yacky-sanfu.com/wp-content/uploads/2020/10/image-145-1024x486.png)
数えきれないくらいの漫画を読み込んだ先生の漫画ランキング、非常に興味深く読ませていただきました。
ランキング上位で読んだことがないマンガがいくつかなったので、機会があれば読みたいと思います。
ただ、名作と呼ばれる漫画が多い中、非常に悩まれたと思いますが、
私の好きな山口貴由先生のシグルイや藤田和日郎先生のからくりサーカスがランキングに入っていなかったのは個人的に残念でした。
やはり、人によって好みがありますね。
5万字以上の超大作の執筆おつかれさまでした。
桂正和と富士鷹ジュビロと矢吹健太朗は?
グルグルと変態仮面と仮面ヤイバーは
岡田あーみんも
新旧の名作から、少しマイナーな作品まで織り交ぜたランキングで読み応えがありました。
1位の寄生獣は納得です。
個人的に「おっ!?」と思ったのが、40位の重野なおき先生。
四コマ漫画家のトップランナーだと思いますが、浅い漫画ファンのランキングには決して出てこない作家。
このお名前が出てきただけで、「このランキング、信用できるな。」と思いました。
ランキング内で未読の作品が幾つかありましたので、この機会に読んでみます。
ありがとうございます!
このランキングを作るのにはかなり難渋したのですが、
投稿から2か月が経った今の時点で既に「やっぱりこの作品も入れたい」「この作品がこの順位なのやっぱりおかしいかな」と思っているものがあるので、年1回くらいのペースで微妙に入れ替えるかもしれません。
ここまでご指摘のある藤田和日郎先生の作品も…もちろんめちゃくちゃ悩んだんですよ…
ふーむ確かに寄生獣は名作でしたね。全10巻で長すぎず短すぎず最後まで中だるみせずきれいに最終回も〆られてましたし自分もかなりの完成度の高い名作だと思います。あとこの作者さんがかなり影響を受けた漫画デビルマンも名作っすよ。
既に先生が読んでいらっしゃったら申し訳ないのですが、藤田和日郎先生のからくりサーカスという作品とてつもなく面白いのでお時間ある時ぜひ読んでみてください!
もちろん、からくりサーカスもうしおととらも双亡亭も読んでおりますとも!
あの辺の個人的に100位周辺の漫画が本当に多くて、選別に困りました。
私の中で藤田作品のトップはうしおととらですね。
ジャンプラで掲載されてる将棋漫画「盤王-バンオウ-」やこの前連載が終わった編集者を主軸に「出版」に携わる人を描いた「重番出来」は先生に刺さりそうですね
「なみだ坂診療所」がランク外ですって…!??