
こんにちは!
産婦人科医やっきーです!
私がX(旧Twitter)で質問箱を開設していることは読者の皆様もご存知の通りかと思います。
質問箱のリクエストから作った記事もいくつか生まれました。
2022年末に質問箱を開設して以来、2023年9月23日現在で110件以上の質問・回答が溜まっているのですが、
ブログと違って過去の回答を掘り返すのはなかなか難しく、
埋もれさせておくのは惜しい質問・回答もいくつかあります。
そんなわけで、今日は過去の回答の中からいくつかピックアップしてお届けしましょう!
第2弾となる今回は「妊婦さんからの質問編」です!
妊娠中の風邪と咳

妊婦さんと咳の問題はなかなか深刻です。
特に今は新型コロナウイルスがありますからね。解熱後も咳が長引く傾向にあるようです。
新型コロナウイルスは別として、個人的には風邪は何もせずともいずれ治るのでできるだけ薬は使いたくないところですが、
妊婦さんはあまりに咳がひどいとお腹が張ってしまうのが悩みどころです。

鎮咳薬で妊娠に良い影響が出るという報告が存在するわけではないにせよ、
赤ちゃんへの影響が心配だというお気持ちは非常によく分かります。
妊娠中の鎮咳薬として、以前「妊娠中に使える薬」に関する記事を書いています。
「かぜ薬」の項目でも解説していますが、結論として私ならメジコン®を処方します。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
あとは喉の痛みが気になるならトローチやのど飴を舐める程度ですかね。
カロリーが気になる場合は「1日4個まで」「3時間につき1粒まで」などと決めるのもひとつの手ですが、
今どきはカロリー控えめののど飴も多く、1日に何袋も消費するような超ハイペースでなければ気にせず舐めちゃってもいいと思います。
いずれにしても、気になる場合は遠慮なくかかりつけの先生に聞いてみましょう。
適切に指示してくれるはずです。
なお、一般的な風邪が妊娠に与える影響について言及した報告はほとんどありませんが、
妊娠中の新型コロナウイルス感染については、国内外の様々な統計調査により「死産や流産は増加しないが、早産のリスクは上昇する」ということが知られています。
咳によりお腹が張るためなのか、はたまた別の原因なのかは現時点では不明です。
2020年9月~2022年6月の国内67施設・計1134人のコロナ感染妊婦を対象とした調査によると、
中等症Ⅱ(酸素投与を必要とする症例)以上の重症度となった妊婦さんの早産率が有意に高く、また中等症Ⅱ以上を発症した妊婦さんは全員ワクチン接種をしていなかったというデータがあります。
妊婦さんが赤ちゃんを守るために取り得る予防策としてはワクチンを接種することに尽きます。
(参考:山田秀人, 出口雅士「COVID-19と妊娠」日本産婦人科・新生児血液学会誌 32(2): 35-42, 2023.)

帝王切開は何回までできる?

こんにちは!!!
仰る通り、前回帝王切開をした場合、現代では原則として次のお産も帝王切開になります。
(一度帝王切開をした後、経腟分娩をすることを「TOLAC」といいます。それなりにリスキーな出産方法であり、訴訟リスクが上昇した現代ではめっきり減りましたが、医学的な適応があり管理がきちんとしている場合に限り不可能ではありません)
帝王切開の際に子宮を切開するのですが、この切開部が修復するとき、どうしても元よりちょっと子宮の筋肉が薄く弱くなってしまうわけですね。
一定以上に薄く弱くなった子宮で妊娠をした場合、子宮破裂のリスクがあるので危険です。

我々産婦人科医は「薄く弱く」なりにくくする方法を日夜研究しているのですが(糸の種類を変えたり縫い方を工夫したり)、これぞ唯一の正解だ!と言えるものは未だに存在しません。
しかも「薄く弱く」の具合はかなり個人の体質に左右されます。
私が経験した同一人物の最多帝王切開回数は5回でした。
それでも執刀した感覚としては「この人、次もいけるっぽいな」と思ったものです。
それに反して、2回目の帝王切開でも「子宮すごく薄くなってるなー」と思うことはしばしばあります。
ままならないものです。
とはいえそんな事を言っていては身も蓋もないので、「帝王切開は3回まで」という目安がよく使われます。
基本的に3回目までなら安全に妊娠・出産を終えられる可能性が高いと言えます。
しかし「どうしても子どもが4人以上欲しい」といった希望がある場合もあるでしょう。
そういった場合、4回目の妊娠時の子宮破裂リスクなどを十分に説明した上で妊娠を許可する場合もあります。
このあたりはケースバイケースですね。

主治医の先生とよく相談して決めましょう。
妊娠中のお寿司や海外旅行

なるほど、確かに妊娠中にもお寿司を食べたり、海外旅行にも行きたいですね。
しかし結論として、どちらも全くお勧めできません。
生の魚や肉は感染症のリスクがあり、非妊娠時にはほとんど何の影響もない菌やウイルスであっても、妊娠中だと途端に牙をむくヤツもいます。
サラダに付着している菌でさえヤバいことがあるくらいです。申し訳ありませんが、生の魚や肉は我慢です。

海外旅行も全くお勧めできません。
妊娠中は何が起こるか誰にも想像がつかず、飛行機の中で大変な事態にならないとも限りません。言葉が伝わらない国だとさらに危険度アップです。
また、保険のきかない海外で何らかの異変が起こった場合、医療費はすんごいことになります。
よほど特別な事情がない限り、海外旅行も我慢しましょう。国内の移動も必要最低限におさめる方が無難です。
そういえば、臨月の双子の妊婦がシドニーに行くことを保証した産婦人科医がどこかにいたな…
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妊娠中のチーズ

妊娠中のチーズに関する話題ですね。
私もチーズは大好きです。ていうか乳製品全部を愛しています。

さて、まずは質問者さんが不安に思われている「リステリア菌とは何か」というところからお話ししましょう。
リステリア菌は、自然界の様々な場所にいる食中毒の原因菌のひとつです。
こいつはチーズだけではなく、本当にどこにでもいます。
整備されてない雑木林を5分ほど散歩していればリステリアを数万匹は踏みつけてると思って頂いて過言ではありません。

もっとも、食事を経由して体内に侵入しなければ感染のおそれはほぼありません。
しかしながら妊娠中は非妊娠時に比べてリステリア菌に格段に感染しやすくなる上(約17倍と言われています)、
胎盤を通って赤ちゃんに感染し、流産したり赤ちゃんが亡くなったりすることが起きうるので、妊娠中のリステリア感染症は怖いわけですね。
厚生労働省も「妊娠中はナチュラルチーズや生ハムを食べないように」としています。
さて、このリステリア菌は70℃以上の温度で死滅します。
ということは、たいていの物はしっかり火を通せばリステリア菌が死滅するわけです。

逆に言えば、生肉や生乳、加熱殺菌が十分でない生乳を加工して作られたチーズにはリステリア菌が存在しうるのです。
理解が深まるミルクライブラリーさんによると、チーズを作るための生乳の殺菌温度は63℃で30分、または72℃で15~40秒だそうです。
70℃未満で殺菌してある可能性が残る以上「食べてもOK」とは言いがたいところです。
ただ、質問者様は牧場のカスタマーセンターに問い合わせるほどの熱狂的チーズ好きだとお見受けします。
その行動力をもって「何℃で加熱しているか」を問い合わせてみると答えが返ってくるかもしれません。
何℃かはっきりしない場合や、70℃に達していないという答えが返ってきた場合は、妊娠中はプロセスチーズや加熱をするタイプのチーズを食べるかする方が無難かと思います。
余談ですが私はカチョカバロが大好物です。
妊娠中のチーズ・続き


素晴らしい行動力だ…!
答えが返ってきたようで何よりです。
こういったナチュラルチーズは妊婦さんが食すことを想定していないでしょうし、企業側としても少しでもおいしいチーズを届けたいという努力の末に殺菌温度を決めていると思われますので、
リステリアのことを想定して温度を上げてくれ、というのはなかなか難しいところです。
一応、食品衛生法ではリステリアの菌量が一定以下になるよう基準が定められているようですが、万が一を考えると手を出さない方が無難ですね。
余談ですが、私は雪印の6Pチーズがめっちゃくちゃ好きです。
ていうかあのシリーズ全部好きです。「カマンベール入り」「コクとうまみ」「ペッパー入り」もオツなものです。
プロセスチーズは製造の過程で十分な加熱をしており、安全に食べることができます。
妊娠中の便秘

妊娠中は「子宮が大きくなることによる腸の圧迫」+「妊娠を維持するホルモンによる作用」の2つによってどうしても便秘になりやすいですね。
お腹が張ったり痛みが出たりすることもありますし、出産時に直腸に溜まった便が邪魔で赤ちゃんが出てきにくくなることもあるので、便秘のコントロールは非常に重要です。

私は妊婦健診のたびに「毎日出てますか?」と聞きます。
毎日出ていなければ以下のような対応をします。
まずは「水分をしっかり摂る」と「マグミットを処方する」から始めます。
マグミットは簡単に言えば便を柔らかくする作用があります。
ほとんど腸から吸収されないので赤ちゃんへの影響はほぼ皆無で、習慣的に飲むことによるデメリットもあまり無いという神の薬です。

マグミットを便秘の時だけ飲むという方も居ますが、マグミットには即効性はあまり期待できないので毎日飲むのが望ましいです。
マグミットは250mg、330mg、500mgと3種類ありますが、合計で1日2000mgまで内服可能です。(250mgなら1日8錠、330mgなら1日6錠、500mgなら1日4錠)
そのため、もし2000mgに達していない場合は主治医の先生に話して量をアップしてもらいましょう。
しかし中には「いや、私の便秘を舐めてもらっちゃ困る」「2000mgなんて余裕で飲んどるわい」「でも毎日は出ないんじゃい」という方もいらっしゃると思います。
その場合、「ラキソベロン」「ピコスルファート」といったお薬を要求しても良いかもしれません。
マグミットと異なり、これらは毎日飲むには適していませんが、お通じが出ない時に単発で飲むには良い薬です。
鉗子分娩と吸引分娩


まず前提として、吸引分娩も鉗子分娩も、適切に行えば優れた手法です。
歴史を紐解くと、先に開発されたのは鉗子分娩でした。17世紀初頭のイギリスで発明されたようです。
鉗子分娩は難産を補助できる優れた技術でしたが、きちんとした手法が確立されるまでは死産など不幸な結果になることもしばしばありました。

第二次世界大戦後に吸引分娩が実用化されると、鉗子分娩に比べて手技が簡単であることと母体への合併症が少ないため、少しずつ吸引分娩に取って代わられていったわけですね。
しかし、赤ちゃんを出すという点について考えると鉗子分娩の方が強力とされており、吸引分娩ではできないお産も鉗子分娩なら可能というケースもあります。
特に無痛分娩の場合は母体の娩出力が弱くなりやすいため鉗子分娩・吸引分娩が必要になることが多く、
無痛分娩が普及しているイギリスでは2011年に鉗子分娩の割合が吸引分娩を上回るなど、
きちんとした手法が確立した現代では鉗子分娩も見直されつつあります。
日本のデータはちょっと見つかりませんでしたが、鉗子分娩も決して悪いものではありませんのでご心配には及びません。
どちらが良い・悪いというものではなく、それぞれにメリットとデメリットがあるわけですね。
ちなみに個人的な経験で申しますと、私は吸引分娩しかできません。
鉗子分娩は本でしか読んだことがなく、習ったこともありません。
このあたりは産婦人科教育を受けた地域による差も大きいと思います。
私の父(産婦人科医歴40年超)も「鉗子分娩は見たことが無い」と言っていました。
ものすごく個人的な偏見ですが、西日本では鉗子分娩が少ないような気がします。
分娩時のBGM

私が経験した中で分娩室で音楽がかけられる病院は無かったですね…
1つか2つなら、オルゴール調の静かなBGMが流れているところはあったかも…?

手術室なら有線やラジオや手術室備え付けのCDプレーヤーなど、患者さんや医師の好きずきで流せるところがいくつかありました。
印象に残っているものとしては、帝王切開中にたまたま有線で流れた『世界に一つだけの花』ですね。
奇跡的な選曲に、手術をしながらテンションが上がったのを思い出します。
そしてここからは完全に私の趣味の領域です。
私はジャズピアノが趣味なのですが、私が選んで良いならミシェル・ペトルチアーニさんの『Looking Up』を全力でお勧めさせて頂きます。
ミシェル・ペトルチアーニさんは生まれつき「骨形成不全症」という病気を患っており、
動画を観て頂ければ分かる通り、成人しても身長は1メートルほどであり歩くのにも杖が必要でした。
本来であればピアノを弾くことすら難しい体で、演奏中に手首や指の骨が折れることも珍しくなかったそうです。
その体で「フランス最高のジャズピアニスト」と評されるまでになったわけですから、私のような凡人には計り知れないほどの苦労があったに違いありません。
残念ながら35歳の若さでこの世を去りましたが、彼の身体的特徴とは裏腹な力強いピアノの音は様々な音源に遺されていますので、是非一度は聴いて頂きたいと思います。
子宮筋腫変性痛

子宮筋腫変性痛に関するご質問ですね。
仕組みは割愛しますが、妊娠前から一定以上のサイズの子宮筋腫がある場合、妊娠中に筋腫に痛みが生じることがあります。これが子宮筋腫変性痛です。
一部の例外を除き、数日~数週間の痛みのある時期を乗り切れば痛みは無くなりますので、
それまではどうにか痛み止めを使って乗り切るしかないところではあります。
現在はカロナール(アセトアミノフェン)を飲まれているということですね。私も同じように対応します。

この飲み薬でも対応できないくらい痛みが強い場合には入院していただくことになります。
入院した場合、アセリオ(今飲まれているカロナールのすげえバージョン)を点滴することになるかなと思います。
とにかくこれで痛みがおさまる期間まで乗り切るというわけですね。

ちなみに、ご質問に記載のある抗生物質については使う先生・使わない先生が居ます。個人的にはどっちでも良いと思います。
子宮筋腫変性痛そのものが赤ちゃんに悪影響を与えるリスクはほぼないのでご安心下さい。
ただし、子宮筋腫自体が赤ちゃんの発育や早産等に影響を与える可能性はゼロとは言えません。
これは筋腫の場所やサイズによってリスクの高さがピンキリですので、主治医の先生に聞いてみるのをお勧めします。
授乳中はレバーを食べまくる?


その考え方はちょっと危険です!!!
まず「母乳は赤ちゃんに輸血してるようなもの」という考え方について。
確かに母乳は母体の血液から作られているので、母体の栄養状態の良し悪しは赤ちゃんにとってもすごく重要です。
「輸血」という表現の賛否はさておき、そういう意味では中らずとも遠からず、と言えます。
しかし!レバーの食べ過ぎは「ビタミンA過剰症」に繋がります。
レバーは様々な栄養素を豊富に含んだ素晴らしい食べ物ですが、ビタミンAが他の食材に比べてかなり多めという特徴も持っています。

ビタミンAが多すぎると頭痛や皮膚症状などを伴う「ビタミンA過剰症」という病気のリスクに繋がります。
妊娠中・授乳中に限ったことではありませんが、偏ったものを食べまくるのは良くありません。
ブタ・ニワトリのレバーであればだいたい1日に100g前後くらいまでが望ましいでしょう。
とはいえ、ビタミンAが不足するのも目や骨・神経に良くないので、適度な摂取は大事です。

結論としては、レバーもお肉も野菜もお米もパンも、バランス良く食べましょう。
総合病院で産むべき?無痛分娩についてどう思う?

順番にお答えしましょう!
大病院にお産をお願いすることについて
地域差はありますが、基本的には全く問題ありません!
妊娠を確認してもらった産婦人科で「大病院で出産したい」と伝えるだけでOKです。あとは適切な時期に紹介してくれるでしょう。
NICUがある大病院で産む人は全員がリスクがある人、というわけではありません。(比率は高いかもしれませんが)
スタッフを大勢抱えている大病院ではお産の数自体をそれなりにこなさないと採算が取れませんから、リスクの低い妊娠・出産は受け入れこそすれ拒まれることはまずないと思います。
実際、私もNICUがある病院をいくつも経験しましたが、むしろ特にリスクのない妊娠・出産の方が多いくらいでした。
無痛分娩について
問題ないと思いますよ!
無痛分娩は単なる出産の手段のひとつに過ぎず、良いとか悪いというものではありません。
適切に運用され、御本人がリスクを納得の上で受けるのであれば何の問題もないと思います。
コロナ陽性妊婦さんの帝王切開


コロナ陽性妊婦さんの分娩方法は、ものすごく難しい問題です。
確かにコロナ陽性というだけで帝王切開をさせられる…ということに納得ができないのは私も心情的には同意です。
ただ、現実問題として難しい側面もあります。
まず、2023年9月現在のコロナ陽性妊婦さんの分娩方法ですが、これは個々の病院ごとに対応が委ねられています。
助産師さん・産婦人科医が何人いるか、普段の分娩取り扱い件数は、帝王切開をすぐできる体制が整っているか、小児科医師が常在しているか、陰圧室が存在するか…等々、病院ごとに設備も可能な対応もバラバラですからね。
その上で、WHOなども「コロナ陽性だからといって帝王切開にする必要は無いよ」という声明を出しているわけです。
では、コロナ陽性妊婦さんの経腟分娩にはどのようなリスクがあるのでしょうか。
これもまた病院ごとに大きく異なりますが、特定のエリア(〇階の半分など)を「産婦人科病棟」または「女性病棟」としている病院がよくあります。
この場合、同じエリアに居るのは健康な妊産婦さんばかりとは限りません。
抗がん剤治療で免疫力が大きく低下している婦人科疾患の患者さん、何らかの重篤な内科疾患に罹患している女性の患者さんも同じエリアに入院している可能性があります。

彼女たちにとって(たとえワクチンを打っていたとしても)新型コロナウイルスに罹患するのは致命的になりかねませんし、
命に別状が無かったとしても適切な治療を行うのが1~2週間という単位で遅れる可能性もあります。
医療従事者側にとっても重要で、特に助産師さんは分娩前に数時間、場合によっては十数時間つきっきりになることが珍しくありませんし、助産師さんがコロナに罹患すれば数日~1週間程度の休業は避けられません。
助産師さんがどこからともなく湧いて出てくる謎の産院があれば良いのかもしれませんが、ほとんどの病院はカツカツの人数で回しているので、1人が休んだだけでも大慌てということが珍しくありません。
もちろん、産婦人科医についても同様のことが言えます。
感染対策がめちゃくちゃバッチリできている病院だとしても、1人の助産師さんがコロナ陽性妊婦さんの分娩対応をしていると、その方は別の患者さんを診る余裕はほぼなくなります。
これに対し、帝王切開は「いつ行うかある程度コントロールできる(人手が十分な時にお産できる)」「感染対策をとりやすい」といったメリットがあります。
こうなると、安全管理上の観点から帝王切開を選ぶのもやむを得ないと判断する病院が一定数存在するのも致し方ないところかと思います。
新型コロナウイルス感染症は医療の常識を大きく変えました。
特に2020年の医療業界の揺れ具合は今でも鮮明に思い出せます。
私もコロナ陽性妊婦さんの帝王切開は数例行いました。
こうした新興感染症では、医療者側も誰もが手探り状態です。
どう対応するのが最善か、そのつど考えるしかないわけですね。
質問の最後にある「今までもあったのでしょうか」については「新興感染症の影響で選択的帝王切開をする例があったかどうか」という意味だとお見受けしますが、そういう意味ではおそらく歴史上初です。
帝王切開の手法が確立された19世紀以降で、世界的に流行した呼吸器感染症で、なおかつコロナの1つ前となるとスペイン風邪(1918年)にまで遡りますからね。

質問者様が出産を迎える際にどんな状況になっているのか、産院がどのような対応をとるのかは分かりませんが、
ただ1つだけ言えることとして「コロナ陽性妊婦さんの帝王切開をする側も苦渋の決断を迫られている」ということだけはご理解頂ければと思います。
ある程度の経験を積んだ産婦人科医なら、帝王切開がいかに奥が深くて難しい手術かを嫌でも知っていますから。
マクドナルドで一番好きなメニュー

てりやきマックバーガー!
まとめ
今回の質問箱まとめは以上となります。
引き続き、質問箱の回答が溜まってきたら不定期にこのような形でまとめていきますね。

マンガ考察のリクエストだけでなく、妊婦さんや女性の皆様の健康に関するご質問も大歓迎です。
以下、関連記事です。
切迫早産に関する疑問はこちらの記事でお答えしています。
前回の質問箱まとめ記事はこちらです。